創造性は比較的書きやすいところです。「創造」という言葉をどう捉えるかが全てです。
創造性とは何か
創造性:何らかの新しく価値のあるものが作り出される事象
Wikipedia
創造性とは、本研究の直接の目的を超えて、何か新しい価値を他の人にもたらすことです。同じ額の研究費を投資するのであれば、その成果がより広く・深く行きわたる方が研究の価値は高いという考え方は自然です。あなたの研究は「あなた以外」の人にどれくらいのメリットをもたらすのでしょうか?
発展性・将来のインパクト
その研究が完成すると、自分の領域や他の研究領域にどのような展開が期待できるか、社会に対してどのような影響を与えるかを説明します。単に「健康になる」、「生活の質が向上する」、「安くなる」、「便利になる」のようなありきたりの説明に終始せず、より具体的に何がどうなるのか、その効果がいかに重要であるかの説明が必要です。
得られる結果の汎用性・普遍性・多様性
研究成果の波及効果が大きければ大きいほど、その研究成果を多くの人が享受できます。自分の研究分野を含めた広い分野に対して、この研究がどのようなメリットをもたらすのかを示します。
どこを対象にするのか
創造性≒波及効果であり、今回の研究が最大限うまくいった場合にその成果が「どこに」及ぶのかはこちらが指定する必要があります。多くの場合、以下の3つの波及対象の全てあるいは2つくらいについて書きます。
自分の研究分野に対するインパクト
これは絶対に書く必要があります。この研究が完成した時にその分野に何の影響も与えず全く参考にされないならば、その研究の価値は低いと判断せざるを得ません。
面白い研究とは何かでも解説したように、
・未だ意見が対立しており、決着のついていない問題を解決する(問題解決)
・これまでの考え方を根本から見直す必要性を示す(問題提起)
・これからの研究の方向性を決定づける(解決の方向性の提示)
などは、研究分野に大きなインパクトを与える代表例です。本研究で得られる成果はどういった点で、当該研究領域の今後の研究に影響を与えると予想されるのかについて根拠とともに書くようにしてください。単なる希望ではだめです。
周辺関連分野に対するインパクト
ある研究がその分野に対してインパクトを与えるのは、それを狙って行っている研究であることから、当然です。良い研究とは、自分の分野だけにとどまらずに周辺領域にまで好影響を与えるような研究である主張も納得できると思います。
本研究で作ったデータベース、何かのモノ、考え方・コンセプト・アイデア、研究手法、装置etcなどが他の研究領域でも利用可能であれば、多くの人のこれからの研究に影響を与えたという意味で非常に創造的です。たとえば自然科学分野で言えばGFPなどは、分野を超えて利用されているという意味で非常に創造的です。
社会に対するインパクト
この研究の将来展望と言い換えても良いかもしれません。研究分野だけにとどまらず、社会に対して良い影響を与えることも研究の価値を判断する上で重要です。この研究がどこを見据えて行われているのか、最大限上手くいった場合にどのような未来が見えるのかを共有しておくことは重要です。
ここに関しては数年以上先の遠めの将来展望を書くことになり、根拠も弱くなりますので、あまり長々と書いてもむなしいだけです。書くとしても他よりかは扱いが軽くなります。基本的には、当該領域へのインパクト>周辺関連領域へのインパクト>社会へのインパクト、の近い将来順に書くことになり、分量もこの順に多くします。
まとめ
研究の創造性とは、あなた以外の人に与える良い影響(インパクト)です。以前の科研費のフォーマットでは「波及効果」と書かれていました。こちらの方が想像しやすいかと思います。
このことから、創造性を書くときには「本研究では、〇〇〇を明らかにする。」でとどめず「本研究で〇〇〇を明らかにすることで、〇〇〇が〇〇〇となると期待される。」のように、研究成果が申請者以外の新しい研究や行動を創造しうることを書きます。
- 当該分野の他の研究者
- 周辺関連分野の研究者
- 社会
と影響が及ぶ対象を切り分け、それぞれに対してどのような影響をもたらすと期待されるのかを明確に書くようにすることで、審査員に対して「この研究の」価値をよりアピールできます。
良い研究とは、それが足がかりとなって先に進むことができる研究です。その足掛かりを自分だけでなく他の人も利用できるのであれば、より良い研究であるといえます。つまりなるべく多くの人にとって役立つ研究、独りよがりではない研究こそが、他の人の新しい研究の方向性・可能性を導くという意味において創造的である。ということです。
創造性は独自性とセットにして語られがちですが、向いている方向が違います。独自性は他と比較した自分の強みについて、創造性はこの研究がどの範囲まで影響しうるか、について説明しています。