「目指す研究者像・身につけるべき資質」の書き方

目指す研究者像とは

「研究者とは職業ではなく生き方である」という言葉にあるように、研究者のスタイルはさまざまであり、そこには申請者の考え方が色濃く反映されます。

(よほど非道義的とかでなければ)どのような研究者像であっても、その選択だけで低評価・高評価は決まりません。審査員は以下の点に注目します。

目指す研究者像とその根拠は具体的か

どのような研究者像であっても良いですが、それが単なる夢物語ではなく、現実的な目標としてなりたい研究者像を具体的に描けているかは重要なポイントです。単にいつかビッグになりたい、すごい研究者になりたい、では具体的な行動に結びつきません。

なぜ・どのような研究者を目指すのかを自分の言葉で語れるようにしましょう。この設問が学振のみであることからもわかるように、夢を語るのは若手の特権ですので、青臭い…とか考えずに堂々と夢を語ってください。

十分な視野の広さがあるか

目指す研究者像として両親(研究関係)や指導教員を挙げる人が多いことからもわかるように、研究者としての生きざまはどうしても身近な人から影響を強く受けます。

そのこと自体は構いませんが、あまりにも身近な人を目指す研究者像であると言いすぎると「それはあなたの視野が単に狭いだけでは?(もっと目指すべき人は他にいるのでは?)と指摘されかねません。

「更なる発展のため必要と考えている要素」と対応付ける

更なる発展のため必要と考えている要素」でも指摘したように、

自身の強み + 更なる発展のため必要と考えている要素 = 目指す研究者像に必要なスキルセット(資質)

であり、

目指す研究者像に必要なスキルセット(資質) – 現在身に付けている資質 = 目指す研究者像に向けて身に付けるべき資質

です。

このことからもわかるように(強みをさらに伸ばすパターン(戦略2)を採用している場合には、厳密には少し違うのですが)、基本的には、「更なる発展のため必要と考えている要素」 ≒ 「目指す研究者像に向けて身に付けるべき資質」となります。

すなわち、今現在のスキルセットでは目指す研究者像には届いていないので、更なる発展のため(≒目指す研究者像に近づくため)には、こんなスキル(資質)を身に付けていく必要があるということであり、内容を対応させる必要があります。

両者で全く異なることを書いていると、結局どうだと言いたいのかがわからず混乱します。

すでに行っている取り組みを書く(目指す研究者像に向けて身に付けるべき資質に関連して)

目指す研究者像がはっきりしており、そのために必要となる資質もはっきりしており、申請者が本気ならば、学振に採択されようがされまいが、すなわち、採択される以前である現在において既に何らかの行動を起こしているはずです。

本気で目指していることの証明として、現在、それに向けて何を行っているのかを書いておくと良いでしょう。たとえば、以下のような構文になります。

〇〇〇を身に付ける必要がある。これに向けて、申請者はすでに〇〇〇に取り組んでおり…

「更なる発展のため必要と考えている要素」との違い

「更なる発展のため必要と考えている要素」 ≒ 「目指す研究者像に向けて身に付けるべき資質」と書きましたが、もちろん全く同じ内容を繰り返して書いてはいけません。両者は異なる項目ですので、書く内容も意図的に変えて、役割分担する必要があります。

以下の図がわかりやすいでしょう。

更なる発展のため必要と考えている要素

要素とはより上位のものを構成する一部であり、この場合は身に付けるべき資質の一部です。ここは具体的に書けという指示があることからもわかるように、全能力のもっとも小さい部分、すなわち、身に付けるべき資質のうち、すでに持っているもの(これ以上伸ばす必要がないもの)以外で、何が必要か?ということを書きます。

更なる発展のため必要と考えている要素」の戦略2のように、すでに持っている要素であってもさらに伸ばすべきだという書き方もありますので、厳密にはすでに持っている要素≠強みであることに注意が必要です(その意味では上図は変なのですが、わかりやすくするために単純化しています)。

