科研費の「国内外の動向」を自分の研究履歴書ではありません。審査員が知りたいのは、過去の苦労話ではなく「研究業界における本研究の相対的な位置づけ」です。主語を「私」から「分野の未解決課題」へ変換し、説得力のある背景を構築する技術。

審査員を疲弊させる「自叙伝」というワナ
科研費の申請書において、本研究の背景や国内外の動向の欄を読む際、審査員が最も読み進めるのに苦労し、評価を保留したくなる典型的なパターンが存在します。それは、申請者自身の過去の業績を時系列で並べただけの文章です。
研究者にとって、自分がこれまでどのような仮説を立て、どのような実験的困難を乗り越え、いかにして現在の構想に至ったかという物語は、極めて思い入れの強いものです。執筆している本人からすれば、その時系列こそが研究の必然性を示す最も説得力のある構成に思えるかもしれません。
しかし、審査員はあなたの研究人生の自叙伝を読みたいわけではありません。彼らが限られた時間の中で申請書から読み取りたいのは、現在の学術領域全体の中で何を解決すべきかという普遍的な課題と、本研究がその課題を解決し得るという論理的な必然性です。
自分の研究室の歴史や個人的な歩みだけを延々と語る文章は、その分野全体を俯瞰する第三者からすれば、極めて局所的な話題に過ぎません。世界のトップ研究者たちが現在何をめぐって議論し、どこに研究のボトルネックが存在するのかという大きな文脈が欠落しているため、研究の重要性が伝わらず、「独りよがりな計画である」という厳しい評価を下されてしまうのです。
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