日本語は英語ほど、現在、過去、現在完了を意識することはありませんが、それでも語尾の微妙なニュアンスは大切です。
#科研費のコツ 91
— 科研費.com (@kakenhi_com) April 1, 2024
これまでに◯◯が明らかにされている
これまでに◯◯が明らかにされてきた
これまでに◯◯を明らかにした
これまでに◯◯を明らかにしてきた
これらの文は微妙にニュアンスが異なります。
伝えたい意味にぴったりの言葉を探しましょう。https://t.co/oGEO9g5LNg pic.twitter.com/lMBI4TZAuQ
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ヒント:小文字のLではなく1です。
時制
これまでの解析方法には、大きな欠点がある。
これまでの解析方法には、大きな欠点があった。
これら2つの文章は、どちらも過去の解析方法に関する評価を示していますが、ニュアンスの違いは時制によって生じています。
これまでの解析方法には、大きな欠点がある
この文は、現在形を使っています。これにより、審査員は、これまでの解析方法が現時点でも欠点を持っているという印象を持ちます。さらに言えば、これからも欠点の解消の見込みが低いことが示唆されています。
こうした表現で「背景と問題点」が書かれていれば、欠点のあるこれまでの解析方法ではなく、欠点を回避する新しい解析方法について研究するといった内容を想定して、審査員は申請書を読み進めます。
これまでの解析方法には、大きな欠点があった
この文は、過去形を使っています。これにより、審査員は、これまでの解析方法には欠点が存在していたが、現時点ではその欠点が解消されている、あるいは解消される見込みがあるという印象を持ちます。
こうした表現で「背景と問題点」に書かれていれば、この欠点を克服するための工夫をして解析方法を改善するといった内容を想定して、審査員は申請書を読み進めます。
こうした審査員の予想と実際の研究内容が一致していれば、審査員は本研究を理解できたと実感するでしょうし(そして高い評価をくれる)、一致していなければ審査員は肩透かしを食らった気分になってしまうでしょう。
受動態・能動態+時制
〇〇〇が明らかにされた。
〇〇〇が明らかにされている。
〇〇〇を明らかにした。
〇〇〇を明らかにしてきた。
〇〇〇が明らかにされた
この表現は、何かが過去に明らかにされたことを示しています。これは単なる事実の報告であり、それが誰によって、またはどのように明らかにされたのかについては言及されておらず、極めてニュートラルな表現です。
しかし、「〇〇〇が明らかにされている」と表現しないことは、現在はそうではないことを暗に意味しており、申請書では、「〇〇〇が明らかにされた。しかし、最近の研究では…」のように過去の研究が実は違っていたというような場合の布石としても使われます。
〇〇〇が明らかにされている
この表現は、何かが現在までに明らかにされており、その状態が続いていることを示しています。これは状況が進行中であり、または現在も続いていること、すなわち申請者やコミュニティがそのことを事実だと認識していることを示します。
〇〇〇を明らかにした
この表現は、申請者(ら)が何らかのアクティブな役割を果たし、何かを明らかにしたことを示唆しています。第三者ではなく申請者が明らかにした以上、申請者はこの結果を事実だととらえていますので、「〇〇〇を明らかにしている」と同様の意味になります(同じ表現なので短い方を採用)。
〇〇〇を明らかにしてきた
この表現は、申請者(ら)が何らかのアクティブな役割を果たし、何かを明らかにしたことを示唆しています。「〇〇〇を明らかにした」よりも継続的に研究分野あるいは社会に対して貢献してきたこと、すなわち専門家であることを示しています。
このように、語尾のちょっとした変化で、その文が発するメッセージは異なってきます。一つ一つは小さいことですが、全体として方向性がバラバラであると申請者の立ち位置を見失いやすくなり、審査員には伝わりません。