研究計画は比較的書きやすくはありますが、を正しく書くようにします。
たとえば、このような研究目的・研究計画を考えてみます。
そこで本研究では、肝細胞のCeacam1遺伝子に着目し、CEACAM1による肝臓のインスリンクリアランスおよび全身のインスリン感受性の調節が動脈硬化に及ぼす影響を明らかにすることで、代謝恒常性における〇〇〇を明らかにすることを目的とする。
本研究で何をどこまで明らかにするか
計画1 GR活性の制御における脂肪酸の機能解明
PR5, FKBP51, FKBP52は〇〇〇に関わることが報告されている。そこで、PP5 KOおよびFKBP51 KO、FKBP52 KO、野生型の細胞において、飽和脂肪酸やMUFA、PUFAなどの様々な脂肪酸による細胞の処理が、GRヘテロメリック複合体内のTPRタンパク質の発現にどのような影響を与えるかを解析する。すでに確立しているMEF細胞株に加えて、WTおよびPP5 KOマウスから初代脂肪細胞を分離し、リン酸化特異的抗体を用いてこれらの細胞型におけるGRのリン酸化状態を時間毎に明らかにする。さらに、レポーター遺伝子を用いた遺伝子発現解析と、様々なFAおよびグルココルチコイド処理による内在性遺伝子のリアルタイムPCR解析により、GR活性に対する脂肪酸の影響を時間変動に注目して定量する。これらのアプローチを総合することで、TPRタンパク質が脂肪酸に反応するキネティックスを明らかにし、GR活性と特に高い相関を示す時期を明らかにする。
計画2 …
この文章を例に、以下の3つのポイントを見ていきましょう。
ポイント1:背景や問題点をリマインドする
PR5, FKBP51, FKBP52は〇〇〇に関わることが報告されている
研究計画は、これから何をするかを書く欄であり、それを理解するために必要最低限の情報はすでに示されているはずです。しかし、分野外の審査員が一度説明されただけで必要な情報を全て覚えているとも考えにくく、研究計画の冒頭で背景や問題点について軽くリマインドしておくのはとても良い戦略です。
時々、この研究計画における背景説明が長すぎて、背景の焼き直しになっている例も見かけます。しかし、背景説明はあくまでも「背景と問い」で説明すべきであり、ここはリマインドにとどめておくべきです。長く書きすぎず短くしてください。
ポイント2:何をどうするか
そこで、PP5 KOおよびFKBP51 KO、FKBP52 KO、野生型の細胞において、飽和脂肪酸やMUFA、PUFAなどの様々な脂肪酸による細胞の処理が、GRヘテロメリック複合体内のTPRタンパク質の発現にどのような影響を与えるかを解析する。すでに確立しているMEF細胞株に加えて、WTおよびPP5 KOマウスから初代脂肪細胞を分離し、リン酸化特異的抗体を用いてこれらの細胞型におけるGRのリン酸化状態を時間毎に明らかにする。さらに、レポーター遺伝子を用いた遺伝子発現解析と、様々なFAおよびグルココルチコイド処理による内在性遺伝子のリアルタイムPCR解析により、GR活性に対する脂肪酸の影響を時間変動に注目して定量する。
研究計画の本体であり、何をどうするのか、を書きます。まず、〇〇〇をして、次に〇〇〇をして…という基本的な流れです。過度に細かい話にならないように気を付けながらも、ある程度の具体性をもって研究内容を説明します。
手順を書きすぎない
人文社会科学や臨床医学に関する申請書で顕著ですが、研究計画がまるまま論文のメソッド(Method, 方法, 手順)のようなものを良く見ます。
こうした研究の手順のような情報は、研究を実施する申請者自身はしっかりと考えておかないといけませんが、審査員にとっては、この手順の是非は非常に評価しにくくあります。
たとえば、インタビューは1名あたり20分と具体的に書いていますが、これが10分だったらダメとか30分だったら良いとかは有りませんし、SPSSで検定しようがエクセルで検定しようが、この研究計画の是非を評価する上では大して重要ではありません。
むしろ、これらの調査からどういう方法で、どういった結論を引き出すつもりなのか。その結果の妥当性を確かめるために、どうするつもりなのか、など書くべき内容は他にあります。こうした、一見具体的ですが、評価につながらない内容で研究計画の欄を埋めないようにしてください。
ポイント3:何を明らかにするかを明確にする
何をどのようにするかについては、ほとんどの人が書きますが、何を明らかにするためにそれをするのかについて書いていない人が一定数います。たとえば
のように、何をどうするかを羅列しても、青椒肉絲を作りたいことはなかなか伝わりません。「牛肉、ピーマン、たけのこ、から予想できるでしょ」と考えるのは申請者の傲慢です。審査員はあなたの申請書を読みたくて読んでいるわけではありませんので、わかりにくい申請書の意図を頑張って汲み取ってあげようと考えるモチベーションは極めて低いです。このような手順を書くくらいなら、
と書いた方が伝わります。審査員としては、「細かい手順については、専門家である申請者がうまくするんでしょ」くらいの感想しかありません。
この辺りはポイント2の「手順を書きすぎない」と内容が重複しますが、何をどうするかを突き詰めすぎるとこのように肝心の「それをしたら何が明らかになるのか」についての説明がおろそかになりがちですが、本当に大切なのはこちらです。細かな手順を書くのは、この研究の具体的なところもしっかり把握していることをアピールするためであり、審査員に手順の詳細を説明するためではありません。