「どのような国際性を有するか」では何を書くべきか
科研費の申請書では、「本研究はどのような国際性を有するか」を問われることがあります。この項目は、単に「海外の研究者と共同研究をしている」「国際誌に論文を投稿する予定である」「将来的に世界で役立つ可能性がある」と書けばよいものではありません。もちろん、それらも国際性を示す材料にはなります。しかし、それだけでは本研究そのものが国際的にどのような意味を持つのかは伝わりません。
この項目で問われているのは、本研究が世界の研究の中でどのような位置にあり、どのように世界の研究を前に進めるのかということです。言い換えれば、「この研究は、日本国内だけで完結する小さな研究なのか、それとも世界の知の体系に貢献しうる研究なのか」を説明する欄です。
「どのような国際性を有するか」では、以下の内容を順に整理して書くとよいでしょう。1.世界の研究動向の中で、本研究はどこに位置づけられるのか。2.本研究は世界の研究者と比べて、どのような国際競争性を持っているのか。3.海外研究者との連携や国際発信をどのように行うのか。4.日本発の研究として、どのような独自の価値を持つのか。5.本研究の成功により、世界の研究にどのような貢献が期待されるのか。
つまり、現在の世界の研究状況を示し、その中で本研究の強みを示し、日本発で行う意義を説明し、最後に世界の研究へどう貢献するのかを述べる、という流れです。
国際性とは何か
ここでいう国際性とは、単に海外との関係があるという意味ではありません。海外の研究者と共同研究をしていること、国際会議で発表すること、英語論文を発表することは、たしかに国際性を示す要素です。しかし、それらは手段や結果であって、研究そのものの国際性ではありません。
研究の国際性とは、本研究が世界の研究全体の中でどのような意味を持つのか、世界の研究者にとってどのような価値を持つのか、そして日本発の成果としてどのように国際的な知の発展に貢献するのか、ということです。
たとえば、海外研究者との共同研究がなくても、世界的に重要な未解決問題に対して、日本独自の材料、データ、技術、視点を用いて取り組む研究であれば、国際性は十分にあります。一方で、海外の研究者と名前だけの共同研究をしていても、研究内容が世界の研究動向と接続していなければ、国際性は弱く見えます。
したがって、「国際性があります」と書くためには、海外とのつながりを示すだけでなく、本研究が世界の研究の中でどのような価値を持つのかを説明する必要があります。
世界の研究動向の中での現在地を書く
まず書くべきなのは、世界の研究動向です。現在、世界ではどのような研究が進んでいるのか。何が重要な問題とされているのか。どの国や研究グループが、どのような方向から研究を進めているのか。そうした国際的な研究の流れを簡潔に示します。
このとき、単に「海外でも盛んに研究されている」と書くだけでは不十分です。どの点で盛んなのか、何がまだ解決されていないのか、本研究はその中のどこに入るのかを示す必要があります。
たとえば、次のように書きます。
現在、欧米を中心に〇〇〇の研究が急速に進展しており、特に〇〇〇を対象とした解析により、△△△についての理解が深まりつつある。一方で、□□□については十分に検討されておらず、この点が当該分野における国際的な未解決課題として残されている。
このように書けば、本研究が単なる国内向けの研究ではなく、世界の研究動向の中に位置づけられていることが伝わります。
本研究の国際競争性を書く
次に、本研究が世界の研究者と比べてどのような競争力を持っているのかを書きます。ここでは、「世界の研究レベルから見て、本研究はどの程度先進的なのか」「海外の研究者と比べて、申請者はどのような優位性を持っているのか」を説明します。
国際性を将来の展望だけで語るのは危険です。「本研究の成果は将来、世界で役立つ」と書くだけでは、現在の研究計画そのものが世界水準にあるのかどうかが伝わりません。審査員が知りたいのは、将来の夢だけではありません。現時点で、この研究提案が世界の研究レベルと比べてどこにあるのかも問われています。
たとえば、次のように書きます。
申請者らは、〇〇〇に関する独自の解析系を確立しており、すでに□□□について国際的にも先行する知見を得ている。本研究では、この基盤をさらに発展させることで、現在世界的に未解決である△△△の問題に取り組む。
あるいは、次のようにも書けます。
本研究で用いる〇〇〇資料は、日本において長期的に蓄積されてきたものであり、同規模・同品質の資料を海外で得ることは容易ではない。この日本独自の研究基盤を用いることで、欧米中心の研究では検証が困難であった□□□を明らかにできる点に、本研究の国際的な競争性がある。
このように、申請者の技術、データ、材料、研究環境、予備データ、国際的な研究実績などを根拠にして、本研究が世界の中で勝負できる理由を書きます。
国際連携を書く
国際共同研究や海外研究者との連携がある場合は、当然それも書くべきです。ただし、「海外の〇〇博士と共同研究を行う予定である」だけでは弱いです。誰と連携するのかだけでなく、なぜその連携が本研究に必要なのか、その連携によって何が可能になるのかを書く必要があります。
たとえば、次のように書きます。
本研究では、〇〇〇解析に強みを持つ海外共同研究者と連携することで、申請者らが有する□□□データを国際的な比較研究へと発展させる。これにより、日本で得られた知見が特定の地域や材料に限られるものではなく、より普遍的な現象であるかを検証する。
このように書けば、国際連携が単なる飾りではなく、本研究の国際性や普遍性を高めるために必要なものであることが伝わります。
