もっとも多くある勘違いが
といった独自性のアピールです。要は「新しいから独自だ」と言っているのですが、これは2つの点でよくありません。
研究とはそもそも新しいものである
全ての研究はこれまでにない新しいことをするものです。全く同じことをするのを研究とは呼びません。それが根本的に違っているのか、少しだけ違っているかの違いはあるかもしれませんが(この辺りはそもそもの研究テーマの設定の問題です(面白い研究テーマの見つけ方))、微視的に見れば新しいことをするには違いありません。
そのため、「新しいから独自だ」という理屈に従えば、全ての研究は新しいので、全ての研究は独自になります。しかし、独自性とは、他との比較において独自である・独自でないが決まることを考えると、これは矛盾です。ここまで理屈っぽいことを言わなくても、全員が独自だと叫んだ瞬間、それは独自ではなくなるというのは当然でしょう。
このように、「新しいから独自だ」という理屈は成立しません。
新しいこと≒すべき価値のあること、ではない
これまでにされていない新しいことは山ほどあります。そうした中で、新しいことだけを理由に独自性を主張しても響きません。たとえば、
は一見すると良さそうな主張です。しかし、これも突き詰めて考えれば「新しいから独自である」と言っているにすぎません。もしこの理屈が成り立つなら、
- 私の家の庭石の産地を調べた研究はこれまでにない。本研究は初めて我が家の庭石の産地を明らかにする点で独自である。
- これまで雑草が空を飛べるかを真面目に検討した例は存在せず、本研究で初めてその可能性を検討する点で独自だ。
のような主張も同程度に独自性のある研究と言えます。しかし、これらの研究を評価しようとは思わないでしょう。
つまり、独自性とは単に新しいことをするからすごい、という主張ではなく、重要なのにわかっていない問題を、他の人にはできないが申請者なら(ギリギリ)解決できるから独自なのです。こうした点を意識して書かないと、すぐに「新しいから独自だ」という主張になってしまいます。