科研費の審査区分表と学振の審査区分表は微妙に異なっていますが、大枠の考え方は同じです。審査区分は、審査員が審査可能な申請書をまとめるため、そして分野間で採択率の偏りが起きにくくするために設けられています。そもそも審査の公平性を担保するための仕組みですから、「特定の区分に出せば明らかに有利になる」ということは、基本的にはありません。

とはいえ、応募する区分によって、審査員の専門性、応募件数、競争相手、申請書の読まれ方は変わります。そのため、複数の区分に応募できそうな場合には、どの区分で出すかを考える価値があります。

応募可能な区分が1つしかない場合

応募可能な審査区分が1つしかない場合は、どれだけ悩んでもそこに応募するしかありません。その場合は、区分選びに時間を使うよりも、申請書のブラッシュアップに時間を使うべきです。審査区分を動かせないのであれば、その区分の審査員に伝わるように、研究の背景、目的、独自性、計画を調整することに集中しましょう。

問題は、応募できそうな審査区分が複数ある場合です。この場合、これといった絶対的な正解はありません。しかし、判断の材料はいくつかあります。

応募件数の多い区分を考える

まず確認すべきなのは、応募件数です。科研費データでは、研究種目別・審査区分別の応募件数、採択件数、配分額などを確認できます。小区分、種目ごとのデータだけでなく、大区分・中区分ごとの応募・採択件数も確認できます。

科研費データ│科学研究費助成事業(科研費)

ここで見るべきポイントは、単純な採択率だけではなく、応募件数です。中区分ごとでも応募件数には大きな差があり、小区分単位で見ると、応募数が1桁に近い区分から、100件を超える区分までさまざまです。採択率は多くの区分でおおむね一定範囲に収まるよう調整されていますが、応募件数が少ない区分では、採択率や審査結果のばらつきが大きくなりやすくなります。

令和5年度科学研究費助成事業(科研費)の公募から適用する「審査区分表(内容の例)」等に関する意見募集について(※意見募集は終了しました)│文部科学省

実際、応募件数が少ない領域では、小委員会間での採択率のばらつきが大きくなりやすく、審査結果の入れ替わりの影響も相対的に大きくなります。応募件数が10件前後しかない区分では、1件の採否が採択率に与える影響が大きく、審査員や応募者構成の影響も見えやすくなります。一方で、応募件数がある程度多い区分では、採択率は全体の水準に収束しやすくなります。

したがって、十分に準備ができており、研究内容にも申請書にも自信がある場合には、応募件数の多い区分に出す方が、運の要素をある程度抑えやすいと考えられます。反対に、自信がまったくない場合や、かなり尖ったテーマで勝負する場合には、応募件数の少ない区分で一発逆転を狙うという考え方もあります。ただし、応募件数が少ない区分は、当たり外れも大きくなりやすい点には注意が必要です。

人文・社会科学を選択できる場合

採択率は、応募件数に応じてある程度調整されるようになっています。ただし、分野によって平均配分額には違いがあります。一般に、人文・社会科学系の申請課題は平均配分額が比較的少なく、自然科学系、とくに実験科学系の申請課題は平均配分額が高くなりやすい傾向があります。

その影響もあってか、採択率だけを見ると、人文・社会科学系の区分の方がわずかに高く見える場合があります。もちろん、このわずかな違いだけを目的に、無理に人文・社会科学系の区分へ応募する必要はありません。審査員に研究の価値が伝わらなければ意味がありませんし、区分との適合性が低ければかえって不利になります。

しかし、研究内容によっては、人文・社会科学系と自然科学系のどちらにも出せる場合があります。たとえば、教育、心理、行動、社会制度、医療政策、科学技術社会論、研究倫理、データ解析などを含む研究では、複数の分野にまたがることがあります。そのような場合には、単に自分の所属分野で決めるのではなく、どの区分の審査員が最も研究の価値を理解しやすいかを考えるとよいでしょう。

評価してくれそうな審査委員のいる区分を考える

現在の審査員はわかりませんが、過去の審査委員は公表されています。候補となる区分が複数ある場合には、過去の審査委員名簿を確認し、どの区分であれば自分の申請書を適切に評価してもらえそうかを考えることも重要です。

審査委員名簿│科学研究費助成事業(科研費)

ここで重要なのは、「知り合いがいるかどうか」を見ることではありません。見るべきなのは、その区分の審査委員が、どのような研究分野、方法論、問題意識を持っているかです。自分の研究の背景を理解してくれそうか。使っている手法を評価してくれそうか。研究の意義を読み取ってくれそうか。そうした観点で確認します。

たとえば、同じ生命科学の研究であっても、分子メカニズムを重視する区分、個体レベルの現象を重視する区分、医学的意義を重視する区分、情報解析や数理モデルを評価しやすい区分では、申請書の読まれ方が変わります。自分の研究がどの区分に最も自然に収まるのか、どの区分なら「この研究は重要だ」と思ってもらいやすいのかを考える必要があります。

区分選びで大切なこと

審査区分を選ぶときに大切なのは、採択率だけを見ないことです。採択率が少し高い区分に出しても、研究内容が区分に合っていなければ評価されません。逆に、採択率が少し低く見える区分でも、審査員が研究の価値を理解しやすく、申請書の主張が自然に伝わるのであれば、その区分の方が適している場合もあります。

区分選びでは、応募件数、採択率、配分額、過去の審査委員、研究内容との適合性を総合的に見ます。特に重要なのは、自分の研究がその区分の審査員にとって「評価しやすい申請書」になるかどうかです。審査員が研究の背景を理解でき、問題の重要性を納得でき、方法の妥当性を判断できる区分を選ぶことが基本です。

複数の区分で迷う場合には、それぞれの区分に出すつもりで、研究タイトル、背景、目的、独自性の書き方を少し変えてみるのも有効です。自然に書ける区分、説明が無理なくつながる区分、審査員にとって研究の価値が伝わりやすい区分が見えてくることがあります。

審査区分選びに絶対の正解はありません。しかし、何となく選ぶのではなく、データと審査員像を見ながら、自分の研究が最も適切に評価される場所を選ぶことはできます。区分選びは、それだけで採択を決めるものではありませんが、申請書の伝わりやすさを大きく左右する重要な戦略の一つです。