基礎研究の社会的意義は、社会実装を約束することではありません。本研究がどの不確実性を取り除き、その結果、次の研究者や利用者が何を判断できるようになるのかを示します。成果から社会利用までの未検証区間を隠さず、本研究が前進させる一段を明確にします。

「将来役立つ」だけでは、本研究の役割が見えない

基礎研究の申請書で社会的意義を書くとき、研究成果から医療、産業、教育、環境などの最終的な効果へ一気につなぐ文章がよく現れます。「新たな治療法の開発につながる」「持続可能な社会の実現に貢献する」「政策立案に資する」といった表現です。将来の方向を示すこと自体は問題ではありませんが、その間に残る検証が見えなければ、本研究が何を前進させるのかは分かりません。

研究成果と社会利用の間には、別の条件でも再現するか、対象を変えても成立するか、性能や安全性を満たすか、利用者が扱える形へ変換できるか、既存の方法より採用する理由があるか、といった判断が残ります。これらを省いて最終効果だけを書くと、社会的意義が大きいほど論理の空白も大きくなります。

そこで、社会利用までの全工程を自分の研究計画として抱え込むのではなく、本研究が終了した時点で何が確定し、誰が次の判断へ進めるのかを示します。社会的意義は、遠い効果の大きさではなく、将来の利用へ向かう判断を一段進めることによって具体化できます。

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