申請書の文章は推敲しても、図については無頓着な場合が多く見られます。ここでは、比較的簡単に分かりやすいイラストを描く方法を説明します。

写真

2024年3月10日に確認したところ、以下の記述は削除され、以下のように変更されていました。また、科研費FAQからも該当する質問は削除されていましたので、申請書の基本はカラーということになったのだと思います。ただし、依然として紙媒体の申請書の場合はグレースケール印刷ということですから、「グレースケールに耐えられるカラーの図」が最適解であることには変わりません。

令和7(2025)年度 日本学術振興会特別研究員-PD 募集要項より

科研費の審査はグレースケール印刷された書類に対して行われます(科研費FAQのQ2202)。

Q
研究計画調書の記載にあたって、強調したい部分にアンダーラインを付したり、カラーの図表 を挿入したりすることは構いませんか?
A

構いませんが、一部の研究種目(※)を除き、審査に付される研究計画調書はグレースケールでモノクロ印刷されたものになりますので、あらかじめモノクロ印刷した研究計画調書で確認してから応募されることをおすすめします。なお今後、審査資料の電子化・カラー化を順次拡大していく予定です。
(※)令和5(2023)年度に公募が行われる研究種目のうち、審査資料の電子化・カラー化の対象となるものは以下のとおりです。
【審査資料の電子化・カラー化の対象となる研究種目】(注)
・令和6(2024)年度「特別推進研究」、「基盤研究(S)」
・令和5(2023)年度「研究活動スタート支援」、「海外連携研究」、「国際共同研究強化」、「帰国発展研究」
審査資料の電子化及びカラー化について、詳細は、以下の事務連絡を参照してください。
(注)国際先導研究では、令和4(2022)年度公募より審査資料を電子化・カラー化しています。

顕微鏡の蛍光写真などはグレースケールだとかなり厳しいので、何を載せるかはかなり気を使います。その他の写真についてもコントラストを確認しグレースケールに耐えうることを確認しておきましょう。

ポイント

FAQにはこう書いてありますが、一部では審査時にオリジナルのPDFが提供されカラーの図が反映されていたという事例を聞いたことがあります(その一方で、グレースケール印刷したものを再度取り込んだPDFも存在するようです)。そのため、申請書提出時はグレースケール印刷に耐えうるカラーの図を提出することを推奨します。カラーの図で提出すること自体は問題ありません。

写真である必要性が低い場合は、写真の内容をイラスト化することも検討対象になります。

図表

申請書は論文ではありませんので、あまり込み入った図表にせず、極力シンプルにして、ひと目で図表の主張がわかるようなものにした方が良いでしょう。

特に論文の図表そのまま載せることは厳禁です。できるだけ、申請書用に作り直しましょう。

申請書論文
図表の詳しさ細かい説明不要で、図表を見ただけで言いたいことがシンプルに伝わるようになるべく詳しく、情報を漏らさず
図中文字の大きさ小さすぎる字は読めない(読まない)小さすぎる字は読めない(読まない)
図表の大きさ限られた紙面なので、大きくできない図の大きさの制約は申請書よりは厳しくない
色使いグレースケール印刷という制約上つかえない必要に応じて使える
書き込み論文ではないので、図が何を意味しているのか、どこを見るべきなのかは積極的に書きこむ図中に→や文字での説明を入れたりしない

イラストの描き方

写真で伝えるよりも物事をシンプルに表現できる一番、改善できるとすればイラストです。影やグラデーションのついたCGや美しいイラストは確かにインパクトがあるのですが、申請書には不向きです。

例えば、こんなイラストはどうでしょうか?

どこかから取ってきた綺麗な絵に、明らかにPowerPointで適当に描いた転写因子。イラストのテイストが違い過ぎてバラバラな感じがします。全てを同じクオリティ・同じテイストで描くことが難しい以上、他人が描いたものは使うべきでは使うべきではありません。

また、影やグラデーションなどは申請者が伝えたい情報ではありません。変なところにこだわりを見せずシンプルに描いてください。パワーポイントで図形を書くと、バージョンによっては図形に影がつき、塗りつぶしがグラデーションになってしまいます。

図形を右クリックして[図形の書式設定]から[塗りつぶし]、[影]と進み設定を外しておきます。

パワーポイントで作ったのが丸出しのイラストは避ける

いくら自分で描いた方が良いと言っても、これはあんまりです。太陽はPowerPointにもともと入っていたものですし、キリン(?)は四角や丸を組み合わせた単純なものです。あまりにも幼稚で、これでは申請書の内容まで軽いように思われてしまいます。ここでは、絵心の無い人でもそれなりに描ける方法を紹介します。

ステップ1:下絵の準備

下絵となる適当な写真を見つけてきて、パワーポイント上に大きく貼ります。

ステップ2:下絵のトレース

[挿入]→[図形]→[線とコネクタ]→[曲線]で曲線の線画モードに入ります。輪郭に点を打つような感覚で、曲線を描いていきます。微修正は線を右クリック[頂点の編集]から行います。

ステップ3:色をつけてグループ化

下絵の写真を消します。線の影を消し、太さを調整し、色をつけ、グループ化して、完成です。このやり方であれば、適当な元絵さえあれば簡単にイラストにできます。