目的には複数のレベルがある

研究目的で聞かれているのは「本研究で申請者は具体的に何をしますか?」「何が示せれば本研究は大成功だと言うつもりですか?」ということです。しかし、研究目的には様々なレベルがあり、そこを間違えると審査員にうまく伝わりません。

目的と一口に言っても様々なレベルがある

例えば、上の図を見てみましょう。なぜ研究者を目指すのか(研究者をやっているのか)の理由は人それぞれでしょうが、ここでは「世界の抱える問題を解決して、世界を救うこと」を究極の目的として研究しているとしましょう。これも研究の目的です。

さらに、もう少しレベルを下げて、より具体的な問題として、「エネルギー問題を解決する」も目的ですし、「火力発電の排ガス処理」も目的でしょう。このように問題を具体的にしていくにつれ、目的も変わっていきます。

これらの、どれもが目的です。問題は申請書にはどのレベルの目的をどこに書けばよいのかということになります。

レベル6~レベル4の目的

このあたりは申請者の個人的な目的というよりは人類にとっての目的といえます。これらについては背景の冒頭に書きます。

地球の総人口は2050年には97億人を超え、エネルギー問題はますます深刻さを増すと予想されており、不足する電力を確保するために火力発電が主流になると予想されている。しかし、カーボンニュートラルの実現とどのように両立するかは大きな課題である。

レベル6についてはあえて書く必要はなく、レベル5あたりから書き始めて構いません。ただし、ある大きな分野の研究を目的とする時に、なぜその分野が重要なのかを説明するようにします。

このあたりのレベルの目的は、それに反対する人がほとんどいないことから、大前提として書いてしまって問題ありません。

レベル3の目的

ここぐらいになってくると、研究者の方針やアイデアが色濃く反映されるようになります。レベル3の目的は「研究者として何を実現したいか」であり、これは今回申請する研究課題で完成するものではなく、数年あるいは生涯をかけて達成するものです。

レベル3の目的くらいになってくると、他の選択肢も数多く考えられるようになります。例えば、今回の例で言えば、排ガス処理(レベル4)を解決するためには、新触媒開発以外にも、プラント設計、法規制、…などいろいろのアプローチが考えられます。そうした複数の候補の中から、あるひとつを選ぶのですから、これは研究のアイデアです。背景もしくは着想の経緯で書く内容です。研究目的として書くにはまだ具体性が足りません。

時々、研究目的にこのレベルの目的だけを書き、それ以下のレベルの目的が全く書かれていないために、結局のところ何をするのかがわからない人を見かけます。

本研究は、新触媒を開発することを目的とする。
→対象範囲が広すぎる!結局、具体的に何をするの?

レベル2の目的

これこそが、本当に書くべき「本研究の目的」です。これより上位のレベルの目的は本研究のみでは達成できません。逆にレベル1の目的は本研究の一部にすぎません。

本研究は〇〇(方法)〇〇により、〇〇〇を開発/明らかにすること(レベル2の目的)を目的とする。これにより、〇〇〇する〇〇〇を目指す(レベル3の目的)。具体的には、〇〇〇、△△△、□□□を行う(レベル1の目的)。

たとえば、上のように書くとレベル1~レベル3を網羅できます。あくまでもメインはレベル2の研究目的であり、レベル3を書くのはレベル2を達成した先に何が待っているのかのを示すことで本研究が大きい分野につながっていることを示すためです。そして、レベル1を書くのは具体的に何をするのかの概要を示すためです。

レベル1の目的

レベル1の目的は、本研究の目的(レベル2)を達成するための具体的な研究計画です。申請書のスペースが十分にある場合には、「具体的には…」に続ける形で研究目的のところで概要を示しておいて、詳細を研究計画に書くと良いでしょう。すぐに研究計画に続く場合は、書く必要はありません。

そして、ここで書いた内容はそのま、研究計画の見出しになります。

本研究は〇〇(方法)〇〇により、〇〇〇を開発/明らかにすることを目的とする。これにより、〇〇〇する〇〇〇を目指す。具体的には、〇〇〇、△△△、□□□を行う(レベル1の目的)。

研究計画1 〇〇〇
 …

研究計画2 △△△
 …

研究計画3 □□□
 …

「本研究の目的」では、短くスパッと言い切ることで、何をするかを簡潔に審査員に伝えたいので、あまり長く書くことは推奨しません。レベル1の目的の詳細を研究目的でダラダラと書くのは避けてください。

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