申請書には、研究計画だけでなく、背景や独自性などさまざまなことを書くことが要求されます。こうした多種多様な機能を持つ「要素」をどこに・どのように配置するか、すなわち文章構成はわかりやすく理解しやすい申請書を作成するうえでとても重要になります。
申請書における構成とは?
こう‐せい【構成】
読み方:こうせい[名](スル)
1 いくつかの要素を一つのまとまりのあるものに組み立てること。また、組み立てたもの。「国会は衆議院と参議院とで—されている」「家族—」
2 文芸・音楽・造形芸術などで、表現上の諸要素を独自の手法で組み立てて作品にすること。「番組を—する」
デジタル大辞泉
とあるように、構成とは、要素をある目的をもって組み立てたものです。
これは、家を考えてみるとわかりやすいかもしれません。家には、リビング、ダイニング、キッチン、トイレなどさまざまあり、それぞれ異なる機能を持つ要素を適切に組み合わさることで、家として機能しています。申請書も同じで、背景、目的、研究計画、独自性、業績リストなどさまざま機能を持つ要素を適切に組み合わせることで、わかりやすく伝わる申請書になります。これらの要素を漫然と配置するだけではうまく機能しません。
なぜ構成が必要なのか?
キッチンで寝たり、トイレで食事することが無いように、それぞれの要素は、ある意図をもって配置され、うまく機能するように作られています。申請書においても、背景を説明する欄に研究計画を書いたり、研究目的を書く欄に展望を書いたりしてはいけません。
構成は通常、
・背景
・研究の現状
・問題点
・解決のためのアイデア
・目的
・研究計画 大見出し①
・小見出し①
・小見出し②
………
のような構成で書かれますが、たとえば、
背景が十分に書かれていなければ、この申請書は何についてのものなのか、というそもそものところで審査員を置いてけぼりにしてしまいます。
研究の現状が十分に書かれていなければ、分野外の審査員にとっては、どこが研究のスタート地点なのか(何がわかっていて、何がわかっていないのか)が良くわからないまま申請書を読む羽目になり、この研究がどの程度の価値を持ちうるのかがよくわかりません。
問題点も同様で、単に「わかっていない」ではなく、どれくらい重要な問題なのか(つまらない問題ならそもそも取り組む必要もない)が説明されない限り、審査員にとってはこの申請書の価値・意義を測りかねます。
…
というように、全ては「だからこの研究は実施すべきである」という主張を支えるために書かれ、それはやみくもに重要性を書き連ねるのではなく、相手を説得のための首尾一貫した論の展開(構成)によって初めて実現します。
よって、構成がしっかりした文章では、情報が過不足なく網羅され(MECE)、申請者の主張を審査員は受け入れやすくなります(重要性を納得してもらえる)。
一方で、構成がない場合のことを考えてみましょう。
構成がない状態で書き始めると、「なぜこの研究をすべきだと主張するのか」という根本となる問いとの関係が分からないまま、話が行ったり来たりすることがあります。
余計ななエピソードが入ってしまったり、必要となる根拠や理由が抜けてしまったりと、説得という観点からは致命的な失敗をしやすくまなります。
これはまさに、キッチンで寝たり、トイレで食事するようなものです。それぞれの部屋には意図された使い方があり、それらの部屋は家としてもっとも機能するように配置されています。それと同じく、申請書も全体としてもっとも機能を発揮するように(相手に伝わるように)各要素を配置すべきであり、それこそが構成です。
申請書の構成はどうすれば良い?
申請書の設計図である構成は「審査員に伝わるかどうか」を決める大事な要素です。
では、どのように構成すれば良いのでしょうか?答えはもちろん、審査員に伝わるか・説得力を生むかの一点です。申請書はそれを読む審査員のためだけに書かれた極めてパーソナルな文章です。
ですので、「審査員はどんなことを知りたいのか?」あるいは「どんな情報だと嬉しいのか?」を常に考える必要があり、そのためには以下のような情報が必要です。
- 審査員の人物像(どこまで、申請者の分野を知っていると想定できるのか)
- 研究費の趣旨(基礎なのか応用なのか、求められているのは挑戦性なのか堅実性、具体的なお題はあるか)
- 分量・配分(どれくらいの深さで説明すべきか、何を要求されているか)
- 意図(各項目ではどのような内容が期待されているのか)
幸いにも科研費や学振は注意書きにかなり丁寧に書く項目で書くべき内容が書かれており、この注意書きの意図をしっかりと理解し、それに沿うように書けば、しっかりとした構成をもった申請書が書けるようになっています。詳細については、何をどこで書くかで説明します。