独自性を書くときに、もっとも多い勘違いが次のような書き方です。

これまで、こうしたアプローチでの研究は存在しておらず、したがって、こうしたアプローチで研究する本研究は独自である。

要するに、「新しいから独自である」と主張しているわけです。しかし、この書き方は不十分です。理由は大きく2つあります。

研究とは、そもそも新しいものである

第一に、研究とはそもそも新しいことをするものです。まったく同じことを繰り返すだけであれば、それは研究とは呼びにくいでしょう。もちろん、根本的に新しい研究もあれば、既存研究と少しだけ違う研究もあります。しかし、どの研究であっても、微視的に見れば、これまでにない何かを行っているはずです。

したがって、「新しいから独自である」という理屈をそのまま認めると、すべての研究は新しいので、すべての研究は独自である、ということになってしまいます。しかし、それでは独自性という言葉の意味がなくなります。独自性とは、他の研究と比較したときに、本研究がどのように異なり、その違いにどのような意味があるのかを説明するものです。

全員が「自分の研究は新しいから独自だ」と主張した瞬間、それはもはや独自性の説明にはなりません。つまり、「新しいから独自である」という理屈だけでは、独自性を示したことにはならないのです。

新しいことと、研究する価値があることは同じではない

第二に、新しいことと、研究する価値があることは同じではありません。これまでに行われていないことは、世の中に山ほどあります。その中で、「これまでに行われていない」という理由だけで独自性を主張しても、審査員には響きません。

たとえば、次のような文章を考えてみます。

これまで酸化還元状態という観点から、がん治療の成功率を予測しようとした研究はなく、本研究はその観点から研究を行う独自性の高い研究である。

一見すると、それらしい主張に見えます。しかし、よく考えると、これは「これまでにない観点だから独自である」と言っているだけです。もしこの理屈がそのまま成り立つなら、次のような研究も独自性が高いことになってしまいます。

  • 私の家の庭石の産地を調べた研究はこれまでにない。本研究は、初めて我が家の庭石の産地を明らかにする点で独自である。
  • これまで、雑草が空を飛べるかを真面目に検討した例は存在せず、本研究で初めてその可能性を検討する点で独自である。

たしかに、これらは新しいかもしれません。しかし、研究として評価したいとは思わないでしょう。なぜなら、新しいことと、重要であることは別だからです。誰もやっていない理由が、「重要なのに見落とされていたから」ではなく、「単に研究する価値がないから」である可能性もあります。

独自性とは、意味のある比較優位である

独自性とは、単に新しいことをするからすごい、という主張ではありません。重要なのに未解決の問題があり、その問題に対して、他の人には難しいが申請者なら解決できる理由がある。そこに独自性があります。

つまり、独自性を書くときには、次の3点を示す必要があります。

これまでの研究では何が行われてきたのか。
その中で、どの重要な問題が残されているのか。
なぜ、その問題を申請者なら解決できるのか。

この3点がそろって初めて、「本研究は独自である」という主張に説得力が生まれます。単に「これまでにない」「初めてである」と書くだけでは不十分です。その新しさにどのような意味があり、その違いによって何が可能になり、なぜ申請者がそれを実現できるのかまで書く必要があります。

独自性を書くときには、「新しいから独自」と考えるのではなく、「重要な問題に対して、申請者ならではの方法・材料・視点・実績によって、他の研究では到達できないところに到達できるから独自」と考えるべきです。この意識を持たないと、独自性の説明はすぐに「新しいから独自である」という弱い主張になってしまいます。