学振の審査プロセス

審査プロセスや審査方法は毎年のように微妙に変更されていますので、最新の情報は日本学術振興会のページを確認するようにしてください。

学振の審査方針

(1) 自身の研究課題設定に至る背景が示されており、かつその着想が優れていること。また、研究の方法にオリジナリティがあり、自身の研究課題の今後の展望が示されていること。
(2) 学術の将来を担う優れた研究者となることが十分期待できること。
(3) 特別研究員-PDについては、博士課程での研究の単なる継続ではなく、新たな研究環境に身を置いて、自らの研究者としての能力を一層伸ばす意欲が見られること。
(4) 特別研究員-PDについては、やむを得ない事由がある場合を除き、大学院博士課程在学当時(修士課程として取り扱われる大学院博士課程前期は含まない)の所属研究機関(出身研究機関)を受入研究機関に選定する者、及び大学院博士課程在学当時の学籍上の研究指導者を受入研究者に選定する者は採用しない。

日本学術振興会 特別研究員-DC、特別研究員-PDの選考方法

学振の審査の流れ

  1. 関連する審査区分を組み合わせて設定された「書面審査セット」(科研費の「中区分」と同じです)に分け、原則6名の審査員が同じ書面審査セット内の複数の申請について独立に書面審査を実施します。
  2.  一段階目の書面審査では、申請者の研究能力・将来性等について評価を行い、長所・短所を記入します。
  3. 一段階目の書面審査結果を踏まえ、採用内定数の上位80%~120%のボーダーゾーンの申請者は、二段階目の書面審査対象とします。
  4.  二段階目の書面審査では、一段階目の総合評価の評点や書かれた意見も参考にし、改めて同一の審査員による書面審査を行います。なお、一段階目の書面審査を担当した審査員の氏名、所属、職名は、他の審査員には提示されません。
  5.  最終的には、一段階目の書面審査結果における上位の申請者及び二段階目の書面審査結果における上位の申請者が、採用内定者として決定されます。

学振の審査基準(1段階目)

①「研究計画の着想及びオリジナリティ」、②「研究者としての資質」の2つの項目ごとに、絶対評価により5段階の評点(5:非常に優れている、4:優れている、3:良好である、2:普通である、1:見劣りする)を付します。

ポイント

上記の「研究計画の着想及びオリジナリティ」と「研究者としての資質」の評点はあくまでも参考であり、総合評価の評点とは別です。極端な話、それぞれの項目が5であっても総合評価の評点が1であることも、理屈のうえではあり得ます。

その後、上記2項目の点数を踏まえて、総合的に研究者としての資質及び能力を判断した上で、書面審査セット内での相対評価により5段階の総合評価の評点(評点は5~1。評点5が最も採用を強く推奨する。)を付します。1人あたり約50件の申請書について1が10±5%、2が20±5%、3が40±5%、4が20±5%、5が10±5%のようにだいたい正規分布になるように評点をつけますので、6人ぶんの平均は以下のようになり、学振の採択率である20%強だと、だいたい3.333がボーダーラインです*。

6人の審査員が[3,3,3,3,4,4]としたとき、平均評点は3.3333です。つまり、6人の合計が20点か21点ならボーダーゾーンで22点なら合格圏なります(採択率が20%の場合)。

6人の審査員の評点(1例)平均点全体の上位何パーセントか
3,3,3,3,4,43.33324% – 34%
3,3,3,4,4,4 or 3,3,3,3,4,53.517%
3,3,4,4,4,4 or 3,3,3,4,4,53.66710%

6名の審査員の持ち点が1~5のいずれかなので、平均は3.333…の次が3.5となり、その間はありません(3.333は人数がとても多い)。この場合、第一段階の書面審査で合格圏内に入るためにはたとえば半分以上が4の評価となる[3,3,3,4,4,4]である必要があります。一人でも2以下がついてしまうと致命的です。

学振の審査基準(2段階目)

二段階目の書面審査では、一段階目の書面審査においてボーダーラインの±20%(採択率20%の場合上位16%~24%、評点で3.5~3.333)の申請書について、他の審査員が付した総合評価の評点及び審査意見を参考に、改めて4段階の評点(二段階目の審査の対象となった申請のうち、A:採用を強く推奨するもの、B:採用を推奨するもの、C:採用してもよいもの、D:A~Cに入らないもの)を付します。

学振(RPD)の審査の方針と審査の流れ

基本的には同じですが、応募数の少なさとプログラムの特性により少しだけ異なっています。

(1)自身の研究課題設定に至る背景が示されており、かつその着想が優れていること。また、研究の方法にオリジナリティがあり、自身の研究課題の今後の展望が示されていること。
(2)学術の将来を担う優れた研究者となることが十分期待できること。

特別研究員-RPDの選考は、「書面審査セット」ごとに、複数の特別研究員等審査会委員が書面審査を行い、書面審査の評価結果に基づき採用内定者及び補欠者を決定します。

申請書類に基づき、申請者の研究能力・将来性等について評価を行い、①「研究計画の着想及びオリジナリティ」、②「研究者としての資質」の2つの項目ごとに、絶対評価により5段階の評点(5:非常に優れている、4:優れている、3:良好である、2:普通である、1:見劣りする)を付します。

その後、上記2項目の点数のほか、出産・育児による研究中断のために生じた研究への影響を踏まえたうえで、この制度の支援により研究現場に復帰した後の将来性等を含めて総合的に判断し、書面審査セット内での相対評価により5段階の評点(評点は5~1。評点5が最も採用を強く推奨する。)を付します。

学振DC1, DC2の応募者数、採択者数、採択率

データが利用できる2004年以降の学振DC1・DC2の応募者数、採択者数、採択率を示します。応募者数は比較的安定していますが、緩やかな増加傾向であり、特に2023年から2024年にかけて大幅に増加しています。こうした直近の増加の理由を明示するデータはわかりません。。 採択数は2017年以降、DC1:700件、DC2:1100件程度で安定しています。しかし、応募数の増加により、採択率は低下しています。

DC1, DC2の応募者数(人)の推移
DC1, DC2の採択者数(人)の推移
DC1, DC2の採択率(%)の推移

学振PDと海外学振の応募者数、採択者数、採択率

データが利用できる2004年以降の学振PDおよび海外学振の応募者数、採択者数、採択率を示します。学振PDの応募者数の低下が顕著です。ポスドクを獲得しにくくなったという噂はチラホラ聞きますが、それも納得です。この要因は少子化で人材獲得競争が激しく、いまいちパッとしない国内の科学振興政策による業界の魅力低下が影響しているように思います。RPDは採択率が5割近く、さすがにアンバランスすぎる気がします。

学振PDの応募者数の推移
学振PDの採択者数の推移
学振PDの採択率の推移

ますます、申請書の書き方の重要性が高まってきている

学振DCの応募者数は増加し、採択率は低下しています。おそらく採択者数を目標値とした調整の結果だと思われます。競争が激しいにもかかわらず業績に差がつきにくい学振DCでは、しっかりとした申請書を書くことが採否を決めることでしょう。

一方、学振PDについては、応募者数が減少している割には採択者数が高めで安定している傾向にあります。とはいえ、もともと優秀であると考えられる層の20-30%ですので、今後も数少ない学振PDのポジションを巡っての熾烈な争いは続きそうです。長期採用の動きもありますので、今後も学振PDの魅力は失われることは無いでしょう。業績もさることながら、申請書の書き方で取りこぼしの無いようにしないといけません。海外学振であれば、さらに採択率高めなので、海外に行っても良いと思える人はそちらがおすすめです。楽しいですよ、海外。