申請書中で文献を引用することで、独りよがりの研究ではなく過去の研究に基づいた研究提案であることを印象づけられますし、申請者ら自身の文献を引用すれば、この分野での貢献をアピールすることができます。このため、文献は多すぎて本文の読みやすさに影響しない範囲で(一桁くらい)引用すべきです。
ここではその文献の引用の仕方についての提案です。
文献の引用スタイル
文献の引用スタイルはさまざまあり、各自で工夫を凝らせば良いと思いますが、科研費.comでは以下の形式を推奨しています
、「である [AAA et al., 2014, BBB et al., 2015]。」形式を推奨しています。
パターン1 ~である1-3。
もっともコンパクトな引用方法であり、本文を読む邪魔にならない形式ですので、自然に読み進めることができます。
しかし、
- 末尾に文献リストを別に作る必要があり意外とスペースを使う
- 途中で文献リストを確認しようとするとページをめくる必要があり、読む作業が中断されてしまう
- 自分の研究成果をアピールしにくい
という点では他の引用スタイルに劣ります。特に末尾の文献リストは扱いづらそうであり、フォントサイズをすごく小さくしたりすることで対処している人が多いですが、たとえば学振の申請書作成要領の以下の記述は気になるところです。
10ポイント以上の文字で記入してください。
令和6(2024)年度採用分特別研究員申請書作成要領(PD)
注釈等の記載も同様です。なお、フォントの種類、行間の高さ等、それ以外の設定に関する規定はありません。
パターン2 ~である(AAA et al., 2015)。
非常にコンパクトにまとめられており、推奨するパターンのひとつですが、上記例 のように括弧が連続してしまうと読みにくくなります。このパターンを採用する場合は、こうした括弧( )の連続が無いまたは気にならないことを確認しておく必要があります。
パターン3 ~である [AAA et al., 2015]。
パターン3ではパターン2から2つの工夫をしています。
工夫1 丸括弧( )ではなく角括弧[ ]を用いることで、略語を示す丸括弧( )と区別がつきやすくしています。少し珍しいので、その意味でも角括弧=引用文献という公式が理解しやすくなります。
工夫2 本文が11ptであった場合に、それより0.5-1ptほど小さい10-10.5ptにすることによって、文献をあまり目立たないようにします。たとえば、以下のように長い引用文献だと本文と文献部分の区別がつきにくくなります。文献のフォントサイズを一回り小さくし、区別をつきやすくすると共により目立つ本文を黙読する流れを妨げないようにします。
ただし、文献部分が指定されているフォントサイズより小さくなってしまう場合があります。その時はわずかなルール違反を気にしないか、多少の区別しづらさは承知のうえで本文と同じフォントサイズにするか、は判断のしどころです。
雑誌名を書いてアピールする
審査員は原著論文にあたってまで、申請者の研究を深く理解したいとは思っていません。そのため、引用文献として書いた文献を実際に調べる審査員はほぼいないでしょう。そうした審査員に向けては、極論をいえば、何かしらの文献が書いてあることが重要であり、巻号やページ数などは不要な情報であるとも考えられます。
引用文献は本文の黙読の流れを邪魔する存在ですので、あまり長く書くと読みづらさが発生します。基本は、姓名+年号の Suzuki et al., 2020 や 石川ら 2020のようなスタイルになります。
ただしそうした中において唯一の例外として雑誌名があります。その業界で有名な雑誌であれば、審査員の印象は良くなると期待できるでしょう(雑誌のすごさが掲載された論文のすごさを反映するではないにしても)。
いくつか考えるべきポイントが2つあります。
ポイント1 雑誌名をどこまで書くか
申請書の統一という観点では、他人の文献も含めて全ての文献に雑誌名を記す必要がありますが、余計なことをできるだけ書かない(シンプルにする)という観点からは、自分の文献だけでも良いかもしれません。この場合自己中心的に映るかもしれないという懸念があります。
ポイント2 雑誌名の修飾
BBB et al., 2015 Nature のように太字にしたりイタリックにすることで雑誌名はさらに目立ちます。それだけの価値があると考えられるような雑誌を含む場合にはこのスタイルで統一すると良いでしょう。その反面、ほぼ無審査で掲載されるような雑誌を自慢げに強調すると逆効果になるかもしれません。