申請書の冒頭で専門用語を並べると審査員は迷子になります。誰もが知る既知の情報から入り、徐々にあなたの研究である未知へと導く「導入の坂道」を設計してください。審査員の安心感が、採択への第一歩となります。

専門用語の羅列が引き起こす審査員の思考停止

科研費の申請書において、研究の背景や目的を書き出す第一段落は、審査員があなたの研究計画に初めて触れる最も重要な入り口です。しかし、この入り口において多くの申請者が無意識のうちに犯している重大な過ちがあります。それは、自身の専門領域の深い部分から、いきなりトップスピードで文章を書き始めてしまうことです。

審査員は、必ずしもあなたと全く同じサブ分野を専門としているわけではありません。周辺領域の専門家として、数十件もの申請書を連続して読み込んでいる多忙な同僚です。そのような審査員が申請書を開いた瞬間、見たこともない専門用語や極めてニッチな前提条件から始まる文章に直面したとき、彼らの脳内では何が起きるでしょうか。

それは、読み手に対する知識の暴力として作用します。審査員は文章を理解するために、文脈を推測したり自身の記憶を必死に検索したりと、急激な認知負荷を強いられます。この時点で、研究の学術的意義や社会的な面白さを味わう余裕は完全に失われ、「この申請書は読むのが苦痛だ」という拒絶反応が生じます。

申請者は自分の研究への熱意と専門性の高さを示すために高度な用語を使いたがりますが、これは完全に逆効果です。審査員は、専門用語の難解さによって研究を評価するわけではありません。むしろ、高度で複雑な事象を、どれだけ明快かつ論理的に説明できるかという知的な翻訳能力を評価しています。いきなり未知の用語で読者を殴りつけるような導入は、コミュニケーションへの配慮が欠如しているとみなされ、厳しい評価に直結します。

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