国際連携を書くときには、役割分担も重要です。海外研究者に何を依頼するのか、申請者は何を担当するのか、両者が協同することで何が可能になるのかを明確にします。単なるサンプル提供や解析依頼に見える場合でも、それが本研究の国際的な価値を高めるためにどう機能するのかを説明する必要があります。
日本発であることの意義を書く
この項目で特に重要なのは、「日本発の研究としての価値」です。国際性というと、つい海外との共同研究や海外への発信を考えがちですが、それだけではありません。日本でしかできない研究、日本だからこそできる研究、日本独自の研究蓄積をもとにした研究が、世界の知の体系に貢献することも重要な国際性です。
ここで大切なのは、「日本でしかできない」という特殊性を、「世界に通用する知見」という普遍性につなげることです。日本独自であることを強調するだけでは、単なるローカルな研究に見えてしまうことがあります。そうではなく、日本独自の材料、制度、歴史、環境、データ、技術を用いることで、世界の研究者が共有できる普遍的な知見を引き出す、という構図にする必要があります。
たとえば、次のように書きます。
本研究は、日本において長期的に蓄積されてきた〇〇〇を基盤とする点で、日本発の独自性を有する。一方で、本研究で明らかにしようとする□□□の機構は、特定の地域や対象に限定されるものではなく、国際的にも共有される重要な学術課題である。したがって、本研究は日本独自の研究基盤から、世界の研究者が利用可能な普遍的知見を創出するものと位置づけられる。
このように書けば、「日本独自」であることが、単なる特殊性ではなく、国際的な価値につながります。
世界の研究への貢献を書く
最後に、本研究が成功したときに、世界の研究にどのような貢献が期待されるのかを書きます。ここでは、単に「国際的に発信する」「海外でも役立つ」と書くのではなく、世界の研究をどのように前に進めるのかを説明します。
たとえば、次のように書けます。
本研究の成功は、〇〇〇分野における未解決問題であった□□□の理解にブレークスルーをもたらし、当該分野における我が国の学術的プレゼンスを国際社会に示す上で高い価値を有する。さらに、本研究で得られる知見は、△△△に関する世界的な研究の方向性を大きく前進させ、将来的に世界の研究を力強く牽引する可能性を持つ。
このような表現は、世界の研究への貢献を示すうえで使いやすいです。ただし、どの研究にもそのまま使える抽象的な表現だけでは弱くなります。本研究のどの成果が、どの分野のどの問題を前に進めるのかを、できるだけ具体的に補足してください。
よくない書き方
よくない書き方の一つは、「国際誌に投稿する予定である」「国際会議で発表する予定である」だけで終わるものです。これらは国際発信の方法であって、研究そのものの国際性ではありません。もちろん書いてもよいですが、それだけでは不十分です。
もう一つは、「本研究の成果は将来的に世界で役立つ」とだけ書くものです。将来的な有用性は重要ですが、現在の研究提案が世界の研究動向の中でどこに位置づけられるのかを示さなければ、説得力は弱くなります。
また、「海外研究者と共同研究するため国際性がある」という書き方も注意が必要です。海外研究者の名前があること自体が評価されるわけではありません。その連携によって、研究の質、普遍性、国際比較、国際発信、研究展開のどれが強化されるのかを書く必要があります。
さらに、「日本独自の研究である」とだけ書くのも不十分です。日本独自であることは強みになり得ますが、それが世界の研究にどう貢献するのかを示さなければ、国内限定の研究に見えてしまいます。日本独自の特殊性から、世界の知の体系に貢献する普遍的な知見を引き出す、という書き方を意識してください。
基本形
「どのような国際性を有するか」は、次のような流れで書くと整理しやすくなります。
現在、世界では〇〇〇に関する研究が進展しているが、□□□については未解決の課題として残されている。本研究は、申請者らが有する〇〇〇という独自の研究基盤を用いて、この課題に取り組むものである。特に、日本において蓄積されてきた△△△を活用することで、欧米中心の研究では検証が困難であった□□□を明らかにできる点に、本研究の国際的な競争性がある。さらに、〇〇〇に強みを持つ海外研究者との連携により、本研究で得られる知見を国際比較へと発展させ、特定の材料や地域にとどまらない普遍的な理解へと高める。本研究の成功は、〇〇〇分野における未解決問題にブレークスルーをもたらし、我が国発の成果として世界の研究を牽引する可能性を有する。
このように、世界の研究動向、申請者の国際競争性、日本発である意義、国際連携、世界への貢献をつなげて書くと、「国際性」が単なる飾りではなく、本研究の本質的な価値として伝わります。
まとめ
「どのような国際性を有するか」で書くべきなのは、海外とのつながりの有無だけではありません。本研究が世界の研究の中でどこに位置し、どのような競争性を持ち、どのように世界の知の発展に貢献するのかを書く必要があります。
国際性を書くときには、現在地と将来像の両方を意識してください。現在地とは、本研究が世界の研究レベルと比べてどの程度先進的なのか、どのような国際競争性を持つのかということです。将来像とは、本研究の成功によって、世界の研究がどのように前に進むのかということです。
日本でしかできない研究であっても、それが日本国内だけで完結するなら国際性は弱くなります。日本独自の研究基盤から、世界の研究者が共有できる普遍的な知見を生み出す。日本発の成果として、世界の研究を牽引する。そうした文脈で書くことが、この項目では重要です。