研究計画が1つだけだと、その実験が失敗した場合に研究全体が止まってしまいます。また、研究全体のボリュームという点でも、数年間の研究費を使う計画としては物足りなく見えることがあります。逆に、研究計画が4つ、5つ以上になると、すべてを同じように進められるのか、計画間の関係がどうなっているのか、全体として何を明らかにしたいのかが見えにくくなります。

ポイント

研究目的、研究計画などには、以下の内容が含まれます

1. 本研究で何を明らかにするか(研究目的)
2. どうやって明らかにするかの概要
3. 研究目的を達成するための具体的な2,3の研究項目
 3-1. (計画の背景・問題点のリマインド)
 3-2.  何をどうるすのか
 3-3. 具体的な研究のゴール
 3-4. 予備データ、計画を理解できる図
4. 予想通りに行かないときの対応
5. (タイムテーブル)
6. 研究の準備状況

研究計画のリスクと十分性を考える

研究「計画」なので、基本的には何をどう計画するかは自由です。研究において何がうまくいくかは、やってみなければわかりません。その意味では、これならよくて、これは絶対にダメだと簡単に決められるものではありませんし、審査員にも完全には判断できません。

ただし、申請書として明らかに危うく見える計画はいくつかあります。大きく分けると、計画のリスクが高すぎる場合、計画をすべて達成しても目的に届かない場合、あれもこれも詰め込みすぎて全体が見えない場合です。

計画のリスクが高すぎる場合

自然科学・基礎医学系でよく見られるのが、ある非常に具体的な仮説の検証だけを研究目的としているケースです。たとえば、「〇〇病は〇〇遺伝子の変異によって生じることを検証する」というような計画です。この場合、その仮説が間違っていたら研究全体が成立しなくなります。

もう一つよくあるのが、研究計画1の成功を前提に、それ以降のすべての研究が組まれているケースです。たとえば、スクリーニングにより〇〇病の原因遺伝子を同定し、その機能解析を行う、というような計画です。この場合、最初のスクリーニングで目的のものが取れなければ、後続の計画がすべて実行できなくなります。

このような計画を見た審査員が抱く懸念は、「それに失敗したらどうするのか」です。仮説が正しくなかった場合、目的のものが取れなかった場合、何の成果も残らないように見えてしまいます。数年の時間と研究費を使って、何も進まず、何の知見も得られない可能性がある計画は、かなり高リスクです。

研究に失敗はつきものです。だからこそ、ある特定の研究計画の成否に依存しすぎないように、手堅い計画を組み合わせる必要があります。また、リスクが高い部分については、予備データで実現可能性を示す、失敗した場合の代替案を用意する、うまくいかなかったとしても何らかの知見が得られる設計にするなど、審査員の懸念を払拭する必要があります。

計画を達成しても目的に届かない場合

人文社会科学系、医療・福祉・看護系でよく見られるのが、背景や目的では非常に大きなことを言っているにもかかわらず、実際の研究計画がそれに見合っていないケースです。たとえば、非常に限定された人数や特殊なケースを対象にした調査だけで大きな社会問題を論じようとする場合や、何らかの指標やプログラムを作っただけで満足し、実用化や効果検証まで十分に考えられていない場合です。

このような計画では、たとえ研究計画をすべて達成できたとしても、最初に掲げた目的には届きません。研究として何かはできるかもしれませんが、そこからどの程度のことが主張できるのかが弱くなります。これは研究計画だけの問題ではなく、研究の重要性や問題設定とも関わります。実際に何ができるのか、そこからどこまで言えるのかを逆算して、問題設定や研究目的を調整する必要があります。

特にアンケート調査などは、実施コストがかかるわりに規模を大きくしにくく、得られる結論にも限界があります。対象や規模をどのように広げるのか、得られた結果から何を引き出すのか、どの範囲まで一般化できるのかをよく考える必要があります。偏った対象を、偏った視点から扱うだけでは、一般性のある結論にはつながりません。

また、プログラムや評価指標は、広く使われて初めて意味を持ちます。そのためには、既存の方法との性能比較や、実際の利用場面での検証が重要になります。しかし、申請書の中には、指標やプログラムを作るところで止まっており、それが本当に有用なのかを検証する計画が弱いものもあります。作ることが目的なのか、使えるものにすることが目的なのかを明確にしなければなりません。

あれもこれも詰め込みすぎている場合

研究計画を5つも6つも書く人もいます。これには大きく2つのパターンがあります。一つは、個々の計画が大きすぎて、とても期間内には終わらないように見えるパターンです。もう一つは、細かい計画が多すぎて、「これはまとめて1つの計画にした方がわかりやすいのに」と感じるパターンです。

研究に使える時間、費用、人手は限られています。あれもこれもと詰め込みすぎると、結局、本研究の目的が何なのかを見失いやすくなります。また、審査員から見ても、どの計画が核で、どの計画が補助なのか、どの結果から何を言いたいのかがわかりにくくなります。

