先行研究のチェック

関連分野だけでも、毎日のように多数の論文が出版されており、それら全てを把握するのは困難です。それでも、自分が関わる分野については定期的にフォローしておかないと、何がわかっていて何がわかっていないのかを判断できません。

申請書においても時々「〇〇〇については全く明らかにされていない(実際には、そんなことはない)。」みたいな事例を見かけます。審査員がもしその分野について知っていて、申請者の背景知識が不足しているとみなされると、それ以外の研究内容についても信用されなくなってしまいますので、注意が必要です。

学術データベースの利用

PubMedGoogle Scholarなどの学術データベースは、多数の学術論文を収録しており、検索機能を使って関連する論文を見つけることができます。キーワードや著者名、タイトルなどを使って検索し、絞り込み条件を適用して目的の論文を見つけましょう。各分野に特化したデータベースサイトも数多くあります。

引用文献、被引用文献、関連文献の参照

関連論文を調べる際には、引用文献リストを確認することが重要です。ある論文がどのような論文を先行研究と見なしているのかを調べることで、研究の流れを大まかに知ることができます。

また、興味深い論文を読んだ場合、その論文を引用している論文を調べることも可能です。PubMedではSimilar articlesやCited byという形で関連文献が表示されています。

総説の参照

総説は、特定の研究領域における重要な論文やトピックのまとめです。文献レビュー論文を読むことで、その分野の最新の状況や関連する論文を把握することができます。特にここ数年の論文をざっと把握したい場合には便利です。

学術コミュニティとの交流

学会やセミナー、研究グループなどの学術コミュニティに参加し、他の研究者との交流を図ることも関連論文を見つける手段の一つです。他の研究者からの推薦や提案を受けることで、新たな研究方向や関連する論文を知ることができます。こんな論文を探している、と聞いて回ると高確率で求めている情報に出会えます。

ウェブ検索・画像検索、SNS検索、AI検索

論文を検索する際にGoogle等を用いて検索するのも有効な手段です。ある研究材料を使っている論文など、論文タイトルだけからは見つけにくいものも比較的簡単に見つけることができます。また、画像検索では論文の図が検索結果として見えるで、求めている内容に合致するかどうかを素早く判断することができます。

また、X(Twitter)で論文の内容を発信している人も多く、特に新しい論文を探すときには重宝します。わかりやすいキーワードがある場合は特に有効です。

最近ではPerplexityのようにWeb検索に強い生成AIも登場しています。今後さらに発展することが見込まれますので、興味のある人は動向を追いかけておくと良いでしょう。2024年11月時点では、GMOが提供している天秤AIでは、有料版を含むChatGPT、Gemini、Claude3、Perplexityが無料で使え便利です。

過去の採択事例・審査委員の調査

助成金の募集ページには大抵の場合、過去の採択者と課題名、審査員が掲載されています。これらは応募しようとしている助成金の性格が大きく反映されるところであり、申請書を書く際に、どの研究テーマで書くのか、どれくらいの背景知識をもっていると想定するのか、などのヒントになります。

また、研究を始めるにあたっては関連する研究がどれくらいあるのかを調べることも大切です。自分では新しいと思っていても、すでに誰かが研究していたということはよくあります。

科研費や学振のように1000人単位で採否が決まるような場合は、全てチェックすることは困難ですが、採択者が~100名程度のものであれば、どのような申請が採択されているかチェックすることはとても有効です。

採択されやすいテーマを探す

民間財団やプロジェクト型の助成金の場合などは、特定のテーマを優先して採択するケースがあります。たまたま該当しているのであればラッキーですが、そうでない場合においても、少しでも採択される可能性が高いテーマを選択するようにしましょう。研究内容についても同様で、たとえ実施する研究内容は同じでも、書き方次第では財団が好む内容に寄せることは可能です。

