審査員はあなたの研究分野に詳しくありませんので、「登場人物」は極力少なくするべきです。遺伝子名、具体的な日時、細かい手順etc それらは申請書の内容を大体理解する上で本当に必須ですか?多すぎる情報は、本当に伝えたいことを隠してしまいます。

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みなさんは『不思議の国のアリス』の内容を覚えているでしょうか。登場人物としてアリスやトランプの女王、うさぎ、チェシャ猫あたりが出てくることは覚えているかもしれませんが、他にもグリフォンやドードー鳥など実にさまざまな登場人物がでてきますし、話も(夢の中なので)首尾一貫性がなく、内容を完ぺきに理解するのはなかなか困難です。一方で『一寸法師』は一寸法師、お姫様、鬼あたりを押さえておけば内容的には十分理解でき、非常にシンプルなお話です。

登場人物(理解すべき要素)の数の少なさは、わかりやすさ

申請書においても同じです。やたらと固有名詞や研究背景・研究の歴史を細かく説明すると意識がそちらに行ってしまいます。審査員は基本的には最初から順に申請書を読んでいきますので、いま説明されている内容が、本研究計画を理解する上で重要な要素かどうかはわかりません。実際には重要でないことに対して審査員の貴重なメモリーを使わせてしまうと、肝心の内容にまで意識が及ばない可能性もあります。特に重要ではないのであれば、最初から提示しないことが重要です。

本当に重要なものが何かをよく見極めたうえで、重要性の低いもの・話が複雑になりすぎるものについては、多少のデフォルメも時には必要です。

たとえば、「カラスが黒い」「地球は球体である」という主張は厳密には正しくありませんので、これを補おうと「カラスは黒い個体がほとんどだが、時には白い個体もおり、また灰色の個体もいる」や「地球は正確には球体ではなく、やや縦に長い洋ナシ形である」のように書いてしまうと情報量が跳ね上がります。その割には、メインの主張自体はほとんど変わりがなく、結局のところ「ほとんどのカラスは黒い」、「地球はだいたい丸い」、ですので説明を詳しくした分だけわかりにくさが増しています。

どこまで登場人物を減らせばよいのか

かといって、登場人物(要素)の数が極端に少ないと具体性がなく、漠然としたものになってしまいます。

本研究では、これまでの問題点を見直し、全く新しいアプローチで研究する。

と書かれても、これまでの問題点が何であったのか、どうやって解決しようとしているのか、具体的に何をするつもりなのかは伝わりません。

一般的には登場人物が増えるほどにわかりやすさは下がりますし、減るほどにわかりやすさは上がります(多い中でわかりやすさを維持するのは書き手の腕の見せ所ですが、そこまでは不要です)。では、どこに最適なポイントがあるのでしょうか?

具体例としての登場人物は2-3つまで

何も考えずに書くと、基本的には登場人物の数が多くなりがちです。そうなる原因の一つは具体例を出す際に、多くの登場人物が出てくるためです。

ミトコンドリアの異常が原因となる疾患には、ピルビン酸カルボキシラーゼ欠損症、リー病、カーンズ・セイヤー症候群、ミトコンドリア神経胃腸脳症候群、HUPRA症候群…があり、さらに…

具体性をアピールしたいだけならばここまで疾患名を出す必要がなく、遺伝子名や疾患名減らす方向で考えていきます。推敲の過程で、これ以上減らすと研究計画を正しく理解・評価できないところのギリギリを見極めましょう。そのポイントが見つかったらあとは、スペースとの兼ね合いで情報を少し補ったりすることも可能です。

全ての文の役割を明確にする

書きすぎる傾向にある人は苦渋の決断をしていません。書きすぎであるならば行間を詰め、フォントサイズを小さくすれば良いと考えています。しかし、これではいつまでも要素を減らすことはできません。ある程度良く書けている文章を極限まで削ろうとすると、どこかの段階で、文字数をとるか情報量を取るか(わかりやすさ、内容の充実度)を取るかのトレードオフに行き当たります。すなわちどの1行を削ってもダメな状況、全ての文に明確な役割がある状況になります。

この状態こそが最小量の申請書であり、骨だけの状態です。このままでも内容は十分に伝わりますが、魅力に欠けるので適切に肉付けをして、審査員に対するアピール力やわかりやすさを加えていきます。この際も、付け加える文章の役割が何であるのか(新たな情報を足すための文なのか、遂行可能性を証明するための文なのか、わかりやすさを足すための文なのか…)を意識し、付け加えようとする文章は本当に増えた文字分の働きをするかをイチイチ考えるようにします。

いちど削ってから付け加えることで、ぜい肉はかなり減らすことができ、要素の数も減らすことができます。