推薦書・評価書は申請者が(元)指導教員や受入教員などに依頼して用意するものです。しかし、
- 実質、自分で全部書かないといけない
- 下書きだけは準備しないといけない
- 評価者だが、そもそもどんな風に書いていいのかがわからない
といったケースは少なくありません。推薦書や評価書の内容を目にする機会は少なく、書き方指導をしたもらう機会もありません。さらに、自分の評価書や推薦書は目にする機会がわずかながらありますが、他人の申請書を目にする機会はさらに少なく、知っているものが正しい方向性で書かれているかどうかを判断する基準もありません。
ですます調で、褒めちぎることが基本
推薦書・評価書はどんなに偉い人であっても、極めて丁寧な文体で書きます。そのため、です・ます調が基本で、だ・である調は滅多に見かけません。
そして内容は申請者がいかに優れているかを書きます。ただし、推薦書の立場としては、自らの名前を出して推薦するものですから、推薦できないような人物に対しては責任を持てないため、褒めない場合が極まれにあります。「褒めない」程度がどの程度かは人により、トーンを抑えて当たり障りのないことを書く場合もあれば、もっと過激に、お勧めしない旨を書く場合もあります。
読んでいるこちらが恥ずかしくなるくらい褒めてくれるのが基本だとしても、(申請者が自ら書く場合を除けば)そうでない可能性もあることを認識しておきましょう。申請者と評価者の普段時の関係や評価者の基質によるところが大きいです。
褒めの内容は、成績、研究室での態度、研究成果、課外活動などさまざまです。
申請者しか知りえないことは書かない
自ら、内容を考えないといけない場合は、まずはどんなエピソードがあるかを書きだします。この際に、評価者目線を忘れないようにしてください。たとえば、研究室での態度は、研究室主催者としては気になるところで、実際、推薦書でも定番の内容です。さまざまな視点からなるべく多くの評価ポイントを書きだしましょう。評価を依頼する場合でも、こうしたエピソードリストを併せて渡すようにすると、ありがたがられると思います。
自分で評価書を書く場合は、次に、その内容は評価者が知りうるものなのかを考えます。たとえば、GPA(成績)は普通、他の人には示さないので、それをもとに高い評価をするのは変です。一方で、成績優秀者賞を取ったなどは、申請者以外も知りえる内容なので、それをもとに評価することは自然です。
評価は単に、すごい、頑張っているでは不十分で、具体的に評価する必要があります。たとえば、以下のような内容です
なるべく具体的に書くことで、誰と比較してどれくらいすごいのか、や、世間での申請者あるいは申請者が関わった仕事の評価はどうなのか、評価者がどのように評価しているのかを審査員に具体的に伝えるようにします。
審査員は申請者の人となりを知りませんので、研究以外については申請者の自己評価とこの評価書だけしか評価の根拠がありませんので、ポジティブな評価を引き出せるようになるべく具体的に書いて審査員が評価しやすくすることが大切です。
申請者と全く同じ内容は割ける
自分で書く場合は特に、エピソードの下書きが同じであることもあり、どうしても同じような内容になってしまいます。審査員は両方を読みますので、同じ内容が繰り返されていれば、すぐに気づくでしょう。
こうしたことを避けるためにもエピソードの引き出しを多くし、何を自己評価で書き、何を評価書で書くかを精査してください。全く違う内容にする必要はありません(むしろ乖離が気になります)が、完全一致だけは避けるようにしてください。1つ2つ独自の内容があれば十分でしょう。
複数の評価書を同時に書く時は文体に気を付ける
2名以上の評価書や推薦書を申請者自らが書く場合、文体にも気を付ける必要があります。同じ人が書くとどうしても似たような文章になってしまいますので工夫が必要です。
工夫1 過去の他の人に書いてもらった評価書を転用する
人物評価の細かいところは変わっても、誰かを評価する際の評価の方法はそれほど変化しません。もし、あなたが評価書を持っているならその文体をもとに評価書をかくようにすれば、文体が類似するということはあまり気にしなくても良いでしょう。
このように、評価書は資産ですので、集められるのであれば集めて大事に保管しておいてください。役立つはずです。
工夫2 生成AIなどを活用する。語尾だけでも変える
2つのうち一つは自分で書いて、もう一つは生成AIに書いてもらうなどすれば、確実に異なる文体の評価書が出来上がります。生成AIに評価してもらいたい内容をなるべく具体的に伝えるようにします。
また、2つの評価書をなるべく文体を変えて書き、最後に1つをです・ます調で、もうひとつをだ・である調にすることは比較的・簡単な方法です。(だ・である調の評価書は少ないですが…)
具体例
研究者としての強み
注意書きにもあるように、具体的なエピソードが必要です。ここもだいたい書く内容は似ており、コミュニケーション、リーダーシップ、論文の多読・積極的な発表、学際性、受賞、論文執筆などが多く見られます。
今後研究者として更なる発展のため必要と考えている要素
申請者自身で書く場合や書いてほしい項目を伝える場合は、申請者が書く内容とある程度(完全にではない)合わせておきましょう。指導教員が見た課題と本人が考えている課題の不一致は、自分のことが客観的に見えていないと捉えられてしまう可能性があります。また、単に指摘で終わらず、上手にフォローすることで強みに変えるように話をもっていきましょう。