初めての国際学会。「英語でプレゼンなんて無理だ…」と絶望していませんか?
発音が悪いから? 文法に自信がないから?
断言します。研究発表において、ネイティブのような流暢さ(Fluency)は1ミリも必要ありません。
聴衆が求めているのは「美しい英語」ではなく、「新しいデータ」だからです。
むしろ、変に流暢で早口な英語よりも、**「拙くても、ゆっくり、論理的に話す英語」**の方が、非ネイティブの多い国際学会では遥かに伝わります。
今回は、英語が苦手な研究者が、迷子にならずに発表し、質疑応答の沈黙を乗り切るための**「魔法の定型フレーズ」**を伝授します。
1. 英語プレゼンの正体は「道案内(Signposting)」
英語プレゼンで一番やってはいけないのは、単語と単語の間を「えー(Ah…)」「あー(Umm…)」で埋め尽くしてしまうことです。これでは聞き手が疲れてしまいます。
代わりに使うべきなのが、**「Signposting(道しるべ)」**と呼ばれるつなぎ言葉です。
「次はここに行きます」「ここが重要です」と、話の継ぎ目で宣言するのです。これがあるだけで、あなたの英語は劇的に「プロっぽく」聞こえます。
必須の「道案内」フレーズ集
これだけは丸暗記して、台本に書き込んでおきましょう。
- スライドを変える時
- Let’s move on to the next slide. (次のスライドに移ります)
- Turning to the next point, (次のポイントですが、)
- 図表を見せる時
- Please take a look at this graph. (このグラフを見てください)
- This figure shows… (この図は〜を示しています)
- 強調したい時
- The important point is… (重要な点は〜です)
- I’d like to emphasize that… (強調したいのは〜です)
- 結論に入る時
- In conclusion, (結論として、)
- To sum up, (要約すると、)
【図版指示 1】
- 内容:プレゼンの流れとサインポスティングのイメージ図。
- 構成要素:
- 一本の道があり、曲がり角ごとに「標識(Signpost)」が立っている。
- 標識には「Next Slide」「Results」「Focus!」などの文字。
- キャプション:「『つなぎ言葉』は、聴衆を迷子にさせないためのGPSである」
2. 質疑応答の沈黙を消す「時間稼ぎ」フレーズ
発表が終わった後のQ&Aセッション。
質問されて、答えを考えている間の「沈黙」ほど怖いものはありません。焦って「Ah…」と言ったり、黙り込んだりすると、会場に不穏な空気が流れます。
この**「考える時間」を堂々と確保するためのフレーズ**を持っておくことが、精神安定剤になります。
初動の「3秒」を稼ぐフレーズ
質問が終わったら、即座にこう言ってください。
- Thank you for your question. (質問ありがとうございます)
- 基本中の基本。これだけで2秒稼げます。
- That’s a very interesting point. (それは非常に興味深い点ですね)
- 相手を褒めつつ、3秒稼げます。
- Let me see… (えーっとですね…)
- “Ah…” と言う代わりに、ゆっくりと低めの声で “Let me see…” と言うだけで、知的に見えます。
答えを整理するためのフレーズ
- Well, regarding your point, (ええ、ご指摘の点についてですが、)
- Actually, we haven’t tested that yet, but… (実のところ、まだ試していませんが…)
これらの定型句を口から自動的に出すことで、脳のCPUを「回答の構築」だけに集中させることができます。
3. 聞き取れなかった時の「緊急回避」コマンド
ネイティブの質問が早口すぎて聞き取れなかった時、愛想笑いでやり過ごすのは自殺行為です。
「聞き返す」ことは恥ではありません。 正しい英語で聞き返せば、相手は「あ、早すぎたな」とゆっくり言い直してくれます。
レベル別・聞き返しフレーズ
- Lv.1 単純に聞こえなかった
- Could you speak a little louder, please? (もう少し大きな声でお願いします)
- Lv.2 早すぎてわからなかった
- Could you say that again more slowly? (もう少しゆっくり言っていただけますか?)
- Lv.3 意味がわからなかった
- I’m sorry, I couldn’t catch your point. (すみません、趣旨がつかめませんでした)
- Do you mean…? (〜ということでしょうか? ※自分の理解で要約して聞き返す)
【図版指示 2】
- 内容:質疑応答の「防衛シールド」のイメージ。
- 構成要素:
- 発表者が盾(シールド)を持っている。
- 盾には「Could you repeat?」「Good question!」「I don’t know」などのフレーズが書かれている。
- 飛んでくる矢(質問)を、盾で落ち着いて防いでいる様子。
4. 「わかりません」をポジティブに言う技術
どんなに準備しても、答えられない質問は来ます。
その時、”I don’t know.” と言って黙り込むのはNGです。それでは「勉強不足」とみなされます。
科学者として、**「現在はわからないが、検討する価値がある」**というポジティブな姿勢で締めくくりましょう。
- That’s a great question. We don’t have the data right now, but it’s an important topic for future research.
(素晴らしい質問です。現時点ではデータがありませんが、今後の研究課題として重要ですね。)
このフレーズを丸暗記しておけば、どんな難問が来ても**「Future Work(今後の課題)」**という箱に放り込んで、笑顔で終わらせることができます。
まとめ:英語は「知識」ではなく「筋肉」
今回紹介したフレーズは、知っているだけでは使えません。
「口が勝手に動く」レベルになるまで、何度も音読して筋肉に覚え込ませてください。
- **つなぎ言葉(Signposting)**でスライド間を滑らかにつなぐ。
- 時間稼ぎフレーズで、焦る心を落ち着かせる。
- Future Workで、答えられない質問をかわす。
この3つの武器をポケットに入れておけば、国際学会という戦場も、決して怖い場所ではありません。
流暢に喋ろうとせず、「堂々と、ゆっくり、定型文を置く」。これだけで、あなたは十分にグローバルな研究者です。