「医学にも工学にも応用できる」と分野名を増やしても、異分野への波及は具体化しません。本研究から切り離して渡せる成果、その成果を使う研究作業、異分野へ移すための翻訳、利用できる条件を一組にすると、波及可能性を審査員が判断できる文章になります。

波及先を広く書くほど、何が移るのか分からなくなる

異分野への波及を示そうとして、「本成果は医学、工学、情報科学など幅広い分野に応用できる」と書くことがあります。この文が伝えているのは、申請者が研究の広がりを期待していることだけです。医学の誰が何に使うのか、工学へ移るのは知見なのか方法なのか、情報科学でそのまま利用できるのかは分かりません。

異分野への波及で審査員が確認したいのは、波及先の数ではなく、成果が研究対象の境界を越えて利用できる理由です。そのためには、研究成果を「○○について新しい知見が得られる」と大きくまとめず、他者へ渡せる単位まで分解します。本記事では、この単位を「受け渡し単位」と呼びます。

受け渡し単位とは、別分野の研究者が受け取り、自分の問い、測定、比較、分類、設計に組み込める形になった成果です。研究対象そのものが移らなくても、評価指標、解析手順、データ形式、試料資源、概念上の区別、比較の枠組みは移転し得ます。異分野への波及は、この受け渡し単位を特定するところから始まります。

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