目指す研究者像に向けて身に付けるべき資質

目指す研究者像はもっと大きい(もっと将来の)目標を書く欄です。(2)で学振期間中の位置づけをわざわざ問うていることからもわかるように(1)の目指す研究者像(目指す研究者像に向けて身に付けるべき資質)は学振期間中という期限を外した時にどんな資質が必要か?ということを書きます。これは「更なる発展のため必要と考えている要素」の上位概念です。

し‐しつ【資質】 の解説

生まれつきの性質や才能。資性。天性

goo辞書

辞書で「資質」を調べると生まれつきの…という説明が多く、後天的に身に付けられるのか?という野暮な質問で出てきますが、ここでは、例として挙げられているような、研究における主体性、発想力、問題解決力、知識の幅・深さ、技量、コミュニケーション力、プレゼンテーション力などの要素を統合した才能とまでは言わないがもう少し全体的な能力という意味で理解しておくことにします。

たとえば、基礎と産業・臨床をつなぐ資質には、知識の幅だけではなくコミュニケーション能力他も必要となり、何か単一の要素で説明することは不可能でしょう。ここでは、要素≒スキル、資質≒スキルセットという考え方です。

具体例

目指す研究者像

研究者を目指すきっかけは何でもよいのですが、個人的体験だけをモチベーションにするのはいただけません。「あなたがそう考えること自体は誰も否定できないけど、他の人はそうは思わない」となると説得力に欠けます。よくあるのは、自分自身を含め身近なひとの病気をきっかけに創薬の研究をしたいです、などです。創薬を志すことは立派で良いのですが、救う対象はあくまでもその疾患の対象者全員であり、身近なひとの方だけを向かないでほしいのです。

中学○年生のとき、○○○で○○○に関心を持ち、○○○を目指すようになった。<エピソード>。こうした経験のなかで、○○○に挑戦したいと感じるようになり、研究を一生の仕事にしたいと考えるようになった。

豊富な知識と確かな実験技術に裏付けられた独創性のある研究を展開できる研究者になりたいと考えている。○○○は国際的にも競争が激しく、また、○○○である。こうした課題を解決するためには、いまある方法に追従するのではなく、全く新しくアイデアによる研究アプローチが突破口となると考えている。そのために、申請者は、現在までの知見を体系的に理解したうえで、研究室メンバーあるいは共同研究者とのディスカッションを通じて、新しいアイデアの創出に努めている。さらに、こうしたアイデアを実現するために必要な実験技術を身につけるため、○○○するなども行っている。

私がはじめて○○○の分野に興味を抱いたのは高校生のときであった。<エピソード>。こうしたことから、○○○を理解したいと強く感じた。学部生時代に○○○や○○○を通して○○○をしたいという思いは強まり、○○○の研究室を選んだ。

○○○から、○○○は○○○に対して○○○しうることを知った。こうしたことから、自らの能力を駆使して○○○という問題解決に貢献したいと考えるようになった。

目指す研究者になるために必要と考える資質

資質は本来、天性のものを指しますが、ここでは要素の複合と捉えてください。要素は「プレゼンテーション能力」、「忍耐力」など特定の能力であり、資質は「世界の第一線で○○○分野を牽引するカリスマ性」や「すぐれた後進を育成し、分野全体を盛り上げていく包容力」といった複数の能力の総体です。目指す研究者像が兼ね備えているべき能力をなるべく具体的に定義しましょう。

研究成果を社会へ還元するためには、さまざまな立場からのさまざまな視点を持った多くの人との協調が欠かせない。この実現には、○○○であることから、○○○力や○○○だけでなく、○○○や○○が必要だと考えている。

これまでの研究では、○○○を行い、○○○してきた。しかし、申請者はこれまで、英語を用いて成果を発表した経験はない。国際的な研究者として活躍するためには○○○が必須であることから、○○○や○○○をつうじて語学力を向上させるだけでなく、高いレベルで議論し信頼を得るためのコミュニケーション力が重要となる。

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