科研費のエフォート欄で「50%」と書いて「嘘だろ」と思われるか、「5%」と書いて「やる気ある?」と思われるか。この数字に絶対の正解はありませんが、「説得力のある目安」は計算できます。
職位、予算額、基礎値の3要素から導き出す「エフォート算出の方程式」を公開。もう適当な数字を埋めて不安になるのは終わりにしましょう。

画像案:
「エフォート積算のピラミッド」
3層の積み上げグラフ。

  • 上段(Base): 基礎エフォート(情熱・調整枠)0-10%
  • 中段(Budget): 予算由来(100万円=2%)※計算式:申請額/50
  • 下段(Position): 職位補正(PI=0%, 若手=+5~10%)
    これらを合算し、右側に「Total Effort %(5%刻み)」を示す矢印を配置。

1. エフォートという「嘘つき大会」からの脱却

申請書の末尾にある「エフォート(研究従事率)」の欄。ここに何%と書くべきか、明確なルールを知っている人はほとんどいません。

その結果、多くの研究者が感覚で数字を埋めてしまいます。
「気合いを見せるために50%と書こう」→ 審査員「授業や校務があるのに半分も使えるわけがない。実現可能性に疑問あり。」
「他にも仕事があるから10%にしておこう」→ 審査員「年間数百万円も使うのに、週半日しかやらないのか? 遂行能力に疑問あり。」

エフォートに絶対の正解はありませんがし、エフォートそのものは直接の評価項目ではありませんが、審査員が納得するロジックは存在します。それは精神論ではなく、あなたの職位(可処分時間)と申請額(業務量)から逆算されるべきものです。
本記事では、迷いなく適切な数値を導き出すための計算式を提示します。

2. エフォート算出の方程式

エフォートを感覚値ではなく、以下の計算式で機械的に算出してみてください。これを基準値とし、微調整を行うのが最も安全な戦略です。

推奨エフォート(%)=職位補正+年間申請額(万円)/50+基礎値

(※合計を5%単位で切り上げ)

この式の意図を解説します。

① 職位補正(持ち時間のベース)

あなたがどれだけ研究に時間を割ける立場かどうかの補正です。

  • 専任・特任(+50%): そのプロジェクトのために雇用されている、あるいは極めてエフォートが高い特別職(※通常の大学教員はここには入りません)。
  • 若手・Non-PI(+5〜10%): ポスドクや助教など、管理業務や会議が比較的少なく、手を動かす時間が長い層。
  • PI・教授クラス(0%): 研究室運営や大学業務が多忙であり、研究エフォートの基礎値は低く見積もられます。

② 予算由来エフォート(業務量の反映)

これが最も客観的な指標です。「お金を使う=実験や調査を行う」ことと同義だからです。
目安として、「年間50万円を使うごとに1%のエフォートが必要」と考えます。

  • 100万円の研究なら、約2%。
  • 1000万円の研究なら、約20%。
    予算規模が大きいほど、管理や実施に時間を要するのは物理的な必然です。ここが低いと「使い切れない(執行不能)」と判断されます。

③ 基礎値(調整枠)
研究者の「基本姿勢」として、0〜10%を加算します。

  • 複数の資金を持っている場合:0%(積み上げると100%を超えるため)
  • この研究がメインの場合:10%

3. 種目別シミュレーション

この式を、実際の科研費種目に当てはめてみましょう。

Case 1:さきがけ・若手Aクラス(年間1000万円)

若手研究者が、大型予算に挑む場合です。

  • 職位補正: +10%(若手・ポスドク等)
  • 予算由来: 1000 ÷ 50 = +20%
  • 基礎値: +10%(メインプロジェクトとして注力)
  • 合計:40%
    • 解説: 妥当なラインです。さきがけ等は本務との兼ね合いが厳しいですが、40%程度を主張しなければ「大型予算を回せない」と判断されます。

Case 2:基盤研究B(年間約650万円)

中堅の研究者が、実験系の研究を行う場合です。

  • 職位補正: +5%(准教授・助教クラス)
  • 予算由来: 650 ÷ 50 = +13%
  • 基礎値: +5%(他にも基盤Cなどを持っている想定)
  • 合計: 23% → 25%(切り上げ)
    • 解説: 非常にリアルな数字です。20〜30%の範囲に収まっていれば、審査員は違和感を持ちません。

Case 3:若手研究(年間250万円)

博士取得後の研究者が、独立して行う場合です。

  • 職位補正: +10%(若手)
  • 予算由来: 250 ÷ 50 = +5%
  • 基礎値: +5%
  • 合計:20%
    • 解説: 若手研究は「自立」がテーマなので、エフォートが低すぎると(10%以下など)、「片手間」に見えてマイナスです。予算規模が小さくても、職位補正と基礎値で20%程度を確保するのが戦略的です。

【注意点:100%の壁】
この計算を行う際、現在持っている他の資金(民間助成含む)のエフォートと合算して、絶対に100%を超えないようにしてください。

4. エフォートは「意思」ではなく「物理」である

エフォート欄を書く時、多くの人は「やる気(意思)」を示そうとします。しかし、審査員が見ているのは「物理的な整合性」です。

  1. 予算に見合った作業時間を確保しているか?
  2. その人の職位でその時間は捻出可能か?

提示したは方程式、この2点を自動的に満たすように設計されています。
次回からは悩むことなく、電卓を叩いて算出された数字を記入してください。それが、最もツッコミどころのない、プロフェッショナルなエフォート設定です。