「今後研究者として更なる発展のため必要と考えている要素」と「目指す研究者像(目指す研究者像に向けて身につけるべき資質)」は似ていますので、かなり意識して書き分けないと同じことを繰り返してしまいます。

更なる発展のため必要と考えている要素とは

(1)…及び(2)「今後研究者として更なる発展のため必要と考えている要素」…について、これまで携わった研究活動における経験などを踏まえ、具体的に記入してください。

下記(1)及び(2)の記入にあたっては、例えば、研究における主体性、発想力、問題解決力、知識の幅・深さ、技量、コミュニケーション力、プレゼンテーション力などの観点から、具体的に記入してください。また、観点を項目立てするなど、適宜工夫して記入してください。

令和6(2024)年度採用分 学振 申請内容ファイル(様式)の注意書き

(1)の「研究に関する自身の強み」の強みと同様、ある要素(能力)を挙げながら、どういった能力が必要なのかについて書きます。

2か所ある注意書きの両方で(1)及び(2)の両方を指す形で注意書きが書かれていますので、主体性、発想力、問題解決力など、ある能力を示す形で「更なる発展のため必要と考えている要素」を書く子尾がもとめられています。

自分を一方的に悪く言わない

審査員は申請者のことを知りません。「何を当たり前のことを」と思うかもしれませんが、見落とされがちな重要な要素です。

一般的な傾向として、日本人は「私はまだまだです」のように、自分自身を謙遜する傾向にあります。申請者のことを知っている人であれば「あぁ、謙虚な人だな」と考えてくれるかもしれませんが、申請者のことを知らない審査員は額面通り受け取るしかなく「私はまだまだです」と言われば「まだまだなんですね」としか評価できません(だって自分でそう言っているのですから)。

ですので、「今後研究者として更なる発展のため必要と考えている要素」を足りていない能力、自身の弱点のようにとらえて書いてしまうと、審査員は額面通り受け取ります。これでは評価につながりません。戦略は主に2つあるいはその組み合わせです。

戦略1 バランスを取る

〇〇〇についてはできているが、〇〇〇については不十分である。そのため…

を基本として、一方的にダメとは言わないようにします。全てが完ぺきな人がいないことは審査員も知っているので、不十分であることを挙げること自体は問題ありません。ただし、メインは「更なる発展のため必要と考えている要素」ですので、「〇〇〇についてはできている(強み)」に関する内容を長く書きすぎないようにしましょう。

また、弱みを書くことが自己の評価を下げるとの考えからき、軽微なことを「今後研究者として更なる発展のため必要と考えている要素」として挙げる人がいます。全てが完ぺきな人がいないことは審査員も知っているので、軽微なことでは不十分です。「更なる発展のため」に必要な要素なので、その壁は大きく高いはずであるはずです。低い壁を乗り越えただけでは大した発展は見込めません。

戦略2 強みをさらに伸ばす

「今後研究者として更なる発展のため必要と考えている要素」を書いてくださいというお題ですので、必ずしも弱みを書く必要はありません。たとえば

すでに〇〇〇は申請者の強みであるが、これを世界レベルにまで引き上げることで…

のように短所を克服するのではなく、長所をさらに伸ばす系の書き方も可能です。

対応づける

ここで書く内容はさまざまな個所と連動していますので、他との兼ね合いの中で書く内容を決める必要があります。

「研究に関する自身の強み」と対応づける

戦略1,2で説明したように、どちらの戦略であっても、「今後研究者として更なる発展のため必要と考えている要素」を書く際には強みを意識する必要があります。

「目指す研究者像に向けて身につける資質」と対応づける

「目指す研究者像」を実現するために必要となるスキルセットを明確にし、現状を把握できれば、必然的に「更なる発展のため必要と考えている要素」は決まってきます。このように両者の内容は連関していますので、身につける資質として「高度な専門性」を挙げておきながら、目指す研究者像として「分野にとらわれない融合研究、新領域の開拓」などを挙げると、おや?と思います。もちろん、矛盾しないような説明も可能なのかもしれませんが、基本的には

自身の強み + 更なる発展のため必要と考えている要素 = 目指す研究者像に必要なスキルセット

です。

「評価書」と対応づける

評価書にも

新生者の(1)「研究者としての強み」及び(2)「今後研究者として更なる発展のため必要と考えている要素」のそれぞれについて、具体的に入力してください。

日本学術振興会特別研究員申請者に関する評価書

とあります。原則的には評価書は評価書作成者が書くものですから、申請書の内容と一致しなければならないということはありませんが、申請者の自己評価と評価者の評価が全く異なっていると、自己分析ができていないという判断を下されても不思議ではありません。

下書きは申請者の方でする場合も多く、そうした場合では完全に同じは不自然ですが、申請者と評価者が考える必要となる要素の大部分は同じような評価である(≒自己分析ができている)ように書いておいてバチはあたらないでしょう。また、依頼する場合でも、自分はこういう内容を「今後研究者として更なる発展のため必要と考えている要素」として書いた旨を伝えておけば、それに沿った内容になるかどうかはともかくとしても、同じような方向性で書いてくれることは期待してもよいでしょう。