読みやすい申請書の大原則は、シンプルな言い回しを使うことです。簡単な語で間に合うときは、難解な言葉を使ってはいけません。日本語がある場合は(カタカナ)英語を使ってはいけません。ありふれた考えをもったいぶった言葉で表現すると、知性が乏しく信憑性が低いとみなされる という研究結果があるくらいです。

意味が曖昧な言葉・流行りのかっこ良い(?)言い回し・造語は使わない

難しい言葉や聞き慣れないカタカナ語・英語などを使い、すごそうな申請書に見せようとする方がいますが、完全に逆効果です。申請書の目的は自分の考えを審査員に伝えることです。書き手と審査員の間で同じように理解されない(可能性のある)言葉を使うことは本末転倒です。具体的には、

カタカナ語、漢語、略語

パラダイムシフト、セレンディピティ、ロバストネス、シンギュラリティ、有機的統合 など数多く、カタカナ語は医学系の方が特に多用する傾向にあります。そして、すぐにブームが移り変わるのも特徴です。このパターンに該当する人は

1.相手のことに無頓着  普段の同僚との会話では問題ありませんが、書き言葉としては不適切です。読み手が同じような知識があることを前提にするのは、自己中心的であり、伝える気がないと思われても仕方ありません。

2.箔がつくと勘違いしている 自分が無知であるほど、知っている僅かな知識をひけらかしたくなるものです。わかりにくく伝えることはカッコよくありません。相手に知識がないことを突きつけて誰が得するのでしょうか。繰り返しますが、申請書は審査員に伝わって初めて評価のスタートラインに立てます。伝わらない言葉を書いたところで意味はありません。

造語・誤用・カッコ良さそうな専門用語

作文が苦手な人、若い人に多い印象です。アインシュタインの十字架、アリアドネの糸 など中学生が喜びそうな専門用語を連呼するのも、読む側としては苦々しいものです。もちろん、研究内容そのものであるなら良いですが、カッコ良さそう≒すごそうという程度なら、伝わりにくい言葉を選択する理由がありません。また、この延長として、本来とは異なる意味で専門用語を用いる誤用や、全くの造語などもあります。いずれも、伝わらない、誤解されるなど良いことは何もありません。

この手の言葉は大型予算の研究タイトルやキーワードとして、しばしば出てきますが、あれは百戦錬磨の猛者が、全てをわかった上で狙ってやっているので、最初のうちは真似しない方が良いです。

対応する日本語があるのに英語、カタカナ語を使わない

アレル → 対立遺伝子(訳語がおかしいというのは置いておいて)
インタラクティブ → 双方向
エクトッピクな発現 → 異所的な発現

などキリがないので止めますが、やたらカタカナ語が並んだ申請書を読むと非常にむず痒い気持ちになります。

他に適切な訳語が無い、もはや一般的な用法であるなど、状況は変わりますから、絶対にカタカナ語を使うなと言っているわけではありませんが、普段の会話では気にならなくても申請書中で連呼されるとかなり気になりますので、普段からカタカナが多めの人は意識する必要があります。