科研費の「本研究の位置づけ」は、他者の研究を批判して自身の優位性を誇示する場ではありません。既存の学術的文脈を整理し、どこに未解明の空白があるのか、そしてなぜ自分の研究がその空白を埋める必要があるのかを論理的に説明する場所です。

審査員が「本研究の位置づけ」で迷子になる理由
科研費や学振の申請書において、多くの申請者が執筆に苦労するのが研究の立ち位置を示す項目です。審査員がこのセクションを読んだ際に最も戸惑い、そして評価を下げる原因となるのは、申請者の提案が既存の学術体系のどこに接続されているのかが全く見えてこない時です。
執筆の過程で陥りやすい誤りは、位置づけの記述を他者の研究との優劣を競うコンテストのように捉えてしまうことです。先行研究の欠点や限界を羅列し、いかに自分のアプローチが斬新であり優れているかを主張する文章は、執筆者本人にとっては力強く説得力があるように感じられます。しかし、評価を下す審査員から見れば、それは学術的な系譜から切り離された唐突な主張にすぎません。
審査員は、各分野の最前線で日々の業務に追われる多忙な研究者です。彼らが申請書を読む際に求めているのは、アイデアの突飛さではなく、これまでの知の蓄積を踏まえた上で、次に解明すべき妥当な問いが立てられているかという点です。既存の研究に対する敬意や文脈の整理を飛ばして独自性のみを前面に押し出す文章は、審査員に「分野の現状を正確に把握できていないのではないか」という疑念を抱かせます。学術的な歴史と無関係に存在する孤立した研究は、審査員の頭の中でどこに配置してよいか分からない迷子の提案となってしまうのです。
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