研究目的をちゃんと書けない方は意外に多く、目的に研究計画の概要を書きがちです。
とくにアンケート調査や新規因子の探索はこうなりがちです。これではいけません。
#科研費のコツ 42
— 科研費.com (@kakenhi_com) February 11, 2024
多くの研究者はデータからバイアスなく真実を導き出したいと願いますが、実際にはどのようなデータを選択し、どのように解析するかを決定する段階において、既にある程度の仮説が存在しています。
仮説のない研究も存在しますが、申請書には不向きです。https://t.co/xFCkFuFj7q pic.twitter.com/RE3wdzFx31
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ヒント:小文字のLではなく1です。
こうなる理由は仮説(問い)が無いから
研究を二つに分けるときに 、
- 仮説を作るための研究
- 仮説を検証するための研究
に分ける方法があります。この時、申請書と相性が良く、書きやすいのは後者の「仮説を検証するための研究」です。 前者の「仮説を作るための研究」を申請書で書いても良いですが、よほど魅力的でない限り、それ単独では評価されづらいです。
仮説を作るための研究の具体例
申請書で評価されにくい、仮説を作るための研究の具体例は以下の通りです。
スクリーニングや資料の探索など「モノ探し」系
スクリーニングとは数あるものの中から、あるかないかはっきりしない因子や物質、条件などを探すものです。具体的にはケミカルスクリーニングや変異体スクリーニング、ある条件を満たすようなパラメータサーチなどです。
これらの問題は、望みのものが見つかった場合は大変すばらしい一方で、見つからなかった場合に、「そもそも存在しないのか」「この方法では見つからないのか」「探し方が不十分なのか」が区別できないことです。申請書は、これから何をするか?を問うものですから、「探したけれど見つかりませんでした。その次の一手はよくわかりません」では怖くてとても採択できません。
身もふたもない言い方をすれば、こうしたスクリーニングは申請書を書く前に終わらせておき、モノの候補が見つかって初めてスタートラインです。モノが見つかってもいないのに、見つかる前提で研究計画を書くと、あまり研究のことを深く考えていない独りよがりの計画である、という印象が強くなります。申請書は基本的にはあと少しで成果がでることを後押しするものです。
「では、そのスクリーニングをするお金はどこから出るのか?」という声も聞こえてきますが、以下の3つの方法があります。
- これの前身の研究時にやっておく
- 本研究計画において、モノ探しを他の研究計画の一部として位置づけ、モノ探しだけをするといった計画にしない
- 民間財団などを活用する。民間財団は申請書のスペースが少ないこともあり、モノ探し系でも十分に採択が狙えます。
計測、アンケートや提言など「やってみました」系
臨床・看護系や人文社会系の一部の申請書では、アンケートをする、指標を作る、10名以内程度を対象に聞き取りや介入を行う
などの内容である場合があります。こうした方法を前面に押し出した計画では、「それをして何がどうなると考えているのか?」という問いに対して極めて弱いです。
研究のモチベーションあるいは研究目的は大層な内容であっても方法が伴わないパターンです。たとえば評価指標を作って終わりだとしたら、後に続く研究者はわざわざ他人の作った指標を検証しようと思うでしょうか?こうした研究の価値の証明は研究の実施者自身がすべきであり、たとえばアンケート調査であれば、本来は以下の内容全てが必要ですが、実際には太字部分しか書かれていない(数は十分ではない)ことが多く見られます。