研究計画は申請書の本体です。書かれている内容が実現可能であり、かつ実施する意味のある研究であることを、審査員に納得してもらう必要があります。そのためには、単に「何をするか」を書くだけでは不十分です。予備データを示し、研究計画の全体像を図で見せることで、「この計画ならうまくいきそうだ」と思ってもらう工夫が必要になります。
研究目的、研究計画などには、以下の内容が含まれます
1. 本研究で何を明らかにするか(研究目的)
2. どうやって明らかにするかの概要
3. 研究目的を達成するための具体的な2,3の研究項目
3-1. (計画の背景・問題点のリマインド)
3-2. 何をどうるすのか
3-3. 具体的な研究のゴール
3-4. 予備データ、計画を理解できる図
4. 予想通りに行かないときの対応
5. (タイムテーブル)
6. 研究の準備状況
たとえば、次のような研究計画を考えてみます。
計画1 GR活性の制御における脂肪酸の機能解明
……さらに、レポーター遺伝子を用いた遺伝子発現解析と、様々なFAおよびグルココルチコイド処理による内在性遺伝子のリアルタイムPCR解析により、GR活性に対する脂肪酸の影響を時間変動に注目して定量する。申請者はすでに、〇〇〇において、〇〇〇が〇〇〇であることを明らかにしている(図1)。仮に〇〇〇が〇〇〇である場合は、〇〇〇ではなく〇〇〇を用いることで、〇〇〇する。

この文章を例に、予備データと図表の使い方を見ていきます。
ポイント1:予備データを示す
予備データは、申請書の説得力を高めるための強力な材料です。研究背景では、申請者が考える仮説を支持するデータとして使えます。研究の展望では、本研究がさらに発展する根拠として使えます。そして研究計画では、「すでに一部については解決済みであり、残りの部分を進めればよい」「少なくとも、この方向に進めば何らかの成果が得られそうである」と示すために使えます。したがって、予備データはできるだけ用意しておくことをおすすめします。
特に研究計画で予備データを示すことには、大きく2つの意味があります。
1つ目は、研究の方向性の正しさを示せることです。新しい研究は、まだわかっていないこと、まだできていないことに取り組むものです。そのため、どれほど丁寧に説明しても、常に不確実性が残ります。背景では、なぜその問題が重要なのか、なぜそのアイデアで解決できそうなのかを説明してきたはずですが、言葉だけで「できそうだ」と主張しても、審査員の不安を完全に取り除くことはできません。
そこで有効なのが予備データです。すでに同じ方向で何らかの結果が得られているのであれば、その研究が成功する可能性は高く見えます。すでに一部の現象を捉えられている、すでに解析系が動いている、すでに予想と合う結果が得られている。こうした情報は、「この研究は単なる思いつきではなく、実際に進み始めている研究である」と審査員に伝えます。
また、予備データは、申請者が他の人よりも先の地点から研究を始められることも示します。同じゴールを目指すとしても、すでに材料や方法、 preliminary な結果を持っている人の方が、早く、遠くまで進める可能性が高いと考えられます。これは研究の実現可能性を示すうえで大きな強みになります。
2つ目は、申請者の研究能力と研究環境を示せることです。研究計画の欄では、申請者の研究能力や研究環境の十分性について、直接長々と主張する必要はありません。しかし、質のよい予備データがすでに得られていることを示せば、申請者にはその研究を進める能力があり、研究環境も整っていることを間接的に示せます。
審査員は、「この人は本当にこの研究を実行できるのか」を見ています。すでに関連するデータを得ていることは、その疑問に対する強い答えになります。これまでにそのようなデータを出せているのであれば、本研究計画でも同じように成果を出せるだろう、あるいはそれ以上の成果が期待できるだろう、と考えてもらいやすくなります。
ポイント2:図表で予備データと研究計画を見せる
予備データを示す場合は、文章だけで説明するよりも、図表を用いる方が効果的です。「このような結果をすでに得ている」「この方向で進めばこのようなことがわかりそうである」と文章で説明することもできますが、データがまとまった図表には強い説得力があります。
ここでの目的は、研究計画がうまくいきそうであることを審査員に納得してもらうことです。そのため、予備データは、できるだけ一目で意味が伝わる形に整理して示すとよいでしょう。グラフ、模式図、簡単な写真、実験系の概要図などを使い、審査員が短時間で「なるほど、ここまではできているのか」と理解できるようにします。
また、個別の研究計画に関する図だけでなく、研究計画全体の見取り図を入れることも有効です。個々の研究計画が、本研究の目的を達成するロードマップのどこに位置づけられるのか。どの計画で何を明らかにし、どの計画がどの計画を支えるのか。こうした全体像が一目でわかる図があると、審査員は研究の流れを理解しやすくなります。
理想的なのは、研究計画の全体像を、シンプルなイラストや矢印で示した図です。計画1で基盤を作り、計画2で主要な仮説を検証し、計画3で発展的に確認する。あるいは、計画1と計画2で別々の角度から証拠を集め、計画3で統合する。このような関係が図で示されていると、文章だけで説明するよりもはるかに伝わりやすくなります。
注意1:論文やプレゼンの図をそのまま転用しない
申請書は論文や総説ではありません。学会発表のスライドとも違います。審査員は、研究の詳細を深く知りたいわけではありません。限られた紙面の中で、分野外の審査員に研究の価値と実現可能性を理解してもらうことが目的です。そのため、図で示す情報も必要最小限に絞る必要があります。
論文の図は、申請書の図とは目的が異なります。論文では、厳密なコントロール、複数条件の比較、統計情報、補足的なデータなどを漏れなく示す必要があります。そのため、1つの図に多くの情報が詰め込まれています。科学的には正しい図であっても、申請書では情報過多になりがちです。
すでに完成している論文の図をコピーして貼り付けるのは簡単です。しかし、論文と申請書では、読者も目的も違います。申請書では、その図によって何を伝えたいのかを明確にし、不要な情報を削り、審査員が短時間で理解できるように作り直すことを検討してください。
申請書の図は、論文の図よりも自由に作れます。矢印を入れることもできますし、図中に短いコメントを入れることもできます。模式図とデータを組み合わせることもできます。申請書の幅に合わせて、図のサイズやレイアウトを調整することも容易です。せっかく本文を申請書用に作り込むのであれば、図も申請書用に作り直すことを強くおすすめします。
注意2:図を入れすぎない
図は、わかりやすく視覚的に訴えられる反面、本文を書くスペースを大きく消費します。図を入れすぎると、肝心の説明を書く場所がなくなってしまいます。図は便利ですが、多ければ多いほどよいわけではありません。
目安としては、平均して1ページに1つ弱くらいがよいでしょう。もちろん、申請書の種類や分量によって変わりますが、むやみに図を詰め込むのは避けた方がよいです。図を入れる前に、その図で何を伝えたいのかを確認してください。予備データを示す図なのか、研究計画の全体像を示す図なのか、方法の概略を示す図なのか。役割がはっきりしない図は、入れない方がよい場合もあります。
図表は、申請書をわかりやすくするための道具です。本文で説明すべき内容を図に押し込むのではなく、本文の主張を補強し、審査員の理解を助けるために使ってください。予備データと図表をうまく使えば、研究計画の実現可能性と魅力はかなり伝わりやすくなります。