スライドのデザインは完璧なのに、いざ発表が始まると**「なんだか頭に入ってこない」と言われる。
その原因は、あなたの「原稿(スクリプト)」と「数字の扱い方」**にあります。
論文や申請書の文章(書き言葉)をそのまま読み上げると、耳で聞いた時に非常に理解しづらくなります。また、スライド上の重要な「数字」が、単位や修飾語と同じサイズで書かれていると、インパクトが弱まります。
今回は、聴衆の脳に負担をかけない「話し言葉への翻訳術」と、数字を直感的に伝えるための「サイズ調整テクニック」を解説します。
1. 「書き言葉」を「話し言葉」に翻訳せよ
論文では「硬い表現(漢語)」が好まれますが、プレゼンでは「柔らかい表現(和語)」が正義です。
耳から入る情報は、漢字変換できないため、同音異義語の多い漢語はノイズになります。
① 漢語を「和語(動詞)」に開く
- × 書き言葉: 「本薬の投与により、顕著な縮小が確認された。」
- ○ 話し言葉: 「薬を投与すると、がんが小さくなることがわかりました。」
「縮小(シュクショウ)」と聞くより、「小さくなる」と聞く方が、脳内での変換コストがかかりません。
② 接続詞を解体する
論文でよく使う「〜であり、〜したが、〜であるため、〜した」という長文は、プレゼンでは最悪です。
**「ワンセンテンス・ワンメッセージ(一文一義)」**で短く切ってください。
- × Bad: 「AはBであり、Cという課題があったため、Dを行ったところ、Eという結果が得られた。」
- ○ Good: 「AはBです。しかし、Cという課題がありました。そこでDを行いました。その結果、Eとなりました。」
2. 数字は「大きく」、単位は「小さく」
ここからはスライド上の文字テクニックです。
「成功率は 98.5% でした」とスライドで見せる時、全ての文字を同じサイズにしていませんか?
「数字(主役)」と「単位(脇役)」は、明確にサイズを変えてください。
黄金比:単位は数字の「50%〜60%」
数字が「100pt」なら、単位(%、kg、mm)は「50〜60pt」にします。
こうすることで、数字の**「量感(マグニチュード)」**が強調され、パッと見た瞬間のインパクトが段違いになります。
- Bad: <span style=”font-size:24px”>100mg</span> (平坦に見える)
- Good: <span style=”font-size:32px”>100</span> <span style=”font-size:18px”>mg</span> (100という量が目に飛び込んでくる)
「約」や「およそ」は極小にする
「約100人」と書く時、「約」という文字に情報としての価値はほとんどありません。
これは思い切って数字の30%〜40%くらいのサイズまで小さくし、数字の左上に添えるようなデザインにします。
【図版指示 1】
- 内容: 数字のジャンプ率の比較図。
- 左(Bad): 「約80%が改善」という文字が、すべて同じフォントサイズ、同じ太さで書かれている。
- 右(Good):
- 「80」が超巨大な太字。
- 「%」はその半分のサイズ。
- 「約」はさらに小さく、左上にちょこんと乗っている。
- 「が改善」は下部に普通のサイズで配置。
- キャプション: 「主役(数字)を立てるために、脇役(単位)は控えさせる」
3. 重要な数字は「独立」させる
文章の中に数字を埋め込まないでください。
重要な数値データは、文章から切り出し、**「独立したパーツ」**としてスライドの中央に配置します。
- × 文章埋め込み:
- 「実験の結果、生存期間の中央値は、対照群の15.2ヶ月に対し、投与群では24.5ヶ月まで延長しました。」
- (聴衆は文章を読むのに必死で、数字が頭に残らない)
- ○ ダッシュボード型:
- スライド中央に大きく配置:
- <span style=”font-size:20px”>生存期間:</span> <span style=”font-size:40px”>24.5</span> <span style=”font-size:24px”>ヶ月</span>
- (対照群:15.2ヶ月)
- (聴衆は「24.5」という数字を映像として記憶する)
まとめ:言葉と数字を「整形」せよ
原稿もスライドも、素材のまま出してはいけません。
聴衆の脳にスッと入る形に「整形」してください。
- 原稿は「和語」で「短く」切る。
- 数字は「巨大化」し、単位は「半分」にする。
- 「約」などのノイズ文字は極限まで小さくする。
この微調整を行うだけで、あなたのプレゼンは「難解な講義」から「わかりやすいプレゼンテーション」へと劇的に変化します。