科研費の記入要領には「概要については、10行程度」という指示がありますが、注意書きには書いていないので見落としている人が多い印象です。
(1)「研究目的、研究方法など」欄
基盤研究(A・B・C)(一般)、若手研究 研究計画調書作成・記入要領
本応募研究課題において何をしようとしているのか、その全体像を明らかにするため、研究計画調書に記載している指示に従って概要を含め記述すること。
概要については、10 行程度で記述すること。
#科研費のコツ 18
— 科研費.com (@kakenhi_com) January 18, 2024
科研費の記入要領には「概要については、10行程度」という指示があります。
申請書の注意書きや公募要領には書いていないので、見落としている人がまあまあいます。
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ヒント:小文字のLではなく1です。
最大で何行くらいまで書いて良いのか
記入要領には「10行程度」とあります。これは、11ptで 約400字ちょっとの文量です。意外と文字数が多いと感じた人もいるでしょうが、実際にはスペースは十分ではなく、10行を超えてしまうことがほとんどです。書きすぎると「概要」ではなくなってしまうので、
ある程度のコンパクトさを考えるとできれば12行まで、どうしても収まらないなら13行がギリギリ許容範囲
というくらいのイメージになるかと思います。
時々、半ページ以上もの「概要」を書く人を見かけますが、良くありません。概要とは申請書の内容をざっと理解するためのものですので、コンパクトさが必要です。書きたいことを挙げだせばキリはありませんので、まずは行数を守ることを絶対条件とし、その中で何を書いて何を書かないかの取捨選択をしっかりと行いましょう。
何を書くのか
科研費や学振の申請書の項目は、背景と問い、目的、独自性・独創性、着想の経緯、研究計画、研究遂行能力など多岐にわたっており、これら全てを概要に盛り込もうとするとかなり窮屈です。
概要は申請書の縮小コピーではありません。申請書の内容のもっとも重要な部分さえ押さえていれば、かなり簡潔な表現でも十分に伝わります。下の写真は10年以上も前のレゴ社の広告です。ただブロックを積み上げているだけですが、何を表現しているかは明確です。
概要に書くべき最低限の項目は以下の通りです。これを骨格として必要に応じて肉付けを行います。
背景・重要性
これは何の研究なのか、なぜこの研究をしないといけないのか、など研究背景とモチベーションを最低限理解するための文章から概要を始めます。10行という中で背景を書く必要があるので、1-2行でまおとめなくてはいけません。
きっかけ
どんなに重要な研究対象であったとしても、現時点で誰も何も困っていなければ研究する必要はありませんし、問題解決のためのアイデアが無いのであれば研究の成功は見込めません。
何が問題となっていて、その問題にどう取り組めば、他の人が解決できなかった/見落としていた問題を解決できると考えているのか、という問題点の所在の明確化とそれに対するアプローチは申請書の価値を示すうえで必要です。
研究目的
結局のところ、本研究で何を明らかにするつもりなのか。言い換えれば、何が示せたら/何ができたら本研究は成功だと定義するつもりなのか、という研究のゴールを明確にし審査員と共有する必要があります。
ときどき、「〇〇〇を実施する。」のような目的を書く人がいますが、この書き方であれば、「実施しさえすれば結果はどうあれ研究は成功だ」という主張が成立してしまうので、良くありません。この場合の「〇〇〇の実施」は目的を達成するための手段であり、目的そのものではありません。
未来の状況(展望)
研究のゴールの明確化と同様、この研究がどこにつながっているのかを明確にする(全体のなかでの本研究の位置づけを明確にする)ことで初めて研究計画の価値を示すことができます。さんざん苦労した割に言えることが非常に限定的であったり、自己満足で終わってしまうような研究は評価されないでしょう。
ただし、ここで書く内容は研究計画には含まれておらず、「この研究が完成したらこうなるだろう」という予想に過ぎませんので1行でシンプルに書く必要があります。全体で10行程度しかないので、ここはなるべく短くする必要があります(しかし、省略はできない)。
研究計画の内容は概要ではあまり書く余裕がないので、研究方法・研究アプローチ・研究のアイデアあたりを簡単に書いても良いかもしれません。独自性などもアピール材料にはなりますが、概要にコンパクトに書き込めないようであれば省略する対象になると思います。
こんな概要がありましたが…
図を入れる
図+10行程度ですとそれなりにスペースを使います。研究計画全体の概要が図1枚ですっきりと表現でき、補足説明等も不要であれば(説明する余裕はない)、入れても良いかもしれません。
ただし、ほとんどの人は図を含めていないので、そこで冒険する必要があるのかは考える必要があります(考え方によっては、他の人がしていない≒目立てる、ということでもあるので考え方次第です)。
目的を冒頭に持ってくる
プレゼンテーションでOne page summaryを冒頭に持ってくるようなイメージで、
本研究の目的は〇〇〇を明らかにすることである。
のような文章から概要を始めるパターンです。しかし、「申請書全体の内容を簡単に理解したいがために概要を読んでいるのに、その冒頭から理解できないのはどうだろう?」と個人的には感じます。