研究計画が1つだけだと、その実験が失敗する可能性や研究全体のボリュームという点で問題となります。逆に4つや5つ以上となると、全てを同じように進められるかや、計画間の関連がわかりにくく全体が見通せないという問題がでてきます。
計画のリスクと目的を達成する上でその計画が十分かを正しく把握する
研究「計画」なので、基本的には何をどう計画しようが自由です。研究において何がうまくいくかなんてわかりませんから、これならよくてあれはダメだというのは基本的にはありませんし、審査員には判断できない内容です。
ただし、そうした中において決定的にダメなものがいくつか存在します。
計画のリスクが非常に高い
自然科学・基礎医学系でもっともよく見られるパターンです。
- ある非常に具体的な仮説の検証だけを研究目的としている
- 研究計画1の成功を前提に以降の全ての研究が計画されている
前者では、〇〇〇病の疾患は〇〇〇遺伝子の変異であることを検証する、のような例が多く、
後者ではスクリーニング等により〇〇〇病の原因遺伝子を同定し、その機能解析をする、のような例が多いです。
いずれの場合においても審査員が共通してもつ懸念は「それに、失敗したらどうするの?」であり、仮説が正しくなかった場合やモノが取れなかった場合に何の成果も残りません。数年の年月と少なからぬ研究費を使って、何も進まず、何の知見も得られないのはかなり高リスクです。
研究に失敗はつきものですので、ある特定の研究計画の成否に依存しすぎないように手堅い計画を組み合わせるか、リスクが高い部分については予備データでサポートするなど、審査員のそうした懸念を払拭する必要があります。
提案された計画をすべて達成できたとしても、目的の達成には至らない(くだらない)
人文社会科学系や医療・福祉・看護系でよく見られるパターンです。背景や目的ではすごく大きなことを言おうとしているにもかかわらず、実際は非常に限定された人数や特殊なケースを対象にした調査であったり、何かの指標やプログラムを作っただけで満足し実用化を真面目に考えなかったりと、目的に対して内容が伴わないパターンです。
これは研究計画だけの問題ではなく、研究の重要性(問題設定)とも関わってくる話であり、実際に何ができて、そこからどの程度のことが主張できるのか、から逆算して問題設定を行う必要があります。
特にアンケート等はコストがかかる割には規模を大きくできず、言えることが限られてきます。規模や対象を拡大する方法を模索すると共に、そこから何を引き出すかについても柔軟な視点と発想が求められます。すごく偏った視点から偏った対象を扱っているだけでは、一般性が生まれません。
また、プログラムや評価指標は広く使われて初めて意味を持ち、そのためには他との性能比較が重要になりますが、そうした比較までは計画されていないケースが散見されます。
あれもこれもとなりすぎて、どれから何が言えるのかが不明瞭
計画を5つも6つも書く人も時々います。個々の計画がすごく大きくて「これら全ては期間内にはできないだろう」というパターンと「これとこれはまとめて1つの計画にした方がわかりやすいのに」というパターンの2つがあります。
時間も費用も人手も限られていますし、あれもこれもとすると「本研究の目的」が何であるかを見失いやすくなります。核となる研究を定め、目的達成に至る道筋を明確にする必要があります。
研究計画は3つくらいが適当
こうしたことを考えると、個々の計画の役割を明確にしたうえで複数の視点を持った計画が理想的であり、科研費.comでは2つか3つくらいに研究計画をまとめることを提案します。
研究計画が2つの場合
研究計画1:研究の核となる研究
これがメインですので十分な紙面を使い、予備データや図も用いて、計画を説明します。この計画がコケてしまうと相当につらいので、実現可能であることや上手くいかない場合のバックアッププランも含めて丁寧に説明してください。
研究計画2:計画1で得られる証拠を補強するための、別の原理に基づく計画
あることを示すためには一つの方法だけで示すより、複数の方法で示した方が説得力があります。メインはあくまでも計画1ですので、ここでは比較的簡単な方法で計画1をサポートきないかを検討してください。ここもヘビー級の計画だと、バランスが悪いです。
研究計画が3つの場合(パターン1)
研究計画1:魅力的だが、挑戦的な研究
研究計画が2つの場合の計画1に相当します。メインの研究計画ですが、予備データが不足していたり、実現が難しかったりと挑戦的な内容であるもののそれなりの実現可能性が見込まれる場合や、たとえうまく行かなくてもそれなりのことが言えそうな場合にはこのパターンが有効です。
挑戦的な内容を含むので、当たった場合にはある程度まとまったことを言えるような計画であることが求められます。リスクは取ったが言えることは少ないのは良くありません。
研究計画2:比較的手堅い研究
計画1でリスクを取るため、計画2では比較的手堅いものを用意しバランスを取ります。手持ちの予備データを示しながら、この部分はほとんどできている(大きくコケることはない)とアピールすることで約束された未来を示します。あるいは、どのような結果が出ても良いタイプの研究計画(AかBかのどちらかがわかればよいもの)を持ってくるというパターンもあり得ます。
計画1がこけた場合は計画2が本研究の成果となることから、非常に重要なパートです。
研究計画3:研究計画1と2の結果を合わせることで可能となる発展的な研究
ここは計画1の成功を前提とするため、あまり長々と書いても仕方がありませんが、計画1ができればこんなことも可能になるという、という魅力的な発展的な研究を示します。将来展望としてではなく、現実的な計画であることが求められます。
研究計画が3つの場合(パターン2)
研究計画1:比較的手堅い研究
未発表だがほとんど完成している成果を足掛かりとして、計画2,3を進めるというスタイルですので、ここは予備データがあり、結果がほとんど得られていることが前提となります。
ポイントはほとんど完成しているが、完全には完成していない、というスタンスを徹底することであり、ここで、本研究は完成していると書いた瞬間に研究計画ではなく背景になってしまいます。
研究計画2:計画1の結果を用いた魅力的だが挑戦的な研究
計画1の成功を前提にすることで(そして、実際に成功しそう)、こんなに新しいことに挑戦することができる、そしてそれができるのは申請者だけというスタンスで計画を書きます。計画1の裏付けがあるので、挑戦的な内容を積極的に書くことで成功した時のインパクトで勝負します。
研究計画3:計画1の結果を用いた比較的手堅い研究
計画2でリスクを取ったので、計画3は計画1の結果を発展させるような手堅い研究を計画します。これにより、研究全体が着実に進むことをアピールします。