背景において「アイデアを実行するうえでの「問題点の指摘」」は科研費における「問い」の書き方の一例であり、代わりに「5.問題点の指摘」を「問い」として背景を終わりにすることも可能です。
「問い」には他のパターンもありますが、いずれの場合でも続く研究目的で書く
「そこで本研究では、〇〇〇を〇〇〇することを目的とする。」
につなげるための問題提起のためのパートです。
例えばこうです。
…
しかし、こうした取り組みにもかかわらず、Taxが細胞を形質転換するメカニズムは十分に理解されていない。これまでに多数のTax変異体が生成され、それらの活性は主に細胞培養系で明らかにされてきたものの、利用可能なトランスジェニックモデルにおけるTax変異体の遺伝子導入位置やコピー数、発現レベルなどが多様であるため、Tax変異体の形質転換能の評価は困難であった。
これに対して申請者はこれまでに〇〇〇を〇〇〇することで、導入した遺伝子の発現量をコントロールできること見出しており、この方法であれば、これまで不可能だったTax変異体の形質転換能を完全に同一条件で比較できると考えた。しかし、形質転換効率の低さが課題となっており、〇〇〇の〇〇〇への適用は十分に進んでおらず、「Tax変異体における形質転換能の評価および、その背景にある分子メカニズム」の解明は依然として研究課題の核心をなす大きな「問い」として残されたままである。
この文章を例に、以下のポイントを見ていきましょう。
ポイント:具体的に何が問題なのか
「Tax変異体における形質転換能の評価および、その背景にある分子メカニズム」の解明は依然として研究課題の核心をなす大きな「問い」として残されたままである。
研究の背景の「5.これらの成果にも関わらず、いまだ解決されていない点は何か」では、研究分野における問題点を指摘しましたが、具体的な研究目的につなげるためにはまだ漠然としています。今回の例では、
- 研究分野の背景
- 研究分野の現状
- 研究分野の問題点
- 問題解決のためのアイデアの大枠
と話を進めてきました。ここで、このアイデアの実現に何も障害が無いのであれば申請書なんか書かずにさっさと研究を進めればいいはずです。しかし実際には、方針は立っているものの、その道のりも平坦ではなく、いくつかの乗り越えるべき課題が残っているという状態です。
そうしたアイデア実現のための具体的な課題を問いとして書くことで、問題点を明確にし、続く研究目的へと話を自然につなげます。
問題点の解像度を意識し、必要に応じて書き分ける
研究のアイデアと同様、問題にもさまざまなレベルがあります。
5で書いたのは「研究分野における問題点」で、ここ(9)で書くのは、「5で指摘した問題点を解決するために残されている問題点」です。両者の違いに気を付ける必要はありますが、どこを本研究課題の核心をなす「問い」とするかは人それぞれですし、問題の性質や書けるスペースの多少にもよります。
ただし、これらを明確に区別し、同じような文章を2回くりかえすことだけは避けるようにしましょう。