研究期間全体のタイムテーブルは、必須ではありません。しかし、3年や5年といった研究期間の中で、何をどのタイミングで行うのかを示せるため、うまく使えば研究計画の全体像を伝える助けになります。審査員にとっても、各研究計画がどの順番で進むのか、どの時期にどの成果が得られる見込みなのかを把握しやすくなり、実現可能性を評価しやすくなります。
研究目的、研究計画などには、基本的に次の内容が含まれます。1.本研究で何を明らかにするか。2.どうやって明らかにするかの概要。3.研究目的を達成するための具体的な2〜3の研究項目。4.予想通りに進まない場合の対応。5.タイムテーブル。6.研究の準備状況。特に研究計画の各項目では、計画の背景や問題点を簡単にリマインドしたうえで、何をどうするのか、何が示せれば成功なのか、どのような予備データや図があるのかを示します。
ただし、実際の学振や科研費では、タイムテーブルを記載する専用のスペースが用意されているわけではありません。そのため、入れる場合は、研究計画の冒頭か最後に配置することになります。スペースに余裕がある場合や、研究計画の全体像を図示した方が明らかに伝わりやすい場合には検討してよいでしょう。一方で、他に書くべき内容が多い場合には、省略しても構いません。
タイムテーブルの形式
タイムテーブルには、大きく分けて表ベースの方法とテキストベースの方法があります。表ベースでは、WordやPowerPointの表機能を使って年度や研究項目を整理し、矢印や色の濃淡で実施期間を示します。表を作成したあと、図形の挿入で矢印を入れると見やすくなります。矢印に影がついている場合は、右クリックから「オブジェクトの書式設定」を開き、影を外しておくとすっきりします。オブジェクトの位置合わせは意外と難しいですが、Macであればcommandキーを押しながら十字キーを押すことで、細かく位置を調整できます。

テキストベースの場合は、年度ごと、あるいは研究項目ごとに文章で簡潔に書きます。矢印を使う場合は、スペースの幅、フォントサイズ、インデントなどで位置を調整します。大見出しと小見出しで文字の太さを変えると、情報にメリハリがつきます。海外の申請書では、図表よりもこのようなテキストベースのタイムスケジュールが使われることも多いようです。

形式には決まりはありません。矢印で示してもよいですし、ガントチャートのように工程表として示してもよいです。色の濃淡で進行状況や重点時期を表す方法もあります。大事なのは、見た目の凝り方ではなく、研究計画の妥当性と全体像がわかりやすく伝わることです。
タイムテーブルは意外とスペースを使う
タイムテーブルには、意外と大きなスペースを使います。その割に、採択に直結するほど強いアピールになるとは限りません。申請書の注意書きに「何をいつまでに行うか」を明示するよう求められている場合や、明確にタイムテーブルが必要な申請書であれば入れるべきです。しかし、そうでない場合には、優先度はそれほど高くありません。
たとえば、「XXXXを5月までに行い、その後YYYYを8月までに行う」と書いたとしても、そのスケジュールがどれくらい確実に守られるのかは、実際にはわかりません。審査員も、それを額面通りに受け取るとは限りません。「6月までにこれをするのか、すごい。よく考えられている。採択しよう」となることは、まずないでしょう。
そうである以上、研究目的、研究計画の内容、予備データ、研究のゴール、リスクへの対応など、他に書くべきことがあるなら、そちらを優先した方がよい場合が多いです。タイムテーブルは、研究計画を補助的にわかりやすくするための道具であり、研究計画そのものの代わりにはなりません。
入れるなら妥当なスケジュールにする
タイムテーブルを入れる場合には、研究計画として妥当なスケジュールになっているかに注意してください。タイムテーブルは、研究計画の実現可能性を示すためのものですが、逆に計画の粗を目立たせてしまうこともあります。
たとえば、非常に簡単に見える作業に1年かけるように書かれていると、「この研究計画は薄いのではないか」と思われるかもしれません。逆に、非常に難しい作業を短期間で終えるように書かれていると、「本当にできるのか」と疑われます。つまり、タイムテーブルは、研究の見通しを示すと同時に、計画の甘さも見えてしまう部分です。
また、研究計画1が終わらないと研究計画2に進めないような構成になっている場合、その依存関係もタイムテーブル上で見えてしまいます。これは良い場合もありますが、研究計画1が失敗したら全体が止まるように見える場合には、リスクの高さを強調する結果にもなります。タイムテーブルを入れるなら、研究計画同士の関係や並行して進められる部分、代替案も含めて、無理のない流れにする必要があります。
タイムテーブルを入れるべき場合
タイムテーブルを入れる価値があるのは、研究計画が複数あり、それぞれの関係や実施時期を示した方が全体像を理解しやすい場合です。たとえば、計画1で基盤データを得て、計画2でその結果を用いた解析を行い、計画3で応用的な検証を行うような場合には、時系列を示すことで研究の流れが見えやすくなります。
また、複数の研究項目を並行して進める場合にも、タイムテーブルは有効です。計画1と計画2を並行して進め、2年目以降に両者を統合する、といった構成であれば、文章だけで説明するよりも表にした方が伝わりやすいことがあります。
一方で、研究計画の構成が単純で、本文を読めば進め方が十分にわかる場合には、無理にタイムテーブルを入れる必要はありません。限られたスペースの中では、タイムテーブルよりも、研究の意義、予備データ、具体的なゴール、リスクへの対応を書いた方が効果的な場合が多いです。
タイムテーブルは、入れればよいというものではありません。審査員が研究計画全体を理解しやすくなるなら入れる。スペースを使う割に情報量が少ないなら入れない。この判断が重要です。申請書では、何を書くかだけでなく、何を書かないかも大切です。