採択された申請書を探す

公開された過去の採択者の中には知り合いがいるかもしれません。申請書を見せてもらえないか頼んでみるのは有効なアプローチです。採択された具体的な内容を知ることができますし、他の人の申請書の書き方を知るよい機会でもあります。

「他の人には内容を漏らさない。純粋に書き方の参考にさせて欲しい」と伝えれば、大抵の場合は見せてもらえるでしょう。ネット上で公開されていることもあるかもしれませんので、一度は検索してみましょう。

審査員を知る

審査員が公開されている場合は、審査員の専門を調べておきましょう。大抵の場合、分野が近い審査員が申請書を読みますので、その審査員が理解できるように申請書を書く必要があります。すごく専門の近い審査員がいるのであれば、ある程度詳しい内容を書いておいた方が申請書の価値を評価してもらいやすくなるでしょう(他の審査員を置いてけぼりにしてはいけませんが)。

いずれにせよ、誰に向けて書くのかの具体的なターゲットが明確であるほど有利になります。

募集要項のチェック

申請書を書こうと決めた後にすぐにすべきことは、募集要項のチェックです。以下にチェック時のポイントを挙げます。

締切日

募集要項には締切日が明記されています。申請書の提出期限を確認し、遅延しないようにしましょう。

締め切りに余裕があるからと、のんびり構えていると最終的な完成度を高める余裕がなくなります。なるべく早く手を付けることをお勧めします。申請書作成のスケジュール感については以下を参考にしてください。

学内締め切り日は余裕をもって設定されていることが多く、頼み込めば数日は延長可能であることも多いです。

必要書類

募集要項には提出する必要のある書類が記載されています。必要書類の一覧を確認し、不足しないようにしましょう。

所属機関の公印が必要である場合などは、申請書の締め切りとは別に学内の締め切りが設定されていますので、見落とさないようにしましょう。

ポイント

申請書を印刷して提出する場合には、真っ白な紙(白色度90%以上)を使うようにしましょう。高いものでもないので、自腹で購入しても知れています。黒いインクとのコントラストで、はっきりとした印象になりますし、本気度もアピールできます。

購買部やホームセンター等で購入できます。

応募資格

募集要項には応募資格が明示されています。自分が条件を満たしているかどうかを確認し、応募可能かを確認しましょう。

特に年齢・学位取得後の年数の制限は引っかかりがちです。裏を返せば、制限がきつければきついほどライバルも少ないので、いますぐに応募する予定がなくても、主要な助成金については一通り応募資格を把握しておくと取りこぼしが少なくなります。

提出方法

申請書を提出する方法が募集要項に明記されています。郵送やオンライン提出など、正しい手続きを取るようにしましょう。

とくに郵送の場合は必着なのか消印有効なのかで変わってきますので、しっかりと確認したうえで、余裕をもって応募するようにしましょう。

ポイント

助成金の申請書はともかく、教員公募書類や賞への応募書類は簡易書留あるいはレターパックで送るのが良いでしょう。追跡が可能な方法で出しておくと万が一のときのトラブル除けになります。かつては簡易書留か普通郵便どうかで常識を測る先生もいたようですし…

  • 一般書留 引受けから配達までの経由郵便局を含めた送達過程を記録し、万一、郵便物等が壊れたり、届かなかった場合に、実損額(10万円まで)を賠償します。
  • 簡易書留 引受けと配達のみを記録し、万一、郵便物等が壊れたり、届かなかった場合に、実損額(5万円まで)を賠償します。一般書留に比べて、料金が割安です。
  • レターパックプラス 郵送物を届け先に対面で直接渡し、受領印もしくは署名をもらいます。不在の場合は郵便受けに入れず、不在配達通知書を差し入れたうえで、一度郵便局に持ち帰ります。重さは4kgまで。
  • レターパックライト レターパックプラスとは異なり、郵便受けに配達するサービスです。直接手渡しするわけではないため、受領印や署名の受け取りが不要です。重さは4kgまで。