創造性は、比較的書きやすい項目です。ただし、「創造」という言葉をどう捉えるかで、書き方は大きく変わります。ここでいう創造性とは、単に「新しいことをする」という意味ではありません。本研究によって、申請者自身の研究目的を超えて、他の研究者や社会に新しい価値が生まれることを指します。
創造性とは、「何らかの新しく価値のあるものが作り出されること」です。申請書においては、本研究の成果が、申請者以外の人にどのような新しい研究、新しい理解、新しい技術、新しい行動を生み出すのかを説明することになります。以前の科研費のフォーマットでは「波及効果」という表現が使われていましたが、創造性も基本的にはこれに近いものだと考えるとわかりやすいでしょう。
同じ額の研究費を投資するのであれば、その成果がより広く、より深く行きわたる研究の方が価値は高いと考えられます。つまり、創造性で問われているのは、「あなたの研究は、あなた以外の人にどれくらいのメリットをもたらすのか」ということです。
発展性・将来のインパクトを書く
創造性では、本研究が完成したときに、自分の研究領域や周辺分野、さらに社会に対してどのような展開が期待できるかを書きます。
本研究の完成は〇〇〇についての理解を大幅に進めるものであり、これまで不可能であった〇〇〇や〇〇〇を実現するための基盤となりうる。
このように、本研究の成果が何につながるのかを説明します。ただし、単に「健康になる」「生活の質が向上する」「安くなる」「便利になる」といった一般的な表現に終始してはいけません。それだけでは、どの研究にも当てはまりそうな弱い説明になってしまいます。創造性を書くときには、より具体的に、何がどう変わるのか、その変化がなぜ重要なのかを示す必要があります。
たとえば、「〇〇〇の理解が進む」だけではなく、「〇〇〇を制御する新しい標的が得られる」「〇〇〇の予測精度が向上する」「〇〇〇に関する従来の議論を統一的に説明できる」「〇〇〇という新しい研究手法を他の領域にも展開できる」といった形で、成果の使われ方まで踏み込んで書くとよいでしょう。
得られる結果の汎用性・普遍性・多様性を書く
創造性を説明するうえで重要なのは、本研究の成果がどれくらい広く使えるのかです。研究成果の波及効果が大きければ大きいほど、その成果を利用できる人が増えます。
今回開発する〇〇〇技術は、本研究分野だけでなく〇〇〇など幅広い研究分野に適用可能であり、これにより……
本研究で明らかになる〇〇〇の仕組みは、マウスに限らず広く生物一般で見られる現象であるため、〇〇〇に関する理解を大幅に進めることが期待される。
本研究で明らかになる〇〇〇の仕組みは、これまでに知られている〇〇〇とは全く異なっている。こうした多様な制御様式を明らかにすることで、より複雑な〇〇〇の制御が可能になると期待される。
このように、創造性では、研究成果の汎用性、普遍性、多様性を示すことができます。ある技術が他分野でも使える。ある仕組みが特定の材料やモデルに限らず広く成り立つ。ある現象が、これまでの理解とは異なる多様な仕組みの存在を示す。こうした内容は、本研究が申請者だけで完結しないことを示すため、創造性として書きやすいポイントです。
どこに波及するのかを書く
創造性は、今回の研究が最大限うまくいった場合に、その成果がどこまで及ぶのかを示す項目です。多くの場合、波及対象は次の3つに分けて考えると整理しやすくなります。第一に自分の研究分野、第二に周辺関連分野、第三に社会です。すべてを書く必要はありませんが、少なくとも自分の研究分野へのインパクトは必ず書くべきです。余裕があれば、周辺関連分野、社会へのインパクトも加えます。
自分の研究分野に対するインパクト
本研究が完成したときに、その分野に何の影響も与えず、他の研究者にもまったく参考にされないのであれば、その研究の価値は低いと判断されても仕方ありません。したがって、創造性ではまず、自分の研究分野に対するインパクトを書く必要があります。
たとえば、未だ意見が対立しており決着のついていない問題を解決する、これまでの考え方を根本から見直す必要性を示す、これからの研究の方向性を決定づける、といった内容は、研究分野に大きなインパクトを与える代表例です。
ここで重要なのは、単なる希望を書かないことです。「本研究は当該分野に大きな影響を与えると期待される」と書くだけでは不十分です。本研究で得られるどの成果が、どの議論を前に進めるのか。どの知見が、今後の研究の方向性を変えるのか。どの方法が、他の研究者にも利用されるのか。こうした点を、できるだけ具体的に書く必要があります。
