背景は、学術的な問いだけでも、社会的な必要性だけでも書きにくいことがあります。重要なのは、研究の性格に合わせて両者の重心を調整することです。

背景欄で起きやすい迷い
科研費や学振の申請書で背景を書くとき、多くの研究者は二つの要求の間で迷います。
一つは、学術的に何が未解明なのかを明確に示すことです。先行研究がどこまで到達し、どこに未解明点が残っているのかを整理し、その先に自分の研究を置く書き方です。研究者にとっては最も自然な説明です。
もう一つは、なぜ今その研究に取り組む必要があるのかを示すことです。社会、教育、医療、産業、環境、文化、政策などとの関係を述べ、研究の必要性を広い文脈に置きます。
この二つは、どちらも背景欄に必要です。ただし、同じ強さで並べればよいわけではありません。社会的課題の説明が長くなると、研究として何を明らかにするのかが見えにくくなります。反対に、学術的な未解明点だけを丁寧に書くと、分野外の審査員には研究の意義が伝わりにくくなることがあります。
背景欄は、社会的な必要性から研究目的までを一直線に説明する場ではありません。研究の性格に応じて、どこから話を始め、どこで焦点を絞り、どの範囲の意義に戻すかを調整する場です。
審査員が最初に知るべきことは、研究によって異なります。専門的な未解明点を知らなければ価値が分からない研究もあれば、広い課題を共有してからでないと学術的問いの意味が見えにくい研究もあります。背景欄の書き方は、この違いに合わせて選ぶ必要があります。
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