学術的背景は総説や歴史の教科書ではありません。自分の知っていることを全て書くのではなく、審査員を「本研究の核心となる問い」へ迷わず導くための誘導です。広い前提から始まり、徐々に焦点を絞り込んで問いに収束させます。

知識の羅列が引き起こす審査員の迷子と疲弊

申請書における学術的背景の項目を書き始める際、慣れていない人は、論文や総説の背景を書くかのように自分が対象とする分野の現在に至るまでの歴史を網羅的に記述してしまいます。

研究への熱意が強く、文献を深く読み込んでいる人ほど、自分が得た知識のすべてを記述したくなります。これまでどのような研究が行われてきたのか、誰がどのような発見をしたのかを漏れなく記すことで、自分の基礎学力が十分であると審査員に証明しようとしてしまうのです。しかし、学術的背景はそのような知識の開陳を目的とした場所ではありません。

審査員は多忙を極める現役の研究者であり、大半の場合、その分野や周辺領域における基礎的な知識をすでに持ち合わせています。知っている情報を長々と読まされることは、審査員にとって退屈であるだけでなく、非常に強い疲労感を伴います。さらに深刻な問題は、情報量が多すぎることで、書き手が結局何を問題視しているのか、どの点に焦点を当てようとしているのかがぼやけてしまうことです。

審査員は背景知識を学びたいから申請書を読んでいるのではありません。目の前にある研究計画(申請)が、なぜ今このタイミングで行われなければならないのか、その必然性を知りたいと願っています。学術的背景の目的は、分野の全体像を正確に描写することではなく、最終的に提示される本研究の問いへ向けて、審査員の思考を誘導するための道筋を構築することにあります。この目的を取り違えると、どれほど豊富な文献を引用したとしても、審査員の心を捉えることはできません。

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