周辺関連分野に対するインパクト
良い研究は、自分の分野だけにとどまらず、周辺関連分野にも影響を与えます。本研究で作ったデータベース、材料、装置、解析手法、概念、アイデアなどが、他の研究領域でも利用可能であれば、その研究はより創造的だと言えます。
たとえば自然科学分野で言えば、GFPのように、分野を超えて広く利用される技術や材料は非常に創造的です。もちろん、すべての研究がGFPのような大きな波及効果を持つわけではありません。しかし、自分の研究成果が周辺分野のどこで使えるのかを考えることは重要です。
本研究で得られる〇〇〇の解析基盤は、△△△分野における□□□の解析にも応用可能である。
本研究で提案する〇〇〇という考え方は、これまで個別に扱われてきた△△△と□□□を統合的に理解する手がかりとなる。
このように、周辺分野にどのような展開があり得るのかを書けると、研究成果の広がりを示せます。
社会に対するインパクト
社会に対するインパクトは、研究の将来展望と言い換えてもよいかもしれません。研究分野だけにとどまらず、社会に対して良い影響を与えることも、研究の価値を判断するうえで重要です。本研究がどこを見据えて行われているのか、最大限うまくいった場合にどのような未来が見えるのかを共有しておくことには意味があります。
ただし、社会に対するインパクトは、研究成果から距離がある場合も多く、根拠が弱くなりがちです。そのため、あまり長々と書くと、かえって空虚に見えてしまいます。基本的には、当該研究分野へのインパクト、周辺関連分野へのインパクト、社会へのインパクトの順に書き、分量もこの順に少なくしていくのがよいでしょう。
社会へのインパクトを書く場合も、「社会に貢献する」「人々の生活を豊かにする」といった抽象的な表現だけで終わらせないようにします。本研究の成果が、将来的にどのような技術、制度、治療、教育、産業、政策などにつながり得るのかを、できるだけ具体的に示します。ただし、研究内容からあまりに遠い未来を大きく書きすぎると、現実味がなくなります。遠い将来展望は、控えめに、しかし魅力が伝わるように書くのがよいでしょう。
創造性を書くときの基本形
創造性を書くときには、「本研究では、〇〇〇を明らかにする」で止めないことが重要です。それだけでは、研究目的を述べているだけです。創造性として書くなら、次のように、その成果が他の人の研究や行動を生み出すことまで書きます。
本研究で〇〇〇を明らかにすることで、〇〇〇が〇〇〇となると期待される。
本研究で確立する〇〇〇は、△△△分野にも応用可能であり、□□□の研究を加速させる基盤となる。
本研究の成果は、〇〇〇に関する従来の理解を更新し、今後の△△△研究に新たな方向性を与える。
このように、「成果」だけでなく「成果が何を生むのか」まで書くことが創造性です。
独自性と創造性の違い
創造性は独自性とセットにして語られがちですが、両者は向いている方向が違います。独自性は、他の研究と比較したときの自分の強みを説明するものです。申請者ならではの材料、技術、アイデア、予備データ、研究環境によって、他の研究では難しいことを実現できると示すのが独自性です。
一方で創造性は、この研究がどの範囲まで影響し得るかを説明するものです。本研究の成果が、当該分野の研究者、周辺関連分野の研究者、社会に対してどのような新しい価値を生み出すのかを書くのが創造性です。
つまり、独自性は「なぜ申請者の研究は他と違い、優れているのか」を示すものです。創造性は「その研究が完成したとき、どのような新しい展開が生まれるのか」を示すものです。
まとめ
研究の創造性とは、あなた以外の人に与える良い影響、つまりインパクトです。本研究の成果が、当該分野の他の研究者、周辺関連分野の研究者、社会にどのような影響を与えるのかを切り分けて考えると、創造性は書きやすくなります。
良い研究とは、それが足がかりとなって、次の研究や新しい行動につながる研究です。その足がかりを申請者だけでなく他の人も利用できるのであれば、より良い研究だと言えます。つまり、なるべく多くの人にとって役立つ研究、独りよがりではない研究こそが、他の人の新しい研究の方向性や可能性を導くという意味で創造的なのです。性は他と比較した自分の強みについて、創造性はこの研究がどの範囲まで影響しうるか、について説明しています。