漢字で書かないほうが良い言葉、どちらでもいい言葉、漢字で書くべき言葉があります。漢字に変換できるものは全て漢字で書く!という人はさすがに少ないですが、それでも、ひらがなで書くべきところを漢字で書く人は一定数います。
#科研費のコツ 83
— 科研費.com (@kakenhi_com) March 24, 2024
共同通信社『記者ハンドブック』など、日本語の文章作成の考え方がまとまったものがあります。
たとえば、コレ👇
公用文作成の考え方(文化審議会建議)https://t.co/izQB7fJnNY
思ったよりもひらがなで書くケースがあったのではないでしょうか。https://t.co/kRVvm9qQW5 pic.twitter.com/xiCImSwcGE
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ヒント:小文字のLではなく1です。
公文書における作文のルール
これまで公用文の作成の要領は昭和27年の内閣官房長官依命通知別冊がありました。これをもとに公文書のルールが定められており、たとえば横書きでは読点に「,」(コンマ)を使うルールがあったりします。また、平成22年11⽉30⽇の内閣訓令第1号「公⽤⽂における漢字使⽤等について」では、漢字とかなの使用ルールがまとめられています。
しかし、これらが時代遅れになったため、令和3年3月12日に文化審議会国語分科会から「新しい「公用文作成の要領」に向けて(報告)」が報告され、令和4年1月7日には「公用文作成の考え方」が出されました。
「公用文作成の考え方」の内容
基本的には、ここに書かれている原則に沿って書けば問題ありません。数は多いですが、読みやすくまとまっています。
常用漢字表の字種・音訓で書き表せない場合
訓による語はひらがなで書く
敢えて → あえて
予め → あらかじめ
或いは → あるいは
未だ → いまだ
謳う → うたう
嬉しい → うれしい
概ね → おおむね
自ずから → おのずから
叶う → かなう
叩く → たたく
止める/留める → とどめる
経つ → たつ
為す → なす
則る → のっとる
捗る → はかどる
以て → もって
依る/拠る → よる
宜しく → よろしく
坩堝 → るつぼ
他にも、3日間に亘り(→わたり)歌い続けた
「渡り」と書く誤用が非常に多く、ひらがなで書く方が良いでしょう。
音による語でも、漢字を用いないで意味の通るものは、そのまま平仮名で書く
斡旋 → あっせん
億劫 → おっくう
痙攣 → けいれん
御馳走 → ごちそう
颯爽 → さっそう
杜撰 → ずさん
石鹸 → せっけん
覿面 → てきめん
咄嗟 → とっさ
煉瓦 → れんが
難しい漢字を書くとなんだかすごそう!と思う方はこういった漢字を使いがちです。
常用漢字表にない漢字だけをかな書きにする、または、括弧内に読み方を示す
改竄 → 改ざん、改竄(かいざん)
絆 → きずな
牽引 → けん引、牽引(けんいん)
口腔 → 口こう、こうくう
招聘 → 招へい
綴る → 綴る、つづる
綴じる → とじる
酉の市 → 酉(とり)の市、とりの市
注:化学用語など、片仮名を用いる場合もある。
燐酸 → リン酸
沃素 → ヨウ素
弗素 → フッ素
蛋白質 → タンパク質
結構な割合でタンパク質を「タンパク」と省略して書く方がいますが、口語表現なのでよくありません。
常用漢字表に使える漢字があっても仮名で書く場合
助詞
位 → くらい(「くらい」は口語っぽいので、「程度」と書き換え可能)
等 → など
程 → ほど(「程度」と書き換え可能)
助動詞
~の様な → ~のような
しょうが無い → しょうがない
動詞・形容詞などの補助的な用法
~して行く → ~していく
~して頂く → ~していただく
~して下さる → ~してくださる
~して来る → ~してくる
~して見る → ~してみる
~して欲しい → ~してほしい
~して良い → ~してよい
~して貰う → ~してもらう
実際の動作・状態等を表す場合は「…街へ行く」「…賞状を頂く」「…贈物を下さる」「…東から来る」「しっかり見る」「資格が欲しい」「声が良い」のように漢字を用いる。
形式名詞
事 → こと
時 → とき
「事は重大である」「法律の定める年齢に達した時」「家を建てる所」「所持する物」
