できあがった申請書を同僚や上司などの親しい第三者に読んでもらうことはとても重要です。また、その分野に馴染みのない人がわかりにくいと感じたところは審査員もそう感じる可能性が高い箇所ですので、家族に読んでもらうのも良い案です。しかし、そうした環境にない場合や時間が無い場合、自分自身で見直す必要があります。

一般的に自分で申請書を見直すポイントを以下の5つです。ちなみに、校閲と校正には以下のような区別があります。

校正: 著者の書いた原稿と印刷所で作られた校正刷りとを見比べて、著者の原稿にそって正しいものにすること。
校閲: 書かれた文章そのものの内容が正しいかを確認して、その誤りを正すこと。

1.申請書を書き終えてから、文章校正までは2日程度空ける

申請書を書いている最中はすごいと思った表現でも後から読むと、意味不明なことは多いでしょう。書き上がった直後というのは、一種の興奮状態であり、ひとりよがりな状態にに陥っています。1−2日ほど全く申請書を見ない期間を作り、頭をリセットしましょう。どうしても時間が無い場合でも3時間くらいは時間を空けたいところです。

2−3日あけてから見直すと決めていれば早目に取り掛かることになるので、締め切り前に慌てることもなくなります。

2.声に出して、記事の文章をチェックする

作業現場では指差呼称として「安全よ~し」と発すると同時に指で対象物を指していることを目にすることがあります。これには意識レベルを上げるとい意味があります。

1994年、財団法人(現、公益財団法人)鉄道総合技術研究所により、効果検定実験が行われました。同実験によれば、「指差しと呼称を、共に行わなかった」場合の操作ボタンの押し間違いの発生率が2.38%であったのに対し、「呼称のみ行った」場合の押し間違いの発生率は1.0%、「指差しだけ行った」場合の押し間違いの発生率は0.75%でした。

一方、指差しと呼称を「共に行った場合」の押し間違いの発生率は0.38%となり、指差しと呼称を「共に行った」場合の押し間違いの発生率は、「共に行わなかった」場合の発生率に比べ、約6分の1という結果でした。

つまり、申請書のチェックにおいても黙読するのではなく、音読することによって、誤字脱字や文章のリズム、助詞の間違い等のチェック効果が高まると期待されます。黙読では、知らず知らず読み進めるスピードを上がり誤字脱字の見落としをしてしまう危険性が増えます。例えば、英語の例ですが下のような単語(HとAは同じ字形)が自然な流れで出てくると黙読では見落とすケースがほとんどです。

自分でそれなりに時間をかけて書いたものだけに、どこか心に油断が生じてしまいます。

「何度も見ているし、大丈夫だろう」

「さっき読み直して内容ごと修正したから」

そんなふうに思い込み、さっさと申請書の作成作業から解放されたい衝動を抑えきれず校正作業は手を抜いてしまいがちなのです。これは論文の校正で経験したことのある人も多いでしょう。

また、音読だけもまだ上記のようなものを見落とす可能性がありますので、指で文字を確認しながら音読するというのも良いかもしれません。この場合はどうしても音読のスピードが遅くなり、文のリズムをチェックすることはできませんので、使い分けるとよいでしょう。

3.申請書をプリントアウトしてから、チェックする

ほとんどの申請書自体は電子申請になりましたが、評価はいまだに紙ベースで行われることが多いようです。ディスプレイで読むか・紙面で読むかによっても、文章の印象は大きく違います。ディスプレイでは文面全体を俯瞰することができません。上下左右いずれかにスクロールしながらの校正は集中を妨げられ、ミスを誘うケースが多いものです。

校正はプリントアウトすることが鉄則です。ただし、初稿など直すところが多いような場合はいちいち書き込んでいられないので、Word等の校閲機能を使うほうが便利です。

これにより、作成の段階で見落としていた部分も紙面でチェックすることで気づけることも多々あります。また、実際の申請書での見え方を確認することによって、最終的な読みやすさを判定することができます。

4.申請書全体を通じて統一されているかチェックする

・同じ意味の言葉について、表記が統一されているか?

・行間・見出し前の空行などは統一されているか?

・研究目的の内容と実際の研究計画の内容は対応しているか?

・図や表・画像を用いてる場合、これらと本文との関係に整合性があるか?

5.申請書の内容を追わず、文字だけを見る

校正の際には、どうしても内容に意識がいってしまい、文字に対する厳正な視線は失われがちになります仮に漢字が間違っていたとしても、微妙な違いに気づかないケースが多いものです。

たとえば以下のような同音異義語。

  • 制作⇔政策⇔製作
  • 行く⇔往く⇔逝く
  • 指す⇔挿す⇔差す
  • 柿⇔牡蠣
  • 調整⇔調製

内容を追えなくするために、文章の最後の方から段落ごとにチェックしていくという方法もあります。