「社会的に重要な課題だから」という理由は、科研費において研究の動機としては弱いです。審査員が求めるのは、その研究が社会の役に立つこと以上に、学術的に重要かどうかです。社会的意義と学術的独自性を切り分けましょう。

「重要な課題だから」は研究すべき理由にならない
科研費の申請書では、研究の必要性を説明するために、「社会的に重要な課題である」「将来の医療や産業に役立つ」「社会問題の解決に貢献する」といった記述がよく使われます。
研究の社会的意義を示すこと自体に問題はありません。公的資金を用いる研究である以上、自分の研究が社会や学術の中でどのような意味を持つのかを考えることは重要です。
ただし、社会的に重要な分野に属していることや、近い将来に役立ちそうであることだけでは、その研究を行う学術的な理由にはなりません。
気候変動、少子高齢化、難治性疾患、食糧問題、エネルギー問題などが重要であることは、多くの審査員もすでに理解しています。問題は、その大きな課題の中で、申請者がどのような未解明点を見いだし、どのような新しい知識を加えようとしているのかです。
一方で、社会への応用がすぐには見えない研究であれば、何を研究してもよいわけでもありません。「誰も調べていない」「珍しい対象である」「独自の方法を使っている」というだけでは、研究の価値は決まりません。
科研費の申請書で整理すべきなのは、社会的意義と独自性という二つの要素だけではありません。少なくとも、次の三つを区別して考える必要があります。
- 社会的意義:研究成果が、将来的に社会へどのような意味や波及を持つのか
- 学術的重要性:なぜその問いを解く必要があり、解くことで学術がどう前進するのか
- 独自性:既存研究と比べて、問い、発想、方法、対象、解析などのどこが新しいのか
この三つは関係していますが、同じものではありません。どれか一つを強く語るだけでは、説得力のある研究計画にはなりません。
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