申請書の書き方において、自己流は事故流。TTP(徹底的にパクる)の真髄は、文章のコピーではなく、論理の構造を抜き出し、そこに自分のネタを流し込むことにあります。剽窃と学習の境界線を明確にし、勝てる型を合法的にインストールする技術を解説します。


1. 導入:オリジナリティの履き違え

「申請書は独創的であるべきだ」
この言葉の呪縛により、多くの研究者が構成やてにをはに至るまで、ゼロから自分で発明しようとして自爆します。

断言しますが、構成にオリジナリティは不要です。むしろ、奇抜な構成は審査員にとってノイズでしかありません。彼らは多忙であり、脳への負荷が低い「読み慣れた論理展開」を好みます。

文章を一字一句真似れば「剽窃」として処罰されます。しかし、論理構造やレイアウトを真似ることは「学習」であり、アカデミック・ライティングの基本です。ビジネス用語であるTTP(徹底的にパクる)を研究申請に応用し、最短で合格ラインに達するための技術を解説します。

2. 概念の再定義:コンテンツ(肉)とストラクチャ(骨)

申請書を「肉」と「骨」に分解して捉えてください。

  • 肉(中身): 専門用語、固有名詞、具体的な数値、あなたの研究アイデア。
    • 扱い: ここは100%オリジナルでなければなりません。他人のものを盗めば剽窃です。
  • 骨(構造): 接続詞、段落の順序、強調のタイミング、図の配置、余白の取り方。
    • 扱い: ここは100%TTPすべき領域です。先人が試行錯誤して辿り着いた「最も伝わりやすい型」を使わない手はありません。

「型」は共有財産

たとえば、

「Aという課題がある。しかし従来の手法Bでは解決できない。そこで本研究ではCを行う」

という論理構文を使った時、誰もそれを「誰かの文章のパクリだ」とは言いません。これは誰もが使ってよい共有の「枠組み」だからです。

TTPの本質は、この「枠組み(論理の容器)」だけを優れた申請書から借りてくることにあります。容器が同じでも、そこに注ぎ込む「中身」があなたの研究であれば、それは完全にオリジナルの申請書として成立します。他人の申請書から、この普遍的な「アルゴリズム」を見つけ出す作業こそがTTPなのです。

3. 具体的実践法:骨を抜き出し、肉を詰める

では、手元にある採択者の申請書から、具体的にどのようにTTPを行うのか。3ステップで解説します。

Step 1: 黒塗りによる抽象化(骨抜き)
採択された申請書のコピーを用意し、黒マジックを持ってください。
名詞(専門用語、物質名、地名)と具体的な数値をすべて塗りつぶします。

  • 元の文章:
    「近年、ディープラーニングの技術進歩により画像認識の精度は飛躍的に向上した。しかし、計算コストの増大がモバイル端末への実装を阻んでいる。」
  • 黒塗り後:
    「近年、[  ] の技術進歩により [  ] の精度は飛躍的に向上した。しかし、[  ] の増大が [  ] への実装を阻んでいる。」

これで「型」が浮き彫りになります。「ポジティブな現状(A)→ 逆接(しかし)→ ボトルネック(B)」という黄金の導入パターンが見えましたか?

Step 2: 論理のインストール(移植)
浮き彫りになった「骨」を、自分のWordファイルに書き写します。

  • 「近年、〜は〜となった。」
  • 「しかし、〜という問題が残っている。」
  • 「そこで本研究では、〜を用いてこれを解決する。」

この時点では、中身は空っぽですが、論理構成は「採択者レベル」であることが保証されています。

Step 3: 自分のネタを流し込む(肉付け)
作成した空のテンプレートに、あなたの研究用語を代入します。

  • あなたの場合:
    「近年、ゲノム編集の技術進歩により品種改良の速度は飛躍的に向上した。しかし、オフターゲット変異のリスクが臨床応用への実装を阻んでいる。」

これで完成です。
元の文章とは全く異なる内容(工学から生物学へ)ですが、読みやすさと説得力(リズム)は完全に継承されています。これが「正しいTTP」です。

4. まとめ:明日から意識すべき行動指針

独創性とは、カオスのことではありません。規律ある型の中に宿るものです。

  1. 入手する: 先輩の申請書やKAKENデータベースから、良質な「検体」を入手する。
  2. 分解する: 内容を読もうとせず、構造(接続詞とレイアウト)だけを見る。必要ならマジックで名詞を消す。
  3. 流し込む: 抽出した「勝てる型」に、自信を持って自分の研究内容を注入する。

あなたは研究のプロフェッショナルであるべきですが、申請書作家である必要はありません。
「型」は先人から徹底的にパクり、浮いた脳のリソースを全て「研究の中身」を磨くことに費やしてください。それが審査員に対する最大の誠意です。