「裁判所の指名した者」のように、具体的に特定できる対象がある場合には漢字で書く。
所・処 → ところ
物・者 → もの
中・内 → うち(「…のうち」等。「内に秘める」などは漢字で書く。)
為 → ため
通り → とおり(「通知のとおり…」「思ったとおり」等。「大通り」などは漢字で書く。)
故 → ゆえ(「それゆえ…」等。「故あって」などは漢字で書く。) 様→よう(「このような…」等)
訳 → わけ(「そうするわけにはいかない」等。「訳あって」などは漢字で書く。)
指示代名詞
これ それ どれ ここ そこ どこ
漢字の持つ実質的な意味が薄くなっているもの
有難う → ありがとう(ただし「有り難い」は漢字で書く。)
お早う → おはよう
今日は → こんにちは
逆様 → 逆さま
いわゆる当て字や熟字訓(常用漢字表の付表にある語を除く。)
何時 → いつ
如何 → いかん
思惑 → 思わく
流石 → さすが
素晴らしい → すばらしい
煙草 → たばこ
一寸 → ちょっと
普段 → ふだん
滅多 → めった
その他
共→とも(「…するとともに」等。ただし「彼と共に…」などは漢字で書く。)
仮名書きを基本とするが一部のものは漢字で書く
接続詞
更に → さらに(副詞の「更に」「更なる」は漢字で書く。)
然し、然しながら → しかし、しかしながら
従って → したがって(動詞の「従う」は漢字で書く。)
然して → そして、そうして(「しかして(而して)」と読むべきところだが)
其処で → そこで
其れ故 → それゆえ
但し → ただし
処が、処で → ところが、ところで
又 → また(副詞の「又」は漢字で書く。)
〔漢字を使って書く接続詞〕
及び
又は
並びに
若しくは
問題はここです。接続詞は基本的にかな表記であるのに、この4つの接続詞だけは漢字表記が推奨されています。学振の注意書きも基本的に漢字の接続詞を用いています。
しかし、「読み手への配慮や社会の慣用に基づいて、仮名を使う場合」として、
及び → および(動詞の「及ぶ」は漢字で書く。)
又は → また(「また」がひらがなである以上、「又は」だけ漢字は変)
並びに → ならびに(動詞の「並ぶ」は漢字で書く。)
若しくは → もしくは
が可能と明記されましたので、科研費.comではこれを採用しています。
連体詞
汎ゆる → あらゆる
有る日のこと → ある日のこと
如何なる → いかなる
所謂 → いわゆる
此の → この
其の → その
〔漢字を使って書く連体詞〕
来る(きたる)
去る
当の
我が
接頭辞・接尾辞
お…(お菓子、お願い)
(「おん(御)」「ご(御)」は漢字で書く(「御中」「御礼」「御挨拶」「御意見」
等)。
…げ(「惜しげもなく」等)
…とも(「二人とも」等)
…たち(「私たち」等)
…ら(「僕ら」等)
…ぶる(「もったいぶる」等)
…ぶり(「説明ぶり」等)
…み(「有り難み」等)
動詞、副詞、形容詞は漢字で書くことを基本とするが一部のものは仮名で書く
動詞のうち仮名で書くもの
居る→いる
出来る→できる(「利用ができる」 。ただし、「出来が良い」などは漢字で書く。)
成る→なる(「1万円になる」。 ただし、「歩が金に成る」「本表と付表から成る」などは漢字で
書く。)
副詞のうち仮名で書くもの
色々 → いろいろ
概ね → おおむね
自ずから → おのずから
如何に → いかに
何れ → いずれ
可成、可也 → かなり
此処に → ここに
沢山 → たくさん
丁度 → ちょうど
迚も → とても
軈て → やがて
余程 → よほど
態と → わざと
態々 → わざわざ
ある(動詞)・ない(形容詞)
有る・在る → ある
無い → ない
「問題がある」「欠点がない」などは仮名で書く。「有無」の対照、「所在・存在」の意を強調するときは、「財産が有る」「有り・無し」「在り方」「在りし日」「日本はアジアの東に在る」など、漢字で書く。
読み手への配慮や社会の慣用に基づいて、仮名を使う場合
接頭辞「御」(御指導→ご指導、御参加→ご参加 等)
接続詞(及び→および 又は→または 並びに→ならびに 若しくは→もしくは)
副詞(飽くまで→あくまで 余り→あまり 幾ら→いくら 既に→すでに
直ちに→ただちに 何分→なにぶん 正に→まさに 等)