科研費の背景で「未解明の穴埋め」を主張しても、審査員には響きにくい場合があります。知識の不足を補うのではなく、既存の学説同士の「矛盾」や「対立」を起点とし、自身の研究をその解決手段として提示する論理構成について解説します。

審査員は知識の穴埋め以上の貢献を期待している
科研費の申請書において、研究の背景から目的へとつながる論理展開は、審査員が最も注意深く読み込む箇所です。研究の立ち位置を示す際、既存の学問体系の中に欠落しているパーツを見つけ、「ここが未解明であるため、本研究で明らかにする」と記述する手法は広く用いられています。前回の記事で解説した「必然的な欠落」を的確に突くアプローチは、非常に有効な基本戦略です。
しかし、研究分野やテーマの性質によっては、単に「不足している知識を補う」という論理だけでは、審査員に十分なインパクトを与えられない場合があります。学問分野が成熟し、多くの知見がすでに蓄積されている領域では、「まだ分かっていないこと」を見つけること自体はそれほど難しくありません。そのため、未解明の要素を一つ埋めるだけでは、分野全体に与える波及効果が局所的なものに留まると評価される懸念が生じます。
審査員は限られた予算を配分する立場から、単なる知識の蓄積にとどまらず、その分野の理解を一段階引き上げるような、より根源的な課題解決を求めています。このような状況において申請書の説得力を高めるためには、知識の不足を探す視点から一歩踏み込み、既存の知見がすでに飽和し、互いに摩擦を起こしている箇所へと目を向ける必要があります。
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