研究計画では、核となる研究を定め、目的達成に至る道筋を明確にする必要があります。多くの計画を並べることよりも、それぞれの計画がどのような役割を持ち、全体としてどのように研究目的に到達するのかを示すことが重要です。

研究計画は2つか3つくらいが扱いやすい

こうしたことを考えると、研究計画は2つか3つくらいにまとめるのが扱いやすいでしょう。個々の計画の役割を明確にしつつ、複数の視点から研究目的に迫る形にすると、研究全体の見通しがよくなります。

図で示したように、研究のゴールが高すぎても、足場となる研究計画が不足していれば届きません。逆に、研究計画を積み上げすぎても、不安定であったり、途中で崩れたりすれば意味がありません。重要なのは、研究目的に届くための足場を、確実に、かつ魅力的に組むことです。手堅い計画で土台を作り、挑戦的な計画で高さを出す。このバランスが重要です。

研究計画が2つの場合

研究計画が2つの場合、1つ目は研究の核となる計画、2つ目はその証拠を補強する計画にすると整理しやすくなります。

研究計画1は、本研究のメインです。十分な紙面を使い、予備データや図も用いて、計画の重要性と実現可能性を説明します。この計画が失敗すると研究全体がかなり苦しくなるため、なぜ実現可能なのか、すでにどこまで準備ができているのか、うまくいかない場合にはどうするのかを丁寧に書く必要があります。

研究計画2は、計画1で得られる証拠を補強するための、別の原理に基づく計画です。あることを示すには、1つの方法だけで示すよりも、複数の方法で示した方が説得力が増します。メインはあくまでも計画1ですので、計画2では比較的簡単な方法で計画1を支えることを考えます。ここも重すぎる計画にしてしまうと、全体のバランスが悪くなります。

研究計画が3つの場合:挑戦型を中心にするパターン

研究計画が3つの場合の一つ目は、挑戦的な計画を中心に置き、それを手堅い計画と発展的な計画で支えるパターンです。

研究計画1は、魅力的だが挑戦的な研究です。これはメインの研究計画ですが、予備データが不足していたり、実現が難しかったりするため、一定のリスクを含みます。ただし、それなりの実現可能性が見込まれ、たとえ完全にはうまくいかなくても何らかの知見が得られる計画であることが重要です。挑戦的な内容を含む以上、成功した場合には、ある程度まとまったことが言える必要があります。リスクを取ったのに、得られるものが少ない計画はよくありません。

研究計画2は、比較的手堅い研究です。計画1でリスクを取るため、計画2では安定した成果が見込めるものを用意して、研究全体のバランスを取ります。手持ちの予備データを示しながら、この部分はかなり実現可能性が高い、大きく失敗する可能性は低いと示せるとよいでしょう。あるいは、AかBかのどちらかがわかれば意味があるような、どのような結果が出ても成果になるタイプの研究計画を置くのも有効です。計画1がうまくいかなかった場合には、計画2が本研究の主な成果になるため、非常に重要なパートです。

研究計画3は、研究計画1と2の結果を合わせることで可能となる発展的な研究です。ここは計画1の成功をある程度前提とするため、長々と書きすぎても仕方ありません。ただし、計画1が成功すれば、このような魅力的な展開も可能になるということを示す役割があります。単なる将来展望ではなく、研究期間内に現実的に実施できる計画として書く必要があります。

研究計画が3つの場合:手堅い成果を足場にするパターン

もう一つのパターンは、ほとんど完成している手堅い研究を足場にして、挑戦的な研究と発展的な研究を進める構成です。

研究計画1は、比較的手堅い研究です。未発表ではあるものの、ほとんど完成している成果や、十分な予備データを足がかりにして、計画2や計画3へ進める構成です。この場合、計画1には予備データがあり、結果がかなり見えていることが前提になります。

ここで重要なのは、「ほとんど完成しているが、完全には完成していない」という立場を保つことです。「すでに完成している」と書いてしまうと、それは研究計画ではなく背景や予備データになります。研究計画として書く以上、本研究期間内に仕上げるべき内容が残っている必要があります。

研究計画2は、計画1の結果を用いた、魅力的だが挑戦的な研究です。計画1がほぼ成功しそうであることを前提に、「だからこそ、これまでできなかった新しい研究に挑戦できる」と示します。計画1の裏付けがあるため、計画2ではある程度大胆な内容を書くことができます。ここでは、成功した場合のインパクトで勝負します。

研究計画3は、計画1の結果を用いた比較的手堅い研究です。計画2でリスクを取るため、計画3では計画1の成果を発展させるような、より確実性の高い研究を計画します。これにより、研究全体が着実に進むことを示せます。計画2が挑戦性を担い、計画3が安定性を担うことで、研究計画全体のバランスがよくなります。

研究計画は、単に作業を並べる場所ではありません。研究目的に到達するために、どのような足場を組むのかを示す場所です。足場が低すぎれば目的に届きません。足場が不安定すぎれば途中で崩れます。手堅さと挑戦性を組み合わせ、審査員が「これなら到達できそうだ」と思える計画にすることが重要です。