面白い研究テーマの見つけ方

面白い研究テーマがどんなものであるか、がわかったところで、それを見つけて自分のものにできなければ意味がありません。ここでは、どのようにしておもしろい研究テーマを見つけるかについて説明します。

面白いテーマ = 問題の重要性 ☓ どれくらい理解できたか (☓ かかる時間 ☓ 多様性)

面白い研究テーマとは問題自体の価値が高く、かつ、高い解決度(解の質)が見込まれるテーマです。選択可能なテーマ(黒丸)は数多くありますが、実際に取り組む価値のあるテーマ(赤丸)はそれほど多くありません。

慣れていないうちは解の質にこだわり、問題の価値を重要視しない傾向にあります(左上)。しかし、普通の石をどんなに磨いても宝石にはならないように、元の問題の価値が低いと、いくら質の良い研究をしてもあまり報われません。

問題の価値

先にも述べたとおり、

重要な問題 =

  • 未だ意見が対立しており、決着のついていない問題
  • これまでの考え方を根本から見直さないといけない問題
  • これからの研究の方向を決定づける問題

ですが、どのようにして価値のある問題を見つけるかについては、残念ながら具体的な方法はありません。明らかにくだらない問題はすぐにわかるかと思いますが、ある程度以上になってくると重要さに優劣はつけにくくなってきます。食べられる果物とそうでない物を区別することは簡単ですが、リンゴとブドウのどちらがおいしいかを決めることは難しいようなものです。

審査員は全く異なる問題を扱った多数の申請書を読み、優劣をつけないといけません。しかし、「これは解く価値がある問題だけど、こちらは解く価値がない問題である」と断じられるほどの自信を持てる人はいません。そうなると、申請者自身が「いかにこの問題が重要なのか、解く価値があるのか」を説明し、審査員を説得することが何よりも重要になります。上に挙げた重要な問題の3つの指針は全て「だから、この問題を解決しないといけない」と審査員に訴えかけるという点で説得力があります。

問題の本質的な重要度は誰かが決められるようなものでもありませんし、私たちは最後まで「真の重要度」を知ることができないでしょう。だからこそ、審査員を含む多くの人が納得しやすい問題提起をすることが、重要なのです。

ですので、何が重要な問題なのかについて考えすぎることに意味はなく、ある程度以上重要な問題であるのであれば、その重要性をどう説明するかを考えた方がうまくいきます。その際には、

1.様々な視点から見てみる

あなたが扱うネジの研究はつまらなく地味な問題と考えているかもしれませんが、NASAにとっては喉から手が出るほど必要なの技術を含むものかもしれません。こういったことは誰も教えてはくれませんので、自分でアンテナを広げてリサーチしておく必要があります。自分の研究の価値を提示するのも研究の重要な一部です。

2.他の人も問題と考えている

思考は大抵の場合、被り、繰り返されます。あなたが扱う問題は他の人も扱っている(きた)かもしれません。他の人も重要だと思っていること自体は問題の重要性を示す根拠になります。ただし、その解決方法が他の人とは異なる必要があります。同じ問題に同じように取り組んでいては独自性が全くありません。そんなものは、他の人に任せてしまいましょう。

3.新しい価値を生み出せないか考えてみる

ある狭い領域の問題だけを解決する研究より、多くの領域に関わる問題を解決する研究の方が価値があるのは明らかです。オズボーンのチェックリストを技術ではなく、アイデアやコンセプトに対して適用すると、良い問題を思いつくことができます。私自身は特に以下の(1)転用と(8)逆転を好んで使っています。

オズボーンのチェックリスト

ブレーンストーミングを作ったアレックス・F・オズボーンが作った発想法で、あらかじめ準備したチェックリストに答えることでアイデア発想する方法です。オズボーンのチェックリストは以下の9つがあります。

1.転用

新しい使い道は?他分野へ適用はないか?       

2.応用

似たものはないか?何かの真似はできないか?

3.変更

意味、色、働き、音、匂い、様式、型を変えられないか?

4.拡大

より大きく、強く、高く、長く、厚くできないか? 時間や頻度など変えられないか?

5.縮小

より小さく、軽く、弱く、短くできないか? 省略や分割できないか?何か減らすことができないか?

6.代用

人を、物を、材料を、素材を、製法を、動力を、場所を代用できないか?

7.再利用

要素を、型を、配置を、順序を、因果を、ペースを変えたりできないか?

8.逆転

反転、前後転、左右転、上下転、順番転、役割など転換してみてらたどうか?

9.結合

合体したら?ブレンドしてみたら? ユニットや目的を組み合わせたら?

解の質

データを積み上げることは必ずしも解の質の向上にはつながりません。また、簡単にできることは大抵の場合、価値が低いものです。

とはいえ、解の質の上げ方にコツは無く、皆さんが知っているとおりです。一つの結論を複数の方法で導くことや、ロジックを丁寧に追うことなどは、基本的なことですが重要です。主張のコアとなるデータがどこにあるのかを見極め、そこについてしっかりとしたデータを足すことで解の質を上げることが可能です。

私はよく、自分をすごく嫌っている人がレビューワーだった時に何を言われるかを想定し、予め対策をとるようにしています。

かかる時間

解の質をいたずらに追い求めることは効率という点では不利に働きます。テーマの面白さは掛け算ですので、そこそこの完成度であっても素早く世にだした方が、総合的には良い評価となることも多くあります。まさにQuick & Dirtyです。

データを補強することに集中しすぎたために、もっと質の低い論文を先にだされた、すでにブームが去って研究の価値がなくなっていた、世に出すタイミングを逃したというような話はあちこちで聞きます。私にとっても耳が痛い話ですが、そこそこで妥協することも重要な要素です。トップジャーナルに狙う時はもちろん妥協できませんが、それでも旬を逃さないことは重要です。

多様性

新しい技術、新しい発想、新しい組み合わせなど、人と同じことはしないぞと意識するだけで多様性は生み出せます。こうした独自のアイデアもオズボーンのチェックリストで生み出せます。

しかし、ここも突き詰めすぎると誰もついていけず、逆に評価されません。主流から半歩ズレる程度がバランスが良いでしょう。

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