申請書を読む審査員は分野外の人です。そのため、文章だけよりも図があった方が理解しやすいですし、わかりにくい図よりもわかりやすい図の方が内容を理解する助けになります。
申請書では、「図を入れてもよい」のような注意書きになっていることもありますが、どんな申請書であっても極力図を入れるようにしてください。文字だけの説明よりも圧倒的に理解しやすいです。
わかりやすい図とはなにか
論文やプレゼンテーションでも私たちは図を多用します。しかし、申請書における図はそれらとは違うことを理解しましょう。
論文の図 正確さが命です。検定が必要であったり、コントロールを何個も設定したりします。一方で、論文を読む人は関係者なので、あまり細かい説明は必要なく、図から得られる情報は多いほど嬉しいです。図中に書き込みをして説明したりはしません。多くの場合、図中の文字は小さいです。
申請書の図 審査員は分野外で、研究の内容も知りませんし、あまり興味もありません。審査員は正確な図というよりは、嘘ではない範囲で理解しやすい図を求めています。そうした中においては検定やコントロールというよりは、これは何を言いたい図なのかがわかることの方が重要です。また、研究の全体像や問題点や解決方法がどんなものであるかを図示してもらいたいというニーズもあるでしょう。
このように、論文で求められている図と申請書で求められている図はずいぶん違うにもかかわらず、論文や総説からもってきた図をそのまま貼り付ける人が後を絶ちません。論文の図をそのまま用いようとせず、申請書専用の図を作り直すことを強く推奨します。
わかりやすい図の条件
テイストを揃える
有名な「いらすとや」がなぜ人気かというと、同じテイストの図が大量にあり、テイストを揃えやすいことが大きいです。申請書も同じで、一つは誰かの総説からとってきた図、もう一つは自分の論文からとってきた図、もう一つはPowerPointで作ったイラストのような感じで、雑多なテイストの図を貼り付けていくと統一感は生まれません。
テイストを揃えるためのもっともシンプルな方法は図を自ら作り直すことです。どこかからか取ってきた図をそのまま貼り付けるのではなく、極力作り直すようにしましょう。
色を使いすぎない
科研費申請書の審査はほとんどの場合、グレースケール印刷されたものを対象に行われます。そのため、多くの色を使ってもどうせグレースケールになりますので、せいぜい黒、濃い灰色、薄い灰色、白の4色です。頑張れば網掛けやストライプで表現の幅は広げられるかもしれませんが美しくはありません。
制約は創造性の母です。まずは4色と決めて、そこで出来るもっともわかりやすいであろう表現を探りましょう。
情報を減らす
もうほぼこれに尽きます。先にも述べたように、審査員は分野外であなたの研究分野に興味があるわけではありません。自分の興味のある分野のデータなら理解しようと能動的に動きますが、そうではないのですから、なるべくわかりやすい情報を示す必要があります。
別に理解できなくても良いと思っている相手に情報を届けるのは大変です。そのためには、なるべくシンプルにわかりやすく情報を提供する必要があります。図であれこれと言わずになるべくシンプルに示すことが必要になります。
たとえば、漫画はどんなにボーっとしていても読み進められますが、専門書だとそうはいきません。審査員は分野外の人なので、「教育してあげよう」などと思わず、まずは研究内容について大まかに理解してもらう(もっと言えば、理解した気になってもらう)ことが重要です。そのためには、複雑なこともシンプルに説明してしまうような図が重要になります。