特色・独自性は何を書くべきかを理解すればそれほど難しくはないのでですが、うまく書けず苦労する人が多いパートです。

ポイント

特色・独自性、創造性では、以下の内容を順に段落を分けて書きます。
1.これまでどのような方向性で研究されてきたのか(国内外の研究動向)
2.なぜ他の人にはできないことを申請者ならできるのか(独自性)
3.本研究が完成した時の、波及効果(創造性)

研究の独自性とは何か

書かれている研究の内容が重要であることと、「申請者が」その研究をうまく遂行できることは別の話です。申請書の基本は「他の人にはできないが、申請者ならギリギリできる」重要な問題に取り組むことです。

なぜ、他の人にはできないのに、申請者なら(ギリギリ)できると言えるのでしょうか?この質問に答えることこそが独自性とは何か?に答えることにつながります。独自性とはオリジナリティであり、他の人が持っていない(あるいは持っている人が少ない)何かです。たとえば、同年代のライバルが非常に似た内容の研究を提案してきたとしましょう。そのライバルではなく、「申請者の」申請書を採択すべきであると主張する根拠はどこにあるでしょうか?

1.国内外の研究動向

独自性と着想の経緯は似ており、着想の経緯で国内外の研究動向を書いたように、独自性でも国内外の研究動向は必要です。

「この研究は独自である」という主張の背景には、独自でない研究が想定されています。すなわち、多数の独自でない、つまらない、工夫のない、ありきたりなその他の研究と比較した時に、本研究はそれらよりも独自だという主張です。

そのため、独自であると主張したいのであれば、まずは独自でない研究を定義しないといけません。これまではどういった方向性、考え方、技術、材料で研究がなされてきたのでしょうか?

2.なぜ他の人にはできないことを申請者ならできるのか

先進性

  • 申請者らはすでに〇〇〇について明らかにしており、……
  • 申請者らは〇〇〇を発見するなど、当該研究分野をこれまでリードしてきた実績があり、〇〇〇に関して豊富な経験(知見)を有している。

この例のように、

  • これまでにも今回提案する分野で活躍してきた実績がある(業績アピール)
  • これまの研究の過程で他の研究者が持っていないノウハウや知見、実験材料を持っている
  • すでに予備データがあり、他の競争相手に先んじている

などは、他の人よりも早く研究を完成できる可能性があるという点で独自性があると書けるでしょう。

研究を始めたばかりであったり、分野を変えたばかりの場合、自分自身にはそこまでの優位性が無い場合もあります。そうした場合でも、研究室単位では世界に対する優位性を有している場合がありますので、自分が所属する研究室あるいは研究環境(共同研究者が近い、〇〇〇が利用可能であるなど)からくる優位性を書くようにします。

技術や材料の独自性

  • 申請者らは〇〇〇法や〇〇〇法を開発してきたが、これらは全て申請者の発想に基づき独自に開発したものである。
  • 申請者らが独自に収集した〇〇〇のコレクションは国内最大規模であり、これを利用することで…

この例のように、技術や材料が独自であると主張できれば、比較的簡単に独自性をアピールできます。

ただし、すでに論文として発表している場合には、他の人でも真似できる部分もあるので、それでもなお残る優位性はどこにあるのかを見極めてアピールしてください。

〇〇〇の方法により、初めて〇〇〇を〇〇〇できる点で新しい(独自である)。

が基本構文です。

アイデアの独自性

  • 動物の〇〇〇という研究に対して植物で近年明らかになった〇〇〇を適用することで、これまでの〇〇〇という問題を回避できる。
  • これまで、〇〇〇研究は主に〇〇〇を対象に行われてきた。申請者らは、〇〇〇に解析対象を限定する(広げる)ことで、従来の解析では不可能だった〇〇〇を明らかにする点で独自である。

現実問題として、技術や材料に独自性を持っている人はそれほど多くありません。しかし、そうした場合であっても、コンセプトや技術の組み合わせといったアイデアで独自性を出すことはそれほど難しくありません。

ほとんどの人はアイデアの独自性で勝負することになります。この場合は、着想の経緯と同様、そのアイデアがいかに妥当であるのかを説明する必要がありますが、背景や着想の経緯でも同じような内容を書く場合は、内容の重複が気になります。

書けるスペースが限られている学振や科研費などで同じ内容を繰り返して書く余裕はありません。

  • 背景では研究のアイデアを簡単に説明し、独自性の部分で詳しく書く
  • 背景では研究のアイデアを説明し、着想の経緯で技術的な面での妥当性を書き、独自性の部分では他との比較を中心に書く

など、それぞれの項目が持つ役割を明確にしてから

何度も出ているオズボーンのチェックリストをもとに考えると考えやすいでしょう。

独自性、独創性、着想の経緯、特色の違い

独自性と着想の経緯の違いはかなり意識する必要があります。場合によってはほとんど差がありません。特色は独自性の劣化版です。

独自性(Originality)

独自性は、あなたの研究が他の研究と比べてどのように良い意味で異なるか、どうすごいのかを示すパートです。材料・装置がすごい、申請者がすごい、アイデアがすごい、予備結果がすごい、のように他の研究者に対する申請者の優位性です

こうしたことから、独自性を書くときには「〇〇〇である。」でとどめず、「〇〇〇あるから、〇〇〇を〇〇〇できる点で本研究は独自である。」のように、その独自性が本研究の遂行にどう生かされるのか、どこがどのように独自なのかも併せて書くようにすします。

もし、あなた自身やあなたのいる環境に特に優位性が無く、材料や技術、アイデアも特に目新しいものが無いのであれば、独自性には何も書くことがありません。どんなに思い入れがあろうとも、優位性・独自性が無いのであれば他の研究者との競争に勝てる可能性は低いと判断せざるを得ません。テーマの変更あるいは用いる技術、材料の見直しなどを考えるべきだと思います。あなたの得意なところで戦うようにしてください。

独創性(Uniqueness)

独創性は独自性のうち、アイデアの新しさを強調したもので、独自性はアイデアが他とは異なっていることを強調したものです。

「アイデアが独創的だ」と言えばアイデアが新しく創造的なものである印象をうけますし、「アイデアが独自だ」と言えば以前に存在しなかったり、他の人のアイデアとは異なる印象になります。

独自性と独創性を書き分ける状況にはならないので、あまり意識せずどちらも独自性と考えておけば十分です。

着想の経緯(Validation of the Idea)

着想の経緯は、研究のアイデアや概念がどのように生まれたかだけでなく、採用するアイデアや方法が本研究目的を達成するうえで他の研究よりも妥当であることを説明するために書きます。

独自性が、相対的な優位性を示すために他の研究と対立的な関係にある一方で(他よりもすごい)、着想の経緯は、他の研究を味方につけることで研究の妥当性を示すものである(他から考えると、この方法は妥当だ)、という違いがあります。

特色の違い(Features)

特色と独自性はほとんど同じですが、独自性は「違うからすごい」というニュアンスが強いのに対して、特色は単に「他と違う」と言っているにすぎず、違うことが良いか悪いかについてはそれほど強く主張しません。

たとえば、

これまでの研究はアメリカで行われたものが多かったが、本研究はドイツで行う。

という文章は、ドイツだから(アメリカだから)良いとも悪いとも言っておらず、単に違うと言っているにすぎません。

ただし、完全にニュートラルだと、だからどうだと言いたいのか?という点があいまいになるので、独自だと声高に主張するほどではないが、方向性としては良さそうだくらいの感じは出しておくと、審査する側も理解しやすくなります。