エフォート(effort)は「努力・尽力」を意味する英語に由来していますが、研究の世界では以下のように定義されています。
研究者の全仕事時間100%に対する当該研究の実施に必要とする時間の配分割合(%)
エフォート管理の運用統一について (mext.go.jp)
*「全仕事時間」とは研究活動の時間のみを指すのではなく、教育活動や医療活動を含めた実質的な全仕事時間であり、裁量労働制が適用されている場合は、みなし労働時間とする。
選択と集中の名の下に特定の研究者に研究費が集中することが多くなり、過度な研究費の集中に対して批判が起きたことから、エフォートが導入されました。
自身の給与にエフォートが直接かかわる場合
クロスアポイントメントをする⼤学研究者等の従事⽐率(エフォート)は、組織間協定で決めることが できるものであり、クロスアポイントメントの実施にあたっては、従事⽐率(エフォート)に応じて、出向先の 企業において増えた業務量に対して、出向元の⼤学の業務量を調整されるものであるが、研究のみならず、教育、⼤学運営等に係る業務も鑑みた上で軽減することが推奨される。例えば、⼤学研究者等が 企業に勤務する予定⽇に開催される⼤学の各種会議への出席や⼊試担当業務等を免除するなどが考 えられる。
クロスアポイントメントの基本的枠組みと留意点【追補版】 (PDF:718KB)
給与水準の異なる2つ以上の大学あるいは企業で働く場合、エフォートは社会保険・年⾦の取扱い等にも影響するシビアな問題です。単純に考えると給与が高い側のエフォートをなるべく大きくすることが良さそうに思えますが、実際には勤労条件や税などの関係もありますし、何より実際の勤務実態に合わせることが第一ですので、一概には決められません。8:2とか9:1とか5:5あたりのキリの良いところが多そうです。
学振やプロジェクト雇用の場合
本来の業務が明確に規定されている中においても、全く他のことをしてはいけないというわけではありませんが、それなりに制約を受けます。プロジェクト雇用の場合は、そのプロジェクトを進めることがもっとも大事ですから、持ち時間の半分以上は本来の業務に割くべきであるという考えられます。そのため、多くの場合は50%以上(学振PDの場合は60%以上)のエフォートを求められます。機関によってはかなり厳格にエフォート管理をし、専任教員(50%以上)・博士研究員(90%以上)のように決められているところもあるようです。
競争的研究費においてプロジェクトの実施のために雇用される若手研究者の
自発的な研究活動等に関する実施方針対象者
本実施方針の対象者は、原則として以下の全てを満たす者とする。
(1)民間企業を除く研究機関において、競争的研究費においてプロジェクトの実施のために雇用される者(ただし、プロジェクトの PI 等が自らの人件費をプロジェクトから支出し雇用される場合を除く)
(2)40 歳未満の者(ただし、競争的研究費制度の各制度の特性に応じ、40歳以上を対象とすることを可能とする)
(3)研究活動を行うことを職務に含む者5.実施条件
本実施方針の実施条件は、原則として以下の全ての条件を満たすこととする。
(1)若手研究者本人が自発的な研究活動等の実施を希望すること
(2)PI 等が、当該プロジェクトの推進に資する自発的な研究活動等であると判断し、所属研究機関が認めること
(3)PI 等が、当該プロジェクトの推進に支障がない範囲であると判断し、所属研究機関が認めること(当該プロジェクトに従事するエフォートの20%を上限とする*)*自発的な研究活動等を含んだ当該プロジェクトの全仕事時間を100%とし、それに対する自発的な研究活動等を除いた研究活動の割合をが80%以上になること
競争的研究費においてプロジェクト実施のために雇用される若手研究者の自発的な研究活動等について:文部科学省 (mext.go.jp)
残りのエフォートをうまく活用して、他の研究費を得ることを目指しましょう。100%のエフォートを主たる業務に注ぐかどうかにかかわらず、結局は全力で頑張ることが大切です。他の研究費を獲得し、履歴書に書くことを増やすチャンスを失うのは得策ではありません。
具体的にどれくらいの割合までなら認められるのかは、雇用されている研究プログラムや出資元にもよりますので、自分勝手に判断せず、必ず確認するようにしましょう。
それ以外の大半の場合
科研費や学振の書面審査の基準は公開されていますが(科研費、学振)、そこにエフォートが十分かどうかの評価項目はありません。ので、通常の範囲においてエフォートが多いから良い、少ないからダメということは無く、純粋に全持ち時間のうち何パーセントをこの研究に費やすのか、を書く欄です。では、逆に、どういった場合にエフォートの多寡が意味を持つようになるのでしょうか。
少なすぎる場合
おおむね年間予算が1000万円を超えたあたりから、少なすぎるエフォートが問題になってきます。一般的な感覚からすると、1000万円は高額研究であり、「こんなにもらっているのに、これだけしか働かないつもりなのか」という感じになってしまいます。
審査員も評価項目ではないとはいえ、チェックすることは可能ですので、本気度を疑われないためにも大きめの数字を入れる必要があります。40%くらいが十分に大きいエフォートかどうかのボーダーラインです。
少なすぎるエフォートを書いた場合、(独立に審査した結果、採択となった場合には)後からエフォートをもう少し積み増すように指導が入ったりもします。その際に、エフォートに余裕がないと大変ですので、少なすぎるエフォートを前提にギリギリを攻めるのはやめましょう。
多すぎる場合
通常、多すぎるエフォートに意味はありません。ただし、エフォートとは「熱意」の現れです。エフォートが80%とか90%の場合、それは実質、「他の研究をせず、この研究に全てを捧げる」という宣言ですから、いくら審査項目にエフォートの多寡が無いとはいえ、審査員に対するアピールになります。
通常時には対して役立ちませんが、合議制の審査においてボーダーゾーンの審査時には、他に比較できそうなものが無い場合に、十分に多いエフォートは有効に働くこともあります。
標準的なエフォート
- エフォートは10-30%くらいが「普通」
- 教育や運営など、研究以外のエフォートは5~15%程度
- 数字は通常は5%刻みだが、1%刻みがダメなわけではない。