科研費の「独創性」を、まだ誰もやっていない「新しさ」だと勘違いしていませんか。審査員が本当に知りたいのは、「なぜ他の誰でもない、あなたがその研究をやる必要があるのか」という必然性です。先行研究の穴埋めから脱却し、あなたの研究の軌跡を語る。

審査員は「まだ誰もやっていない」に魅力を感じない
科研費の申請書において、学術的な特色や独創的な点を記述する際、多くの申請者が陥りやすい致命的な思い込みが存在します。それは、独創性を単なる「新しさ」として捉え、先行研究の隙間を埋めることこそが評価されると信じて疑わない姿勢です。
多くの申請書には、これまでこの点については全く明らかにされていない、本研究は世界で初めてこの現象の解明に挑むものである、といった記述が溢れています。たしかに、未解明の課題に取り組むことは研究の基本です。しかし、審査員の立場からすれば、誰もやっていないという事実だけでは、その研究に多額の国費を投入し、高く評価する理由にはなりません。
審査員は多忙な研究者であり、自身の専門知識を駆使して数多くの申請書を読み込みます。その際、誰もやっていないという主張に出会うと、彼らの頭の中には冷静な疑問が浮かびます。それは、単に技術的に不可能だったから誰もやっていないのではないか、あるいは、そもそも研究する価値がないから誰も手をつけていないのではないかという疑念です。
科学の歴史は、無数の先行研究の上に成り立っています。その中で、あえて手付かずで残されている領域には、残されているだけの理由があることが少なくありません。したがって、先行研究の隙間を見つけて、そこが空いているから自分が埋めるという論理展開は、研究の動機としては非常に脆弱です。
審査員が求めているのは、隙間産業的な目新しさではありません。彼らが本当に知りたいのは、なぜその課題を今解決する必要があるのか、そして、なぜ他の誰でもないあなたがその課題を解決できるのかという必然性です。単なる一番乗りを目指す競争ではなく、あなたの研究者としての軌跡や独自の視点から必然的に導き出された課題であることを証明しなければ、審査員の心を動かすことはできません。新しさという幻想から脱却し、あなたにしかできないことという視点へと、思考の枠組みを根本から転換する必要があります。
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